小田中直樹のレビュー一覧

  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    文章が読みやすくて、かつ歴史学の歴史を大まかに把握できる点で、すごく優れた本だと思う。

    歴史学を専攻していない人、これからしようとする人、歴史学を学び始めた人、歴史学専攻の学部生あたりが読むと良い本だと思った。

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    2025年08月15日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    歴史が面白くない(と言われがち)のはなぜなのかということを切り口に、科学性、スケール(規模、範囲)、記憶との関係という3つのポイントに着目して、歴史学が科学として成立した19世紀のランケ以降の歴史学の歴史を概観。
    『歴史総合』の教科書の記述を糸口にして、歴史が面白くないことの背景に、現在も主流派をなすランケが確立した歴史学の実証主義、公文書至上主義、資料批判(その背景あるいは結果としての、記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル)という中核的特徴があることを指摘し、その後、それを部分的に批判するアナール学派、労働史学、世界システム論、比較経済史学などの潮流が出てきたことを紹介している。そして、1970年代以降、ポスト・モダニズムの一環として、言語論的転回やポスト・コロニアリズムが歴史学に大きな影響を与えたことに触れ、20世紀末からは理論よりも実践を重視する記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーという潮流が登場し、ランケが確立した歴史学の中核的特徴の克服が試みられているが、それでも歴史学のパラダイムの座にあるはやはりランケ学派であると指摘している。
    構成がよく練られていて、近代以降の歴史学の来し方がとてもわかりやすく整理されていると感じた。本書は一般の読者向けに書かれているのだと思うが、歴史学の初学者にとっても、史学概論の優れた入門書になっていると思う。

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    2024年05月12日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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     学校教育で教えられている歴史がどうして面白くない(と感じる人が多い)のかという疑問から始まり、19世紀のランケから始まる科学としての歴史学のいきさつを読みやすい構成で紹介した本です。歴史の本ではなく歴史学の本です。
     学説史を説明しながら「グローバル・ヒストリー」や「ジェンダー史」のようなトピックが自然と説明され、断片的に聞いたことがある考え方を歴史の流れの中に位置づけて理解できるようになりました。現代における歴史学の潮流をシンプルに大づかみに把握できるという意味で、『歴史学のトリセツ』というのは完璧なタイトルだなと思いました。
     個人的に面白いと感じたのは(特に20世紀以後の考え方において)「実践」という言葉が多用される点で、歴史学は単に過去を説明する理論ではなく現代社会の問題解決のツールとしても利用できる(あるいはすべき)という歴史学者らの意識を強く感じました。
     本書の特筆すべき点は論の進め方が非常に明快かつ明示的に示される点で、新たな学説の紹介に際し必ず「あらましの紹介→各論を説明→内容を再度要約して次の章につなげる」というやり方が徹底されています。要約のパートで必ず構成を復習することになり、論説文(あるいは新書)に不慣れな中高生などでも読みやすいと思います。

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    2022年11月23日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    歴史学の歴史を概観しながら、「歴史って面白い?」という問いを考えていく本。歴史学の進化が必要だという著者の指摘に納得した。

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    2022年09月10日
  • 感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか ― 世界史のなかの病原体

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    コロナの影響によりこの1年で世の中は変わってしまった。マスクをつけて外出し、食事の団らんはなくなり、友人との集まりは避けられるように。人間らしい活動が制限されているのだ。
    本書では、これまでの歴史における感染症をペスト、天然痘、コレラ、インフルと追いながら、当時の人々の生活や社会の変遷が描かれている。歴史的な民族移動や戦争も大きく関係するようだ。
    終盤は抗菌剤の開発やエイズ、エボラなど最近話題の感染症も話題としながら、では感染症は本当に社会を変えるのかとも考察している。どのみち我々は未来に進むのだと。

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    2020年11月09日
  • 歴史学ってなんだ?

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    最近真面目に歴史の勉強を始めてからこっち、自分の中でぐるぐる渦巻いていた命題にたいして、数十年余分に行きてる先輩から分かりやすいビジョンを見せてもらえた、という感じでした。
    まだまだ勉強不足で批判的に評価できてるかは分からないけど、私にとってこの本は足がかりの一つとして充分すぎる素晴らしい本でした。
    出会えて良かったです。
    私が持っていた命題に対して私が想像してた落とし所以上に思考を提示してくれました。

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    2016年09月13日
  • 歴史学ってなんだ?

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     名著級です。歴史を「学問」とするものは何か? 歴史学と歴史小説とはどこが違うのか? 歴史学は社会に何を貢献できるのか? そういう素朴にして巨大な疑問に正面から立ち向かった本。

     そもそも「歴史学は史実を明らかに出来るか」という疑問がある。現在から過去を推し量ることはどこまで可能か? 本当に正しいことにたどり着けるのか? 本著は構造主義のインパクトも織り込んだ新しい解釈で、この疑問に立ち向かっている。
     さらに、「歴史がなんの役に立つのか?」という疑問についても真摯に追究している。「従軍慰安婦論争」を例に取り、「新自由主義史観」の主張なども交えて、「役に立つってどういうことなのか」という課題にじょじょに迫る手際は、木訥とした味わいながら、非常に納得できるものだった。

     歴史を学ぶ、ということは、実は非常に現代的な課題をクリアにしない限りできない営みである。「自虐的な歴史ばかり教えるな、日本人として誇りを持てる歴史こそが必要なんだ」という立場もあるだろう。「当事者の数だけ真実があるのだ」という立場もあるだろう。その中で、自分はどんな「歴史」を語れるのか。どうすれば、自分なりの問題を設定でき、自分なりの結論にたどりつけるのか。「歴史学」を学ぼうとする者は、常に揺れ動き、ひんぱんにつまずくのだ。この本は、初学者にとっての頼れる足場を提供してくれるだけでなく、歴史学に迷いさすらうときの灯台としても、必ず役に立ってくれることだろう。

     壮大な課題に対して、きちんと考えるための枠組みを与えてくれるばかりか、希望を与えてくれる本は初めて。しかもわずか、200ページの新書でそれを達成しているところがすごい。歴史学の読書ガイドとしても素晴らしいので、すべての人におすすめ……としたいところだけど、せめて大学で歴史を学ぶ人は絶対必読。

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    2014年03月30日
  • 歴史学ってなんだ?

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    歴史学のところを中国古典文学と変えて読めば、そのままわれわれの専門分野のこととして理解できます。ぜひ読んで下さい。

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    2011年08月29日
  • 歴史学ってなんだ?

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    最近、あちこちで話題となっている歴史認識問題を易しく解説した本です。歴史学は暗記の学問だという思い込みをくつ返してくれるはずです。史学科に進学するまたは進学中の方は、ぜひ手に取ってみてください。

    (九州大学 大学院生)

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    2010年10月07日
  • 歴史学ってなんだ?

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    ○歴史学ってなんだ?
      小田中 直樹 著   PHP新書



     タイトルを見て想像していたものよりずっと奥が深かった。(例えば構造主義だとか)


    そうか、そう単純な問題ではないのか。


    かなり考えさせられる本であった。

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    2009年10月04日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    確かに歴史の教科書って、個人の記憶や感情と切り離されて書かれてるから面白く感じなかった…
    ランケ学派が今日までパラダイムの中心になってきたから
    言論学的転回の考え方や、それに対して歴史学者がどう抵抗したり受け入れてきたのかが、興味深かった。

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    2025年07月26日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    「歴史って何のために学ぶの?」「暗記ばっかりでつまんないよね」という世の中の大多数の人たちに向けて、歴史に対する興味を引き出し、歴史の見方を変えるきっかけを提供してくれる。

    初学者から歴史学に精通した読者まで、幅広い層に向けた内容となっており、歴史学の基本から最新の潮流までを網羅的に学ぶことができる。

    さすがはちくまプリマー新書で、誰が読んでも理解できるように平易な言葉と論理で語られており、全体構成がうまくまとめられている。
    読後は歴史学の辿ってきたストーリーを漠然とでも頭の中に思い描けるようになると思う。

    歴史学の道のりを広く浅く解説しているので、深掘りしたい分野があれば巻末の参考文献を手に取ってみるのも良し。
    (著者曰く、ガチすぎる本ばかりなので初学者がいきなり手を出すのはオススメしないとのこと)

    ーーーーーーー一以下、抜書きーーーーーーーー
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    本書では、歴史学の歴史のなかに登場してきた多種多様な潮流にアプローチするに際して、科学性、スケール(規模、範囲)、記憶との関係、この三つのポイントに着目したいと思います。これは、ぼくが、いまの主流派をなす歴史学が「歴史って面白い」ことを伝えきれていない原因をなしていると考えている三つの特徴に対応しています。
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    科学技術と社会の関係を考える「科学技術社会論(STS)」という学問領域がありますが、科学技術社会論では、専門家と非専門家の関係を「知識を欠如した非専門家に向けて、専門家が知識を与える」ものとして捉えるモデルを「欠如モデル」と呼んでいます。つまり、専門家じゃないひとは専門的な知識が「欠如」している、だから専門家はこの「欠如」している知識を彼らに与える役割を担っている、という考えにもとづいて両者の関係をモデル化したものが欠如モデルです。教科書は、まさにこのモデルにもとづいて作られているわけです。
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    過去の事実に接近するスタンスが過去主義的なものであれ未来主義的なものであれ現在主義的なものであれ、そして、教科書のなかの記述のようにどんなに客観的に記されているようにみえたとしても、歴史は完全に客観的なものではありえない、ということです。むしろ、歴史は主観的なものであるというべきでしょう。
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    小学校から高等学校に至るまでの歴史に関連する教科の教科書は、ほぼすべてが、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル、そして記憶の排除という特徴を共有しているといってよいと思います。 ぼくに言わせれば、この三つの特徴をもつ文章は、面白くありません。過去の人々の顔がみえず、専門家が書いているんだから内容は「正しいですよ」と押しつけられているような感じがし、記憶を排除して淡々と事実を書きつらねることによって客観的かつ「漂白」された歴史を提示する本なんて、面白いわけがないじゃないですか。
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    第一に、資料を収集すること。 第二に、資料批判をすること。 第三に、正しいと判断した資料(の部分)にもとづいて、過去の事実を記述すること。 この三つのステップが、ランケが提唱し、その後長いあいだ歴史学者たちが受容してきた歴史学者のしごとの手順です。
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    二〇世紀に入ると、アナール学派(フランス)、労働史学(イギリス)、世界システム論(合衆国)、比較経済史学(日本)など、歴史学は科学であるという立場はランケ学派と共有しつつも、その中核を部分的に批判する潮流が登場します。これら潮流は、同時代的な問題を解決しようとする問題意識に基づいていたり、ぼくらには予想もつかないテーマを取りあつかっていたりして、読者をワクワクさせる成果を生みだしました。
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    一九七〇年代になると、ポスト・モダニズムの一環として、言語論的転回とポスト・コロニアリズムが歴史学に影響を及ぼすようになりました。前者は「モノと、それを表す言葉の関係は恣意的である」と主張し、歴史学者の頭を悩ませました。後者は、現代社会のなかにさまざまな多数派・少数派関係を見出し、その原因を歴史のなかに探ることにより、社会が抱える矛盾に関心を寄せるひとびとの目を歴史に向けさせるという役割を果たしました。 ただし、歴史学のパラダイムの座には、それでもなおランケ学派があったといわなければなりません。
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    冷戦の終結によって解凍された記憶のあいだの対立や矛盾を解きほぐそうとする記憶研究。ともすれば排外主義に陥りがちなナショナリズムに連なるナショナル・ヒストリーを超克することを目指すグローバル・ヒストリー。そして、万人を知識の提供者にして受容者として捉え、ひとびとのコミュニケーションのなかに過去の事実への接近可能性を見いだすパブリック・ヒストリーなどです。

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    2024年07月07日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    歴史の教科書がなぜ面白くないのかという問いから始まり、ここ1世紀半余りの歴史学の歴史について語っていく本。
    この本を読んでみると、確かに私は歴史は好きだが歴史の授業にはあまり魅力を感じていなかったなと気がついた。
    正直学校での歴史は最後まで暗記科目としか認識していなかった。
    とはいえ、近年はその潮流にも変化が見られつつあるらしく、将来の歴史学に期待したいと思える1冊だった。
    プリマー新書ということもあって、比較的読みやすい文章なので歴史学に興味がある中高生にも十分おすすめできる本。

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    2024年02月16日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    歴史学が科学として認識される過程を詳細に記述した内容だが、知らない事項が満載で圧倒された.振り返ってみると、単純に事実を記憶してそれが歴史の勉強だと思っていたのは間違えないが、この本で展開される理論構築の過程は非常に新鮮だった.

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    2023年05月04日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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    中高生でも少し背伸びをすれば読み通せる(さすがプリマー新書)なのだが、中高の先生がむしろ読むべき本かも、ということで読んでみました。
    高校「歴史総合」では歴史の見方を学ぶという意味合いが以前のカリキュラムより強いため、知っておかねばならないことが書かれているという意味で必携の書です。

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    2023年02月28日
  • 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき

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     「歴史総合」が始まるからか、歴史とは何か、歴史を学ぶとはどういうことかに関する本が目につく。
     本書もそのような一冊であるが、“プリマー新書“ということで、高校生を相手にするようななやさしい語り口。
    ページ数もさほど多くなく、とても読み易いが、その内容は濃い。

     ランケ流の近代歴史学=科学としての歴史学に対し、アナール学派、労働史学、世界システム論などの潮流が登場し、さらに言語論的転回とポスト・コロニアリズムの衝撃を経て、冷戦終結やグローバル化を背景として20/21世紀転換期には、記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーなど実践指向の強い新たな動きが出てきている。こうした大きな変化について、分かりやすく、骨太に解き明かしてくれる。

     
     それをまとめると、次のようなものになる。
     実証主義、公文書至上主義、資料批判、これらの背景あるいは結果としての記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル(知識を欠如した非専門家に向けて、専門家が知識を与えるものとして捉えるモデル)の3点セットを中核とするランケ学派。
     これに対して、冷戦の終結によって解凍された記憶のあいだの対立や矛盾を解き明かそうとする記憶研究。排外主義に陥りがちなナショナリズムに連なるナショナル・ヒストリーを超克することを目指すグローバル・ヒストリー。そして欠如モデルを批判し、歴史学をコミュニカティヴな実践として捉え直すパブリック・ヒストリー。

     言語論的転回のところなど、多少の予備知識がないと、歴史学に対する衝撃や、反対に多くの歴史学者に無視されたのかが分かりづらい箇所もあるが、歴史「学」に興味を持つ者にとっては、入門書としてとても面白い。

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    2022年09月09日
  • 歴史学ってなんだ?

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    1963年生まれのフランス経済史を専門とする経済史学者・小田中直樹による2004年の著書。
    著者は本書の内容について、序章で、歴史学の意義とは何かという疑問に答えるべく、①歴史学は歴史上の事実である「史実」にアクセスできるか、②歴史を知ることは役に立つか、役に立つとすれば、どんなとき、どんなかたちで役に立つか、③そもそも歴史学とは何か、という三つの問題を取り上げるとすると同時に、本書の目的について、あとがきで、①歴史学について、なるべく体系的に基本的な知識を整理すること、つまり、歴史学の入門書として機能すること、②歴史にかかわる優れた啓蒙書を紹介するブック・ガイドとして機能すること、③歴史を考える枠組みを再検討してみること、の三つと述べている。
    本書の主な主張、及び私の印象に残った点は以下である。
    ◆歴史学の営みは、史実を明らかにすること、即ち「認識」と、認識した史実に意味を与え、ほかの史実と関連させ、その上でまとまったイメージである歴史像を描くこと、即ち「解釈」という、二つの作業から成る。
    ◆1970年代に現代思想家ジャン=フランソワ・リオタールは、「“大きな物語”は終わった」、即ち、歴史のトレンドを描き出すことは無意味になったと主張したが、実際には、“大きな物語”が終わったのではなく、それぞれの民族の歴史や大衆の歴史などの様々な“大きな物語”が併存するようになった、即ち、歴史の相対化の時代に入ったということである。従って、歴史家は、たとえ相対化されたものではあっても、より正しい「解釈」を求め続けることが使命である。
    ◆同様に、1970年代に言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが展開した、「もの」、「意味」、「言葉」の三者の繋がりは恣意的なものにすぎないという構造主義の思想は、歴史の「認識」についても疑問を投げかけるものであったが、歴史学に求められているのは、コミュニケーションによって、多数の人々の間で正しいに違いないという「認識」に至ること、更に、そこからより正しい「解釈」に至ることである。
    ◆歴史学は、外国に関わる歴史像や、外国と日本の関係に関わる歴史像を提供し、我々の集団的なアイデンティティを相対化する際に重要な役割を果たす。しかし、第二次世界大戦に向けて、日本人の意識を統制したのが当時の歴史学を支配する考え方であったことなどを踏まえると、歴史学が「社会」の役に立つべきか否かという問題を考える際には、慎重さが求められる。むしろ、根拠がある史実に基づくという真実性を経由した上で、直接に「社会」の役に立とうとするのではなく、つまり、集団的なアイデンティティや記憶に介入しようとするのではなく、「個人」の日常生活に役立つ知識を提供しようとすることが大事である。
    ◆そもそも、様々な科学を学ぶことの意義は、自覚的にものを考える必要に迫られたときに「考え方のモデルのカタログ」として自分の役に立つ、地に足がついた知識としてのコモン・センスを体得することにある。そして、歴史学もその科学の中のひとつなのである。
    若手の歴史学者が、現代思想の考え方を取り込みつつ、歴史学の意義と課題(更には限界)を率直に述べており、好感の持てる一冊である。
    (2006年12月了)

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    2016年11月06日
  • 歴史学ってなんだ?

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    歴史を学ぶ意味について、近年の研究の成果を取り入れつつ、簡便にまとめた入門書。あとがきで著者が触れているように、古典的名著が入手難であったり、文体が固く、専門外の読者には取りつきづらかったりするのに対し、内容が大分噛み砕かれており、歴史について生じ易い疑問である「史実は分かるか」「歴史は役に立つのか」という二つの主題について理解しやすい。

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    2015年04月09日
  • 歴史学ってなんだ?

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    ネタバレ

    「歴史学で本当に史実を明らかにできるのか?」「歴史学は本当に役に立つのか?」という、「なぜ歴史学を学ぶのか」を考えるにあたって出てくる疑問についてガッツリ書いてくださっている本。

    また、歴史教科書に対する批判もあり、「おおこの人もか!」と思ってしまった。ただ、小田中氏の場合は、倉山氏とはちょっと違って、教科書と言うよりも、教科書にそういう書かせ方をするシステムが問題と言う言い方をされていて、私もむしろこっちが問題だろうなと思いました。

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    2014年08月05日
  • 歴史学ってなんだ?

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    これはなかなかに興味深かった。学問としての歴史学を歴史小説から区別し、では如何に違うのかを紐解いていく。○○年に何があった、って授業で習うけど、果たしてそれは事実なのか、っていう疑問立てから学問が始まる。そこに至るまでに色々検証された結果が、現在一般に理解されている史実だろうから、それが簡単にひっくり返ることはまああまりないだろうけど、それを細かく調べて検証し直すっていう部分に向く興味は、歴史好きの自分にも理解できるものでした。

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    2014年04月01日