小坂井敏晶のレビュー一覧

  • 増補 責任という虚構

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    責任は、秩序を保つために必要な虚構である。決して、その当人に原因があるから罰せられるわけではない。罰するために、当人に原因があったと決めるのである。

    こういった「見たくないもの」を直視して社会のあり方を根本から問うことができる力は、早いうちに身につけておきたい視座だ。思春期にこれを読めば、もっと早くから社会課題に直接対峙できたかも。30代の今だからこそ刺さるのかもしれないですが。。

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    2021年06月30日
  • 神の亡霊 近代という物語

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    ネタバレ

    避妊、教育、死刑制度、臓器移植などへの逡巡を神が失われた観点から述べる興趣が尽きない内容でした。あるレビューには筆者の迷いしか書かれていないとありましたが、彼の遅疑とともに考えてこそ楽しめる本ですね。

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    2021年02月20日
  • 増補 責任という虚構

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    死刑制度は、誰もが責任を感じさせないシステムになっているからこそ、維持可能である。
    この指摘が、本当にショッキングだった。
     
    第1章で、ホロコーストは、高度な組織化のもと作業分担が行われ、責任が分散化することによって可能だったということを具体的かつ丁寧に論じた後、第2章(表題は「死刑と責任転嫁」)で、終局的な死刑執行場面のまざまざしい描写にはじまり、死刑制度はホロコースト同様、分業体制がこれを支え責任が分散化されているからこそ(あるいは「無責任体制」だからこそ)、維持可能だと説得的に論じていくので、全体として第2章は、心情として読むのが非常につらかった。つらすぎた。

    死刑を執行する者、言い

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    2020年11月16日
  • 神の亡霊 近代という物語

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    近代以降の価値体系の中で育った人間の常識を粉々に粉砕する本。

    表題である『神の亡霊』が、この本の重奏低音をなすテーマである。では神の亡霊とはいかなるものなのだろう。それは、近代における神の否定と同時に立ち現れる、自由意志などの虚構のことである。

    神の否定は、ニーチェのかの有名な「神は死んだ」
    が端的に表すように、科学の発展とともに起こった。しかしながら科学の設定する自然の因果律に取り込まれた人間は、責任の所在を同定出来なくなる。そこで自由意志や主体などの虚構が生成されるのだ。

    人間に先立って真理があるのではない。そうではなく、集団が真善美を生み出す。そうして人間社会の秩序は保たれている。

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    2020年07月17日
  • 神の亡霊 近代という物語

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    人間社会において”正しさ”は外部からでしか定義できない。かつてはそれを担っていた”神”を人は近代になって殺したとされるが、”正しさ”を定義するモノはやはり外部、”神”の亡霊として存在し続けているといった内容。

    かつて公表したエッセイをまとめて、足りない部分に注釈を足した形なのだが、本文よりも注釈の方が多くなってて、良い意味で自分の書いた教科書で授業する大学教授の授業を味わえる本w
    文章自体はエッセイとして発表されたモノを基にしてるのでとても読みやすいけれど、理解が簡単かといえばなかなかなモノなんだと思う。少なくとも私は理解したと胸を張れない。
    問いと答えが整理されて書かれてる本ではなく、筆者

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    2020年06月16日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    著者が熱い。社会と心理は切り離して考えられないという主張を支えるように、著者の言葉には魂がこもっていると感じる。人の意志と言われるものは環境の集積によるもの、自由意志による責任は社会が要請しているもの、といった考察が頭に残っている。

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    2020年05月10日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    人間の判断が、いかにいろいろなものに
    左右されているのか、過去の研究成果を分かりやすく
    説明しつつ、人文科学の研究のあり方、
    研究者の問題意識の立て方などを論じる
    刺激的な書。

    再読したい。

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    2020年03月22日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    スゴ本だった。
    構成としては、社会心理学として抑えておくべき理論的な発射台を前半部分で示し、これらを基礎とした各論題の追求と考察を後半に行うもの。

    人間心理と社会性について古今東西の研究考察を交えたのちにその集合である社会、また社会を構成する一員としての個人へと還元し直す論展開が鮮やか。何より著者の社会心理学に対する憤りと熱量が終始マグマのように底流していて、圧巻の読み応えでした。

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    2019年12月15日
  • 神の亡霊 近代という物語

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    私たちの生活という営みは、法律や規則、習慣や文化などの様々な体系によって制約を受けている。しかしそれらの体系を、私たちはなぜ遵守するのだろうか。体系の正しさを基礎付ける根拠とはいったい何なのか。

    近代以前、それは「神」だった。神の存在が私たちの道徳や価値観、また国を形づくる法などを規定していた。しかし近代以降、明らかになったのは「神は存在しない」。少なくとも現代の科学ではその存在を確かめることができない。つまり私たちの従うルールの正しさを保証する根拠も存在しない、もしくは存在を確かめることができない。なのに私たちはなぜ「正しさ」なる概念が存在し、自分以外の人間とも認識を共有しているはずと信じ

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    2019年05月05日
  • 答えのない世界を生きる

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    マイページ毎に脳震盪が直撃するような感覚になる稀有な本。

    自分の頭で考えることの重要性を謳われて久しいが、真に考えるということを今までにないほど、ストレートにぶつけてくる。

    自身の思考枠にヒビが入る。
    それは痺れるような快感だ。

    何なんだこの本は。
    畢竟、独学に勝るものなし。

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    2019年03月24日
  • 答えのない世界を生きる

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     「世の中のあらゆることに、絶対的な正解などありはしない」と教える本です。半分は著者の自伝でもあります。

     第一章「知識とは何か」、第二章「自分の頭で考えるために」まではまだ大人しいのですが、第三章「文化系学問は役に立つのか」の辺りから過激になっていきます。「大切なのは知識を積むことではない。教育の本質は常識の破壊にある(p92)」、「開かれた社会とは、社会内に生まれる逸脱者の正否を当該社会の論理では決められないという意味である。〔中略〕キリストもガンジーも社会秩序に反抗する逸脱者だった。対してヒトラーやスターリンは当初、国民の多くに支持された(p136)」、「犯罪と創造はどちらも多様性の同

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    2019年12月28日
  • 答えのない世界を生きる

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    ライフネットの出口氏がゴリ押ししていた本書。国際人というのは、どこにいても自然に生きられる人であるのに対し、異邦人とは、どこにいても周囲に常に違和感を覚える人。普遍的な心理や正しい生き方など存在しないという前提のもとに、ひたすら問い考え続ける生き方について説く。主観と客観、内側と外側、人生におけるあらゆるフィールドで「線を引く」という行為について大いなる示唆をくれる本。

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    2018年09月02日
  • 答えのない世界を生きる

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    ライフネット生命の出口会長推薦の本。少し前から読みたいと思っていたが、出張の移動時間を利用して読むことができた。作者の学問へのスタイルを形成する要因となった後半部分の作者の半生が、かなりぶっちゃけた内容が続くので、ぐいぐい引き込まれていく。後半スピードアップする感じだ。面白いおっちゃんである。
    自他ともに学際的だと思っているところもあり、色々な分野に置き換えて考えることができる内容がある。作者は自分自身の存在価値として、むしろ学際的であるべきとも考えており、まさにイノベーションの定義と同じだなと感じた。また「究極的真理や普遍的真理は存在しない」という現在の哲学の立ち位置を踏まえて、いかに問いを

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    2017年09月14日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    社会心理学を切り口にしているが、これは「人間とは何か」、「社会とは何か」について、従来拠り所とされてきた「常識」を覆し、筆者独自の視点からそれらの問いに答えた稀有の書である。
    あまりに扱われているコンテンツが豊富過ぎて、一読しただけでは消化不良であった。何度も読み返しながら、自分の思考を深める機会にしたい。

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    2016年08月15日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    ・実験は発見を可能にする技術であり、証明するための道具ではない
    ・子どもが夜泣きで健康を崩すと、フランスの小児科医は子どもにではなく、親に睡眠薬を与えます。なぜでしょうか。夜泣きのために親が眠れずイライラする。すると親のストレスを敏感に子どもが感じ取り、夜泣きする。そこでまた親は眠れず、ストレスが強くなるという悪循環に陥ります。だから、この悪循環を断ち切ればよい。睡眠剤をもらった親が熟睡してストレスが減れば、子どもに対する態度が変化し、子どもも安心して寝付きがよくなる。
    ・居合わせる人の数が多いほど、かえって救助行動が起こりにくい。自分がしなくてもほかの人がやるだろうと安心すると責任感が希薄に

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    2016年01月23日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    『世界や歴史の根源的な恣意性あるいは虚構性を熟知していた点がその理由の一つだと思います。

    つまり世界に普遍的な真理はない、我々の目に映る真理は人間の相互作用が生み出すという世界観です。

    真理だから同意するのではない。悪い行為だから非難するのでもなければ、美しいから愛するのでもない。

    方向が逆です。同意に至るから真理のように映る。社会的に非難される行為を我々は悪と呼ぶ。そして愛するから美しいと形容する。共同体での相互作用が真・善・美を演出するのです。』

    世界の虚構性といかに向き合うか。奥深く、めちゃくちゃ面白い。

    ただ、自明と思われている世界の自明性を一枚一枚剥ぎ取ってしまい、そこには

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    2015年08月01日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    本質という確たる存在があるのではなく、すべては関係性の中でとらえられるということが腑に落ちた。
    日常でよくある、どこかに確かな真理たるものや結論、責任さがしをすることの虚しさが理解できた。
    何回も読まないとなかなか理解には至らないが、人間と社会を考察するために非常に有益だった。

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    2015年01月19日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    かつて同著者の『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)を読んで非常に共鳴するところ多く、感銘を受けたので、この本を買ってみたのだった。「選書」に収まった地味なパッケージで、書名も、心理学に興味のある人以外は手に取らなさそうなものであるが、これは凄く良い本だ。できるだけ多くの方に読んで欲しい。いずれちくま学芸文庫として出版されることを期待する。
    自然科学的手法だけでは解読しきれない「心理」の学を、「科学的見せかけ」にとらわれず、縦横に論を展開する本書は、心理学上の豊穣な実験データを収録すると共に、社会論であり、哲学でさえあるような、優れた知的営為の結実である。
    ミルグラム『服従の心理』(ハヤカワ文庫

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    2014年09月27日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    ライフネットの出口さんの書評より、読んでみたのですが、数々の"常識"を揺るがすような実験や引用、言葉が多く、思考させられる刺激的な本でした。

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    2014年05月29日
  • 社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>

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    心理学の理論から社会制度や人間の本質に切り込んでいくところが何とも迫力がある。世の中虚構があふれているが、それ故に成り立っているというのは正しくその通りだろう。

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    2020年10月03日