一色のレビュー一覧
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村の境で村人を守る役割を課せられながらも村に入ることを許されず不当な扱いを受けていた男たち。その長であった権平爺は幼い捨蔵を自分たちから引き離すことを選択するも、捨蔵は納得がいかず一人逃げ出し放浪することになる。
石屋「大江屋」で石工をめざし修行に励む寛次郎は、兄弟子たちのもと一番下として下積みに明け暮れる日々だった。親方はある日、ひとりの弟子を連れてくる。彼の名は申吉――名前を伏せた捨蔵だった。
仕事の呑み込みは早いがとにかく愛想のない申吉。型にはまらない天性の才を垣間見せるも、本気で取り組む姿勢を見せない。一人前の石工を目指す寛次郎はそんな申吉に困惑しつつも、彼の持つ非凡な才能と背負った影を気にかける。
大きな展開があるわけではないのに各々が抱える心情描写が丁寧に描かれ、気付けばすっかり引き込まれていました。
孤独を抱えた申吉と、石工で生きる道を選んだ寛次郎。二人とも幼いながらも自身の経験から、ひとりの人間として自分たちの足で立つ必要性を知っています。無愛想ながらも互いを認め合う後半の描写は、抱えてきた重荷がふと和らいだ瞬間のように思いました。
創作童話シリーズとはあるものの、この作品の味わいは大人になってからの方が沁みるはずです。丁寧に読み進めたい「再生」の物語。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『転生程度で胸の穴は埋まらない2』は、「転生」という装置に安易な救済を期待する読者の視線を、静かに、しかし確実に裏切り続ける作品である。前巻に引き続き、本作が描くのは再出発の爽快さではなく、喪失を抱えたまま生き続けることの不器用さと誠実さ。転生してもなお消えない痛み、むしろ生き直すからこそ浮かび上がる後悔や未練が、主人公の内面に深く刻み込まれている。
本巻では、過去と現在のあいだで揺れ動く主人公の心理がより精緻に描かれ、感情の一つひとつが丁寧に積み重ねられていく。「前に進む」ことが必ずしも癒やしではなく、ときに自らの傷を直視する行為であるという描写は静かな痛みをもって迫ってくる。それでも物語は絶望に沈み切ることなく、傷を抱えたまま他者と関わり、世界と接続し直そうとする姿勢を描き続ける。その姿は決して格好良くはないが、だからこそ真に人間的で、強い説得力を持っている。
また、本作が特筆すべきなのは、転生ものにありがちなご都合主義や万能感を徹底して排している点だ。救いは簡単には訪れず、答えも用意されていない。それでも生きることを選び、迷いながらも一歩を踏み出す姿が、物語全体に静かな光を与えている。胸の穴は埋まらない――その事実を否定せずに引き受けた上で、それでも人生を続けていく。その覚悟こそが、本作の最も重厚なテーマだろう。
軽やかな娯楽性を求める読書には向かないかもしれない。しかし、感情の奥底に触れる物語を求める読者にとって、本作は確かな手応えを残す。転生という形式を借りながら、人が傷を抱えたまま生きることの意味を真正面から描いた、誠実で力強い一冊である。
今回初登場のメルミナもいいキャラで、今後の絡みに期待。 -
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ネタバレ著者初読。KU。
この作品は、異世界転生を題材としながら、その表層的な娯楽性に留まらず、“胸の穴”という心の深い喪失を真正面から扱った稀有な物語だった。主人公コノエの渇望は、単なる力の源として描かれるのではなく、彼の生き方そのものを形づくる根源的な痛みであり、読者はその孤独と誠実に向き合わされる。しかし、この重さは決して読後の気分を曇らせるためのものではない。むしろ彼のひたむきさは、絶望の中に差し込む細い光のように、ページをめくるほどに温度を帯びていく。
そんな彼の隣に立つテルネリカの存在は、とりわけ鮮烈だ。無償の愛という言葉を軽々しく使うことが憚られるほど、彼女の優しさは静かで揺るぎない。コノエの“穴”を埋めようと無理に踏み込むのではなく、寄り添いながら彼の影そのものを受け止めていく。その態度は、物語全体に柔らかな光を投げかけ、重厚なテーマを包み込む温かさを与えている。
また、この世界で生きることの痛みや選択の重さが、派手な活劇や魔法設定よりも前面で語られることで、物語は単なる異世界ファンタジーを超え、人が「救われるとは何か」を問う深い作品となっている。コノエが背負ってきた過去と、その痛みを理解しようと手を伸ばす者たちの姿に、読者までが静かに励まされていく。
読み終えたあと、胸の奥に残るのは沈痛な余韻ではなく、あたたかい息のようなものだ。癒えない傷があったとしても、人は誰かと出会うことで、歩く速度を変えられる。そうした希望を丁寧に示してくれた本作は、重厚でありながら、確かな救いを感じさせる一冊だった。 -
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ネタバレいやあ、なんとも切ないお話だなあ。
個人的には人が死ぬ話は苦手だけど。
瞳を覗くとその人の過去(記憶)が見える主人公が、猫の瞳の中で見えた少女は実は未来を観ることが出来る能力持っていて、猫の瞳を介して過去と未来で会話が出来るというなかなか面白い設定のファンタジー且つミステリ。
物語が進むにつれて少女はすでに死んでいるらしいことが分かってきて、でもそれを回避するために主人公があれこれ頑張るという、なんだかシュタゲやまどマギのような展開になってくる。
そこに連続殺人事件に関するミステリ要素が交わってきてなかなか凝ったストーリーで面白かった。
…のだけど、やっぱりハッピーエンドにして欲しかったなあ。面白い設定なだけに余計にそう思う。
これは辛すぎるよね。
こう言う刺さり方はちょっと…と思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前回読んだ「私はあなたの涙になりたい」よりは難しめだった。謎解きだし主人公達の設定もあるしで。コロナって出てきた時にちょっと嫌悪感出たけど読めはした。コロナで授業無かったのは今のM2か?などと邪推。演劇系の用語はなんとなく分かった。シェイクスピアが読みたくなる。ミリとちとせさんが同一人物かなとはぼんやり思ってた。犯人は全く分からなかったけれど。ナイスバディのお姉さんタイプって言ったから整形もそこに合わせたのかな、四季さんの恋愛健気で好きです。甘酸っぱい。あもうさんの演劇にかける思いが熱くて良い人だな、死んでほしくないなと思ってた。ちゃんと読まないと「?」となるけど噛めば噛むほど深い!ただからくりが重なってて難しかった…
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Posted by ブクログ
猫の瞳を通じて、美里と出会った窈一が、演劇部に所属しつつ殺人事件の解決に乗り出すちょっと変わったお話。
詳細な資料に基づいた上で描かれたと思われる、作中で展開される様々な演劇が、比喩表現や地の文の表現力の良さと相まって非常に良かったです。
また、所々に現れる日常系ミステリーは、次々に予想外のポイントに視点が移ってゆく所が好み。特に、最初の火事事件は良かったです。
ミリとの対話、演劇、ミステリーの3要素が複雑に絡んだ作品で、視点の変化や登場人物の多さから読みにくさも有りましたが、独特の面白さを感じる作品でした。
ただ、ミステリーと残り2つとの絡み方が微妙で、犯人が誰か?の部分に興味を持って読めなかった、というのが正直な所です。
また、要素が多すぎてラブコメも描ききれて居ない印象でした。
もっと要素を減らすか、日常系ミステリーに留める等の方が良かったのでは?と感じました。 -
Posted by ブクログ
石工という職人の世界で生きる二人の少年を描く。
厳しい職人の世界、貧しさや村外への差別、そして不可思議な存在を交えつつ、青少年の不安定な精神世界や人間関係を描いている。
硬い石に向かって、ひたすら鑿をふるう。その姿と重なって、心にぐっと突き刺さってくる。
相手を意識せずには居られない。分からないけれど分かってしまう。そんな存在と出会えることは、例え苦しくとも、ものを生み出す人にとっては、最良の人生になるのだろう。
一筋縄ではいかない回りの大人たちにもドラマがあり人間味がある。
『天狗ノオト』も良かったし、結構好きな作家かも。寡作なのが少し残念。