小坂井敏晶のレビュー一覧
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ネタバレやはり小坂井敏晶宇治の本は好きだ。
「社会心理学講義」と重複する箇所も多いが、それだけに理解が促進される。研究者はもちろん、研究者を志す人にも、現代社会を生きながらも苦しさを感じている人にも勧めたい一冊である。
これまでの価値観が揺すぶられ、未来を見据える礎の一部となるに違いない。
裁判についての記載は「社会心理学講義」にもあったが、ふと「中東 世界の中心の歴史 395年から現代まで」を思い出した。太古の昔から、人間が人間を支配するために、依拠するべき「真実」の存在が必要不可欠だった。今は違うが、中東においても新たなる支配者は「我に正義あり」と、外在的な存在を示すしかなかった。それは本書だけで -
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自分以外の他者の存在は、その思考や身体機能と完全には同一化できないという意味で、実はAIと大差がない。また、それは自動運転でもある。
小坂井氏による『人が人を裁くということ』『格差という虚構』を読んだが、人間のバイアスを取り除いて深く考えさせるのが、著者の面白さだと感じている。本書も例外ではない。また本書は注釈にページが多く割かれ、そちらの重量感もあって、読み応えある本だ。
― 内視鏡検査のために全身麻酔をかけられたことがある。目が覚めた時、検査終了を意識すると共に、このまま死んでしまえばよかったという不思議な気持ちが浮かんだ。麻酔から醒めぬまま命が尽きれば、自分の死を知らず、それ以降の幸 -
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同著者の『社会心理学講義』や『責任という虚構』読もうとしたが重かったので、ちょっと寄り道。紆余曲折の末にフランスで社会心理学者として教鞭を執った著者の半生を振り返った本。
異文化の中で培った普遍性を疑う感性から見た世界を綴る。
「文科系学問は役に立つのか」という章の〆の一文が象徴的だった。
「文科系学問が扱う問いには原理的に解が存在しない。そこに人文学の果たす役割がある。何が良いかは誰にも分からないからだ。いつになっても絶対に分からないからだ。(···)技術と同じ意味で文化系学問の意義を量ってはいけない。」
文科系学問の意義は「人間の原理的な限界に気づく」ことにあるいう。
その認知は知識 -
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考えるとは悩むこと。
人は他人の頭で考えることができないのだから、借り物の知識だけでなく、”不思議だな”と思うことをしつこく追及していくしかない。しつこく悩み考えるなかにスッキリした瞬間があらわれる、たとえそれが大したことない”なーんだ、そんなこと当たり前じゃないか”と言えるものが、実は思考の結果だ。
劣等感と劣等は違う。理想と現実の乖離があるからこそ悩む。悩みが多いということは野心を持っているということだ。
本書を読んで、目の前が明るくスッキリしたという読者は少ないだろうが、確実に自分の体内に小坂井さんの毒素が回っていくとこは実感できる。
10年後にまた再読したい。 -
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近代以降の価値体系の中で育った人間の常識を粉々に粉砕する本。
表題である『神の亡霊』が、この本の重奏低音をなすテーマである。では神の亡霊とはいかなるものなのだろう。それは、近代における神の否定と同時に立ち現れる、自由意志などの虚構のことである。
神の否定は、ニーチェのかの有名な「神は死んだ」
が端的に表すように、科学の発展とともに起こった。しかしながら科学の設定する自然の因果律に取り込まれた人間は、責任の所在を同定出来なくなる。そこで自由意志や主体などの虚構が生成されるのだ。
人間に先立って真理があるのではない。そうではなく、集団が真善美を生み出す。そうして人間社会の秩序は保たれている。 -
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人間社会において”正しさ”は外部からでしか定義できない。かつてはそれを担っていた”神”を人は近代になって殺したとされるが、”正しさ”を定義するモノはやはり外部、”神”の亡霊として存在し続けているといった内容。
かつて公表したエッセイをまとめて、足りない部分に注釈を足した形なのだが、本文よりも注釈の方が多くなってて、良い意味で自分の書いた教科書で授業する大学教授の授業を味わえる本w
文章自体はエッセイとして発表されたモノを基にしてるのでとても読みやすいけれど、理解が簡単かといえばなかなかなモノなんだと思う。少なくとも私は理解したと胸を張れない。
問いと答えが整理されて書かれてる本ではなく、筆者 -
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私たちの生活という営みは、法律や規則、習慣や文化などの様々な体系によって制約を受けている。しかしそれらの体系を、私たちはなぜ遵守するのだろうか。体系の正しさを基礎付ける根拠とはいったい何なのか。
近代以前、それは「神」だった。神の存在が私たちの道徳や価値観、また国を形づくる法などを規定していた。しかし近代以降、明らかになったのは「神は存在しない」。少なくとも現代の科学ではその存在を確かめることができない。つまり私たちの従うルールの正しさを保証する根拠も存在しない、もしくは存在を確かめることができない。なのに私たちはなぜ「正しさ」なる概念が存在し、自分以外の人間とも認識を共有しているはずと信じ -
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「世の中のあらゆることに、絶対的な正解などありはしない」と教える本です。半分は著者の自伝でもあります。
第一章「知識とは何か」、第二章「自分の頭で考えるために」まではまだ大人しいのですが、第三章「文化系学問は役に立つのか」の辺りから過激になっていきます。「大切なのは知識を積むことではない。教育の本質は常識の破壊にある(p92)」、「開かれた社会とは、社会内に生まれる逸脱者の正否を当該社会の論理では決められないという意味である。〔中略〕キリストもガンジーも社会秩序に反抗する逸脱者だった。対してヒトラーやスターリンは当初、国民の多くに支持された(p136)」、「犯罪と創造はどちらも多様性の同 -
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ライフネット生命の出口会長推薦の本。少し前から読みたいと思っていたが、出張の移動時間を利用して読むことができた。作者の学問へのスタイルを形成する要因となった後半部分の作者の半生が、かなりぶっちゃけた内容が続くので、ぐいぐい引き込まれていく。後半スピードアップする感じだ。面白いおっちゃんである。
自他ともに学際的だと思っているところもあり、色々な分野に置き換えて考えることができる内容がある。作者は自分自身の存在価値として、むしろ学際的であるべきとも考えており、まさにイノベーションの定義と同じだなと感じた。また「究極的真理や普遍的真理は存在しない」という現在の哲学の立ち位置を踏まえて、いかに問いを -
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ネタバレ第一章に記された「自分の頭で考えるためには、どうしたらよいか。専門用語を避けて平易な言葉で語る。これが第一歩だ。」という一文、
また第二章の「思考枠を感情が変える」の内容全体、
これらが、日常の忙しさにかまけて、早く(安易に)回答を知りたがる自分にとって、とても印象深いメッセージになりました。「うむ、読んで良かった!」という実感です。
ただし、構成には少し戸惑いました。
後半の第四章以降は、前半とはがらりと変わって著者の自叙伝のような内容。
私はこの本を手に取った動機が「筆者の主張を論理的に系統たてて読み解こう」であったので後半に入った時に退屈さを感じてしまいました。
しかし、その後半も読み -
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ネタバレ根本論の話であり、非常に興味深く面白い一冊。
メモ
・勉強は知識の蓄積ではなく、壊すことの方が大切。慣れた思考枠を見直す。
・異質なぶつかり合いを通して矛盾に気づく。矛盾との格闘から新しい着想が生まれる。矛盾や対立がなければ常識を見直す躍動は起きない。
☆他人との比較で考えている時点で、そもそも独創的でない。
・答えでなく、問いを学ぶ。考え方自体を学ぶ。哲学や社会科学では。答えをすぐに出そうとすると現実を正視せず、根本的な問題から逃げてしまっていることがしばしば。
・自分の頭で考えるには、専門用語を避けて平易な言葉で語る。基礎的な事柄ほど難しい。
・型こそが自由な思考を可能にする。認識枠が共