小坂井敏晶のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
経済雑誌で紹介されていた。
とても面白かった。
現在の社会心理学の現実が極めてうまくまとめてあり、
心理学専攻の学生でなくても十分に楽しめる内容だった。
特に、ホロコーストに関する研究をまとめ考察した部分が興味深かった。
(ホロコーストの実際の担い手は、反ユダヤ人主義のナチス・エリートではなく、戦場には赴くには年をとりすぎた普通の人々であり、
そういう人々が、合理的・効率的に行えるように、
つまり心理的負担が少なく行えるように、
作業分担や、銃殺ではなく毒ガス室の利用開始、反ユダヤのプロパガンダが必要だった、という考察)
理解しきれていない部分があるので、是非、再読に必要がある。 -
Posted by ブクログ
タイトルからは想像もつかないほどに深い、良い本だった。
イデオロギーに利用されるもろもろの概念は「虚構」であって、「民族」という概念もまたそうである。
この概念はどこから生成してくるかというと、著者は「範疇化」という言葉を使って説明する。
「範疇化によって複数の集団が区別され、民族として把握される。同一性が初めにあるのではなく、その反対に、差異化の運動が同一性を後から構成するのである。」(p.29)
自己の集団への愛着・贔屓や、差別といったものもすべてこの「範疇化」によって生まれてくる。
そして、厳密にはものとものとはあらゆる点にわたって差異を持っているのであって、たとえば「黒人vs.白人」という2極化にしても、よく見れば鼻や眼の形等々の細かな個人差を捨象して、肌の色という一点で「範疇化」が行われているに過ぎない。ここに「虚構」が存在している。
しかしこうした「範疇化」「虚構」は人間の思考には是非とも必要なものなので、それを廃絶することはできない。虚構はうまく機能していないといけないから、常に虚構性は隠蔽される。
さまざまな知識を動員して、じっくりとした論調で著者はこのような「虚構」を分析していく。その過程が実に知的で、おもしろい。
さらに「常に情報交換していなければならない人間という存在」
「『意志』の意識は、行動を無意識に決定した少し後からおくれてあらわれる(これはノーレットランダーシュの『ユーザー・イリュージョン』にも書いてあった実験的な事実だ)」
「多数派ではなく、少数派が集団に対しより深層に及んだ影響を与える。社会の真の変革は少数派によってのみ可能である」
といった、実に興味深い話題も盛り込まれている。
こういう大変おもしろい本が埋もれてしまうのは惜しい。ドゥルーズなんか読むよりもずっと刺激的なのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
本の内容にほぼほぼ同意。内因というものは存在せず、偶然や遺伝や環境のような外因にすべて起因するということは、この本を読む前から私は感じていた。それをうまいこと言語化してくれている。格差の低層の方々によく言われる努力不足、つまり自己責任論がよく取り上げられるが、この論理を用いることで、そもそも外因なのだから努力とか遺伝とか議論すること自体が間違えていると指摘している。
また人の嫉妬や劣等感がどのように発生するかに焦点を当てて、格差を小さくすることによる問題についても議論している。
内容は良いのだが、内容が少し冗長でもう少しまとめられた気はする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実験から導かれる結果では、人の行動は権威に弱く、同調圧力に流され、役割を与えられると演じようとする。さらに、意思決定以前に脳内では活動が始まっていることも測定されている。
そこから自由意志を否定しながら、責任論を哲学的に考察する。禅問答のようになって当然結論は出ないのだが、そのままでは秩序ある社会は回っていかない。
だから、もやもやしていても、多数決が正義と決めつけて、どこで線引きするか決めつけながら、進んでいくしかないのでしょうね。
まあ、数々の実験の結果が正しいかどうかは諸説あるようですが、行きつくところはそれほど変わらないかもしれません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人ー集合を連続させるものとして、人間という生きものの思考や認識の仕方そのものなどから、「虚構」といういわばシステムを洗い出し、ひとつずつ紐解いてゆく論著に感じた。人間存在の目は生まれつき脳によって「事実と異なってもその前後と連続する記憶」と事実をすり替えやすい構造を待ち、さらには育った集合によって、どうしてもバイアスがかかってゆく。しかしその錯視こそ、集合体をそれたらしめるものであるとのこと。個人的には、「前世代の戦争責任を後の世代が負う責任はあるのか」の章がとても興味深かった。共同体に属することによって利を得ている以上、その共同体の連続に(良しにしろ悪しきにしろ)寄与してきた過去の責任は構成員に受け継がれるだろう、というのが私の読んだ所感で、これはわかりやすかった。
ただ、その「虚構」によって構成される集合体そのものが、お互いに補完しあってまとまる様子から、霊的なものを「役割」に還元してある意味排除してしまうのは、ごく個人的な感想ではあるが、わかりやすくてももやもやが残る。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第一章に記された「自分の頭で考えるためには、どうしたらよいか。専門用語を避けて平易な言葉で語る。これが第一歩だ。」という一文、
また第二章の「思考枠を感情が変える」の内容全体、
これらが、日常の忙しさにかまけて、早く(安易に)回答を知りたがる自分にとって、とても印象深いメッセージになりました。「うむ、読んで良かった!」という実感です。
ただし、構成には少し戸惑いました。
後半の第四章以降は、前半とはがらりと変わって著者の自叙伝のような内容。
私はこの本を手に取った動機が「筆者の主張を論理的に系統たてて読み解こう」であったので後半に入った時に退屈さを感じてしまいました。
しかし、その後半も読み進めていくと、筆者のアルジェリアとフランスでの実体験や心の動きが臨場感を持って感じられ、徐々に引き込まれて興味深く読むことができました。
大変僭越ながら、読み方としては、最初に後半の第四章以降から読み始めて、作者の「異邦人」としての思考を追いかけつつ、その後に第一章から第三章で、表題でもある「答えのない世界を生きる」ための切り口や考え方を発見していくと、より深く考えることができるのかなあと感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ根本論の話であり、非常に興味深く面白い一冊。
メモ
・勉強は知識の蓄積ではなく、壊すことの方が大切。慣れた思考枠を見直す。
・異質なぶつかり合いを通して矛盾に気づく。矛盾との格闘から新しい着想が生まれる。矛盾や対立がなければ常識を見直す躍動は起きない。
☆他人との比較で考えている時点で、そもそも独創的でない。
・答えでなく、問いを学ぶ。考え方自体を学ぶ。哲学や社会科学では。答えをすぐに出そうとすると現実を正視せず、根本的な問題から逃げてしまっていることがしばしば。
・自分の頭で考えるには、専門用語を避けて平易な言葉で語る。基礎的な事柄ほど難しい。
・型こそが自由な思考を可能にする。認識枠が共有されなければ、解釈は他者に伝達できない。
・わかるとは、理解とは、未知の事項や現象を既知の枠組みに取り込む行為。
・本から内容だけを読み取るのは消費者の発想。自ら生産する意思を持つものの眼には型が見える。学び方をメタレベルで学ぶということ
・枠組みを共有するからこそ、冒険に駆られ自由になれる。
・考えることの意味を問い直す。人間の原理的な限界に気づく。