【感想・ネタバレ】歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるときのレビュー

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Posted by ブクログ

歴史が面白くない(と言われがち)のはなぜなのかということを切り口に、科学性、スケール(規模、範囲)、記憶との関係という3つのポイントに着目して、歴史学が科学として成立した19世紀のランケ以降の歴史学の歴史を概観。
『歴史総合』の教科書の記述を糸口にして、歴史が面白くないことの背景に、現在も主流派をなすランケが確立した歴史学の実証主義、公文書至上主義、資料批判(その背景あるいは結果としての、記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル)という中核的特徴があることを指摘し、その後、それを部分的に批判するアナール学派、労働史学、世界システム論、比較経済史学などの潮流が出てきたことを紹介している。そして、1970年代以降、ポスト・モダニズムの一環として、言語論的転回やポスト・コロニアリズムが歴史学に大きな影響を与えたことに触れ、20世紀末からは理論よりも実践を重視する記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーという潮流が登場し、ランケが確立した歴史学の中核的特徴の克服が試みられているが、それでも歴史学のパラダイムの座にあるはやはりランケ学派であると指摘している。
構成がよく練られていて、近代以降の歴史学の来し方がとてもわかりやすく整理されていると感じた。本書は一般の読者向けに書かれているのだと思うが、歴史学の初学者にとっても、史学概論の優れた入門書になっていると思う。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

 学校教育で教えられている歴史がどうして面白くない(と感じる人が多い)のかという疑問から始まり、19世紀のランケから始まる科学としての歴史学のいきさつを読みやすい構成で紹介した本です。歴史の本ではなく歴史学の本です。
 学説史を説明しながら「グローバル・ヒストリー」や「ジェンダー史」のようなトピックが自然と説明され、断片的に聞いたことがある考え方を歴史の流れの中に位置づけて理解できるようになりました。現代における歴史学の潮流をシンプルに大づかみに把握できるという意味で、『歴史学のトリセツ』というのは完璧なタイトルだなと思いました。
 個人的に面白いと感じたのは(特に20世紀以後の考え方において)「実践」という言葉が多用される点で、歴史学は単に過去を説明する理論ではなく現代社会の問題解決のツールとしても利用できる(あるいはすべき)という歴史学者らの意識を強く感じました。
 本書の特筆すべき点は論の進め方が非常に明快かつ明示的に示される点で、新たな学説の紹介に際し必ず「あらましの紹介→各論を説明→内容を再度要約して次の章につなげる」というやり方が徹底されています。要約のパートで必ず構成を復習することになり、論説文(あるいは新書)に不慣れな中高生などでも読みやすいと思います。

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

歴史学の歴史を概観しながら、「歴史って面白い?」という問いを考えていく本。歴史学の進化が必要だという著者の指摘に納得した。

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2022年09月10日

Posted by ブクログ

歴史の教科書がなぜ面白くないのかという問いから始まり、ここ1世紀半余りの歴史学の歴史について語っていく本。
この本を読んでみると、確かに私は歴史は好きだが歴史の授業にはあまり魅力を感じていなかったなと気がついた。
正直学校での歴史は最後まで暗記科目としか認識していなかった。
とはいえ、近年はその潮流にも変化が見られつつあるらしく、将来の歴史学に期待したいと思える1冊だった。
プリマー新書ということもあって、比較的読みやすい文章なので歴史学に興味がある中高生にも十分おすすめできる本。

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2024年02月16日

Posted by ブクログ

歴史学が科学として認識される過程を詳細に記述した内容だが、知らない事項が満載で圧倒された.振り返ってみると、単純に事実を記憶してそれが歴史の勉強だと思っていたのは間違えないが、この本で展開される理論構築の過程は非常に新鮮だった.

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2023年05月04日

Posted by ブクログ

中高生でも少し背伸びをすれば読み通せる(さすがプリマー新書)なのだが、中高の先生がむしろ読むべき本かも、ということで読んでみました。
高校「歴史総合」では歴史の見方を学ぶという意味合いが以前のカリキュラムより強いため、知っておかねばならないことが書かれているという意味で必携の書です。

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2023年02月28日

Posted by ブクログ

 「歴史総合」が始まるからか、歴史とは何か、歴史を学ぶとはどういうことかに関する本が目につく。
 本書もそのような一冊であるが、“プリマー新書“ということで、高校生を相手にするようななやさしい語り口。
ページ数もさほど多くなく、とても読み易いが、その内容は濃い。

 ランケ流の近代歴史学=科学としての歴史学に対し、アナール学派、労働史学、世界システム論などの潮流が登場し、さらに言語論的転回とポスト・コロニアリズムの衝撃を経て、冷戦終結やグローバル化を背景として20/21世紀転換期には、記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーなど実践指向の強い新たな動きが出てきている。こうした大きな変化について、分かりやすく、骨太に解き明かしてくれる。

 
 それをまとめると、次のようなものになる。
 実証主義、公文書至上主義、資料批判、これらの背景あるいは結果としての記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル(知識を欠如した非専門家に向けて、専門家が知識を与えるものとして捉えるモデル)の3点セットを中核とするランケ学派。
 これに対して、冷戦の終結によって解凍された記憶のあいだの対立や矛盾を解き明かそうとする記憶研究。排外主義に陥りがちなナショナリズムに連なるナショナル・ヒストリーを超克することを目指すグローバル・ヒストリー。そして欠如モデルを批判し、歴史学をコミュニカティヴな実践として捉え直すパブリック・ヒストリー。

 言語論的転回のところなど、多少の予備知識がないと、歴史学に対する衝撃や、反対に多くの歴史学者に無視されたのかが分かりづらい箇所もあるが、歴史「学」に興味を持つ者にとっては、入門書としてとても面白い。

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2022年09月09日

Posted by ブクログ

歴史はつまらないという人は残念ながら多いらしい。歴史っていうと勉強ってかんじで課題本出なければ読んでいなかった。事実に面白いがいるのか。記憶だと事実といえるのかな?など考えた。ソシュールやジェンダーの話もでてきます。

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2022年12月28日

Posted by ブクログ

僕らが普段認識している歴史ってのは、ランケ学派によるもので「実証主義」「公文書至上主義」「資料批判」で成立しているのだそうだ。歴史を社会科学にするために必要なプロセスだったらしい。確かに。
ところが「公文書」ってやつは、客観的なものでなく主観的なものに過ぎない。時の政府の都合に合わせて編纂されるし、極端な場合は過去の文書を書き換えたりもする。だからこそ「資料批判」が大切なわけだけど、これって解釈次第だよね。やっぱり自然科学のようにはいかないよね。

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2022年11月04日

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