小坂井敏晶のレビュー一覧
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作者の思考されたものではなく思考の仕方が自伝がてら語られる。
答えのない、正しい答えが存在しない世界だからこそ問い続けなければならないこと、この世界を異端、異邦として見つめることで、画一化される正しさに疑義を与える。
今、この世界に生きるとき、大事な姿勢。
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「解のない世界に人間は生きる。・・・
(中略)
・・・考えることの意味を知ることが重要だ。」
この世界で生きていく上での答えなどない。
自身の問いに向き合えているのか、そう著者に問われている気がした。
とても読みやすく、何度も読み直したい本だ。Posted by ブクログ -
一般的には自由と責任は表裏一体の因果関係であり、なので法や規範の判断の元になる自由意志によって罰される。
ただ、人の行動は脳の信号を起点に人が意識を持つ以上、自由意志はないので責任はないはず。それにもかかわらず規範で人を罰する矛盾をつく。
結局自由も責任も、社会が決めた虚構であり、自由意志みたい...続きを読むPosted by ブクログ -
同著者の『社会心理学講義』や『責任という虚構』読もうとしたが重かったので、ちょっと寄り道。紆余曲折の末にフランスで社会心理学者として教鞭を執った著者の半生を振り返った本。
異文化の中で培った普遍性を疑う感性から見た世界を綴る。
「文科系学問は役に立つのか」という章の〆の一文が象徴的だった。
「文...続きを読むPosted by ブクログ -
考えるとは悩むこと。
人は他人の頭で考えることができないのだから、借り物の知識だけでなく、”不思議だな”と思うことをしつこく追及していくしかない。しつこく悩み考えるなかにスッキリした瞬間があらわれる、たとえそれが大したことない”なーんだ、そんなこと当たり前じゃないか”と言えるものが、実は思考の結果だ...続きを読むPosted by ブクログ -
社会心理学と聞いて心理学の一部門というくらいにしか考えていなかったけれど、社会学や哲学にも造詣が深い著者の目線からの話が全体像を把握しやすかった。
volumeも多く読むのに時間がかかったけれど、どの章もとても内容の濃いものばかりで、改めて読み返したいと思うほどだった。
読み終わって改めて感じたこ...続きを読むPosted by ブクログ -
筆者の本を読むのは10年ぶり,自分の美意識と完全に嵌るまごうことなく最高の本だと思う(というか10年前に筆者に影響されて今の感覚がある気さえする)が,だからこそこれをそろそろ切り崩す必要があると感じるPosted by ブクログ
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本題は4章からだが、個人的には1.2.6章が1番面白く感じた。社会秩序というものがいかに根拠のないもので支えられていて、薄氷の上に成り立っているかという事がわかる。絶対的な神が消えた現代において法や道徳、自由、責任、これらのものを証明する根拠は存在しない。だが虚構は(たとえそれが虚構だとわかったとし...続きを読むPosted by ブクログ
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尊敬する出口治明氏が推薦しているので読んでみた。
近代以前ならば、物事の是非を判断するのは「神」だったが、近代では人間が決めなければならない。
「人間が決める以上、その先に待つのが〈正しい世界〉である保証はない。」
知識の欠如ではなく知識の過剰が理解の邪魔をする。ペルーの農村の話は分かりやすかった。...続きを読むPosted by ブクログ -
人間社会を生きる全ての人に是非読んでほしい!!
後書きまで含めて最高すぎた。
未来は誰にもわからない。だから希望を持ち続けられる。多くの絶望や虚無の先に見えたのは、原始から続く当たり前であった。陽はまた昇るのだ。
アイアムアヒーローは、そういう話だったんじゃないかと思う。批判の多いエンディングだけ...続きを読むPosted by ブクログ -
責任は、秩序を保つために必要な虚構である。決して、その当人に原因があるから罰せられるわけではない。罰するために、当人に原因があったと決めるのである。
こういった「見たくないもの」を直視して社会のあり方を根本から問うことができる力は、早いうちに身につけておきたい視座だ。思春期にこれを読めば、もっと早...続きを読むPosted by ブクログ -
避妊、教育、死刑制度、臓器移植などへの逡巡を神が失われた観点から述べる興趣が尽きない内容でした。あるレビューには筆者の迷いしか書かれていないとありましたが、彼の遅疑とともに考えてこそ楽しめる本ですね。Posted by ブクログ
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死刑制度は、誰もが責任を感じさせないシステムになっているからこそ、維持可能である。
この指摘が、本当にショッキングだった。
第1章で、ホロコーストは、高度な組織化のもと作業分担が行われ、責任が分散化することによって可能だったということを具体的かつ丁寧に論じた後、第2章(表題は「死刑と責任転嫁」)...続きを読むPosted by ブクログ -
近代以降の価値体系の中で育った人間の常識を粉々に粉砕する本。
表題である『神の亡霊』が、この本の重奏低音をなすテーマである。では神の亡霊とはいかなるものなのだろう。それは、近代における神の否定と同時に立ち現れる、自由意志などの虚構のことである。
神の否定は、ニーチェのかの有名な「神は死んだ」
が...続きを読むPosted by ブクログ -
人間社会において”正しさ”は外部からでしか定義できない。かつてはそれを担っていた”神”を人は近代になって殺したとされるが、”正しさ”を定義するモノはやはり外部、”神”の亡霊として存在し続けているといった内容。
かつて公表したエッセイをまとめて、足りない部分に注釈を足した形なのだが、本文よりも注釈の...続きを読むPosted by ブクログ -
著者が熱い。社会と心理は切り離して考えられないという主張を支えるように、著者の言葉には魂がこもっていると感じる。人の意志と言われるものは環境の集積によるもの、自由意志による責任は社会が要請しているもの、といった考察が頭に残っている。Posted by ブクログ
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人間の判断が、いかにいろいろなものに
左右されているのか、過去の研究成果を分かりやすく
説明しつつ、人文科学の研究のあり方、
研究者の問題意識の立て方などを論じる
刺激的な書。
再読したい。Posted by ブクログ -
スゴ本だった。
構成としては、社会心理学として抑えておくべき理論的な発射台を前半部分で示し、これらを基礎とした各論題の追求と考察を後半に行うもの。
人間心理と社会性について古今東西の研究考察を交えたのちにその集合である社会、また社会を構成する一員としての個人へと還元し直す論展開が鮮やか。何より著者...続きを読むPosted by ブクログ -
私たちの生活という営みは、法律や規則、習慣や文化などの様々な体系によって制約を受けている。しかしそれらの体系を、私たちはなぜ遵守するのだろうか。体系の正しさを基礎付ける根拠とはいったい何なのか。
近代以前、それは「神」だった。神の存在が私たちの道徳や価値観、また国を形づくる法などを規定していた。し...続きを読むPosted by ブクログ