光瀬龍のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『百億の昼と千億の夜』に代表される光瀬龍の世界とは、私が思うに、とどめようのない衰退と絶望、そのなかでひとり抗う主人公というものだ。
かつて栄耀栄華を誇った世界である事が前提となるものの、必ずといって良いほど、作品のあちこちに、その世界が今吸いたいに向かっていること、滅びつつある事がうかがえる。
一方、短篇が多い光瀬龍の未来宇宙では、しばしば「東キャナル市」という火星の街が登場する。
この街もまた、かつては太陽系の中心都市ですらあったのに、今は見る影もない場所として描かれる。
たとえば、いったい誰を表したものとも知れない銅像の下でたむろする、老いさらばえたスペースマンたち。彼らの多くはサイ -
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「もしも、太平洋戦争で日本とドイツが勝利したら?」という、P・K・ディックの「高い城の男」の前段階のようなストーリー。
視点は主に3人である。それ以上は必要ない。そこがわかると、グイグイとストーリーに引き込まれていく。
そこまでに、大量の兵器の性能の話などが挟まれる上、光瀬龍らしく、というかハードSF作家らしく、マクロ視点の世界の情勢俯瞰が入ってくるので、若干とっつきは悪いかと思われる。
読み進めるうちに、ドイツと日本が戦争に勝利した現実と、それはおかしいのではないかと疑問を抱く読者と3人の登場人物の視点が一体化していくあたりは、この作品に没頭していくポイントとなるだろう。
最後の並行 -
Posted by ブクログ
「百億の昼と千億の夜」は僕らの世代のSF原体験だ。「時をかける少女」や「謎の転校生」といった「少年SFシリーズ」で、ジュブナイルSFの面白さに目覚めた僕らは、成長すると共にもっと新しいSF、もっと面白いSFをがむしゃらに求め始めた。そんな時に出会ったのが本書だったのだ。作者の光瀬龍は「夕ばえ作戦」の著者としてお馴染みの作家だった。そして勇んでページをめくった僕の目に飛び込んできたのは、「寄せてはかえし、寄せてはかえし、かえしては寄せる波また波の上を・・・」という呪文のようなリフレインだったのだ。僕は焦った。これは「夕ばえ作戦」とは違う、何だか判らない、何だか難しい・・・
でも僕はその「判らなさ -
Posted by ブクログ
プラトン、悉達多、ナザレのイエスなど歴史上の偉人と宗教の開祖たちの姿を通して、神とは何か、宇宙の終わりとはをSFの枠組みのもと、壮大なスケールで描いた大作。
なんとなく既視感を覚える場面もあるけれど、これこそが自分が触れて来たマンガ、アニメ、ゲームなどに影響を与えたのかな。ここで描かれたヴィジョンは非常に影響力が大きいと思う。
光瀬龍という作家の小説を本作で初めて読んだけれど、不思議な書き方をする作家だ、と読みながら考えていた。
夢か幻のような抒情性のある文体や場面。そこに本格的なSF設定が土台にすえられていて、奇妙な反応を起こしているよう。仏典で描かれた世界をSF的な設定とともに梵天王が