小坂井敏晶のレビュー一覧
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民族紛争や平和構築の分野に興味があり、そもそも民族とは何なのか、といったところから手に取った書籍。
民族とは主観的範疇であり、また、民族への同一性は「自らの中心部分を守っている感覚」であるという論旨は興味深く、勉強になった。
一つの都市に二つの民族が同居し生活区域から学校まで別々である地域に訪ねたことがある身としては、民族同一性の維持が異文化受容を促進するという論旨自体は、納得しきれない部分もあったが、全体的にはやはり面白い。
小坂井氏の他の書籍にもあるが、道徳や規範は、共同体内の人々の相互作用の沈殿物であるから正しいと形容されているに過ぎず、虚構である、という論旨は強烈である。
現在世界 -
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『責任という虚構』を読み、小坂井氏の考えに強く惹かれて読むに至った、2冊目。
『責任という虚構』に比べると論旨は散逸しているが、第二部、小坂井氏のアルジェリアやフランスでの悩みや苦労話は、彼の考えを理解するにあたって大変興味深かった。
自分も海外での生活及び留学を経験したことがあるため、小坂井氏の悩みは身体的にも共感する部分が多々あった。海外で生活しないと分からない部分は多分にあり、また母国から距離を取ることによって見えるものもある。
常識は目を眩ませるが、だからこそ、常識の不条理に気づかされる異文化環境に生きることは、それ自体に意義がある、という点はその通りだと思う。
本書と『責任と言う -
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良著。
第六章は「何がしたいのか、何ができるのか、何をすべきか」。
割と頻繁に頭をかすめる問題。
全く考えがまとまることなく、そのままにしてしまって日々を過ごしてしまっているが。
著者は、どうそこに向かい合ってきたか、ということを記している。
終章は「異邦人のまなざし」。
具体的にどうした属性があれば「異邦人」であると決まるものではなく、違和感を覚え続けることが「異邦人」の要件であるとすれば、自分も「異邦人」であったのかもしれない。
幾つかの集団に属してきたが、ほぼ全ての集団において、その主流の価値観に染まることができずに来た。
朝日新聞など日本のマスメディアの主流となる論調、日教組的価値 -
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p3 世界から答えが消え去った。〜<正しさ>を定める源泉は、もはや失われた。
p4 遠くから眺めるか近づいて凝視するかによって、世界は異なる姿を現す。しかし〜異邦人という位置〜遠くにあると同時に近いところ〜境界的視野に現れる世界
p8 「答えのない世界に生きる」これは、混沌とする社会に生きながらも答えを探せというメッセージではない。
p9 「正しい世界に近づこう」「社会を少しでも良くしたい」この常識がそもそも問題だ。「地獄への道は善意で敷き詰められている」
p18 知識が思考の邪魔をする
p20 第三世界への技術導入がしばしば失敗に終わるのは、〜導入される異文化要素と互換性のない知恵があるから -
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悪とは何か?
その根拠を永遠に辿っていくと、不変で普遍的な答えがないことに気付く。人間の行動に科学的な考察を施し普遍的な法則を求める社会心理学。その現状を示す。
何故か最近哲学っぽい書籍を偶然にも続けて読んでいる。合理的だけでは人間社会は成り立たない。虚構性があるからこそ人間社会は成り立っている。法律でも道徳でも人間が作った規則には、突き詰めると根拠はない。ナルホド。
近代社会では人間に本質的な差異はないとされる。しかし、同類の間には比較が必ず起き格差が現れる。したがって、下層に位置する人間は自らの劣等生を否認するために社会の不公平を糾弾する必要がある。現代社会には構造的に格差が組み込ま -
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ライフネット生命の出口会長のお薦めの書。社会心理学講義と言いながら、著者は、「本書は社会心理学を俯瞰する教科書ではありません。人間を理解するためには、どのような角度からアプローチすべきか。それを示唆するのが本書の目的です。」と言っている。哲学・社会学・心理学・文化人類学・経済学・大脳生理学・進化論など、幅広い領域から本質的なテーマに真摯に向き合っていることが本当に伝わってきた。出口氏は、「およそ全てのビジネスは、人間と人間が作る社会を対象としたものである。そうであれば、ビジネスには、人間とその社会に対する深い洞察が欠かせない。その意味で、本書は疑いなく、今年度最高のビジネス書の1冊であると考え
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ボリュームもあるし小難しいことも書いてある。秋の夜長にピッタリ、と言いたいところだが、四六時中痛みと闘っている身としては、なかなか集中して読むのがつらい厚さではある。
けれど、読み始めると、痛みを忘れる、とはいわないものの、痛みよりも本の内容にのめり込んでいく(ので、休憩時などはよりいっそう痛い)。
とにかく常識を疑え、常識なんてものはないのだ。イエスやガンジーは当時こまった人だったし、ヒトラーやスターリンは賞賛をもって迎えられていた。何が良い悪い、ということが決まった時点で開かれた社会にはならない。
難しい本だと思うなかれ。本書にもあるが、どんなに難しい本でも、自分で書くよりは読む方が -
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社会心理学という言葉に全くなじみがなく、小坂井さんの他の著作を知らなければ、多分手に取ることさえなかった本。
小坂井さんの本は「民族という虚構」「人が人を裁くということ」で知っていた。この「社会心理学講座」は、これらの本も含め、これまでの著者の研究をまとめて著したもののようだ。
多分それが原因なのだと思うのだが、題名通り「社会心理学」について、幅広く触れられているため、網羅的ではあるのかもしれないが散漫であるとも感じられる。
学術的な論文では必須なのかもしれないが「誰それの研究によればこう」という文章が多く、外人さんの名前がたくさん出てきて、それを追うことに疲れてしまうところがあった。