小田中直樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
歴史が面白くない(と言われがち)のはなぜなのかということを切り口に、科学性、スケール(規模、範囲)、記憶との関係という3つのポイントに着目して、歴史学が科学として成立した19世紀のランケ以降の歴史学の歴史を概観。
『歴史総合』の教科書の記述を糸口にして、歴史が面白くないことの背景に、現在も主流派をなすランケが確立した歴史学の実証主義、公文書至上主義、資料批判(その背景あるいは結果としての、記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル)という中核的特徴があることを指摘し、その後、それを部分的に批判するアナール学派、労働史学、世界システム論、比較経済史学などの潮流が出てきたことを紹介している。そ -
Posted by ブクログ
学校教育で教えられている歴史がどうして面白くない(と感じる人が多い)のかという疑問から始まり、19世紀のランケから始まる科学としての歴史学のいきさつを読みやすい構成で紹介した本です。歴史の本ではなく歴史学の本です。
学説史を説明しながら「グローバル・ヒストリー」や「ジェンダー史」のようなトピックが自然と説明され、断片的に聞いたことがある考え方を歴史の流れの中に位置づけて理解できるようになりました。現代における歴史学の潮流をシンプルに大づかみに把握できるという意味で、『歴史学のトリセツ』というのは完璧なタイトルだなと思いました。
個人的に面白いと感じたのは(特に20世紀以後の考え方において -
Posted by ブクログ
名著級です。歴史を「学問」とするものは何か? 歴史学と歴史小説とはどこが違うのか? 歴史学は社会に何を貢献できるのか? そういう素朴にして巨大な疑問に正面から立ち向かった本。
そもそも「歴史学は史実を明らかに出来るか」という疑問がある。現在から過去を推し量ることはどこまで可能か? 本当に正しいことにたどり着けるのか? 本著は構造主義のインパクトも織り込んだ新しい解釈で、この疑問に立ち向かっている。
さらに、「歴史がなんの役に立つのか?」という疑問についても真摯に追究している。「従軍慰安婦論争」を例に取り、「新自由主義史観」の主張なども交えて、「役に立つってどういうことなのか」という課題 -
Posted by ブクログ
「歴史って何のために学ぶの?」「暗記ばっかりでつまんないよね」という世の中の大多数の人たちに向けて、歴史に対する興味を引き出し、歴史の見方を変えるきっかけを提供してくれる。
初学者から歴史学に精通した読者まで、幅広い層に向けた内容となっており、歴史学の基本から最新の潮流までを網羅的に学ぶことができる。
さすがはちくまプリマー新書で、誰が読んでも理解できるように平易な言葉と論理で語られており、全体構成がうまくまとめられている。
読後は歴史学の辿ってきたストーリーを漠然とでも頭の中に思い描けるようになると思う。
歴史学の道のりを広く浅く解説しているので、深掘りしたい分野があれば巻末の参考文献 -
Posted by ブクログ
「歴史総合」が始まるからか、歴史とは何か、歴史を学ぶとはどういうことかに関する本が目につく。
本書もそのような一冊であるが、“プリマー新書“ということで、高校生を相手にするようななやさしい語り口。
ページ数もさほど多くなく、とても読み易いが、その内容は濃い。
ランケ流の近代歴史学=科学としての歴史学に対し、アナール学派、労働史学、世界システム論などの潮流が登場し、さらに言語論的転回とポスト・コロニアリズムの衝撃を経て、冷戦終結やグローバル化を背景として20/21世紀転換期には、記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーなど実践指向の強い新たな動きが出てきている。こうした大 -
Posted by ブクログ
1963年生まれのフランス経済史を専門とする経済史学者・小田中直樹による2004年の著書。
著者は本書の内容について、序章で、歴史学の意義とは何かという疑問に答えるべく、①歴史学は歴史上の事実である「史実」にアクセスできるか、②歴史を知ることは役に立つか、役に立つとすれば、どんなとき、どんなかたちで役に立つか、③そもそも歴史学とは何か、という三つの問題を取り上げるとすると同時に、本書の目的について、あとがきで、①歴史学について、なるべく体系的に基本的な知識を整理すること、つまり、歴史学の入門書として機能すること、②歴史にかかわる優れた啓蒙書を紹介するブック・ガイドとして機能すること、③歴史を考