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Posted by ブクログ
『百億の昼と千億の夜』に代表される光瀬龍の世界とは、私が思うに、とどめようのない衰退と絶望、そのなかでひとり抗う主人公というものだ。
かつて栄耀栄華を誇った世界である事が前提となるものの、必ずといって良いほど、作品のあちこちに、その世界が今吸いたいに向かっていること、滅びつつある事がうかがえる。
一方、短篇が多い光瀬龍の未来宇宙では、しばしば「東キャナル市」という火星の街が登場する。
この街もまた、かつては太陽系の中心都市ですらあったのに、今は見る影もない場所として描かれる。
たとえば、いったい誰を表したものとも知れない銅像の下でたむろする、老いさらばえたスペースマンたち。彼らの多くはサイボーグでもあり、もはやその時代では探検は行われなくなり、サイボーグの登場を必要とする場面もなくなってしまったのだ。
巻末にも収録されている、光瀬龍の幾つかあるあとがきの中で、この東キャナル市は、明確な設定がなく、夢の中に登場する街のように、どういう場所だかわかっているのに、どこか曖昧である、そんなところであるのだそうだ。
この選集には、『東キャナル文書』をはじめ、東キャナル市が登場する短篇や中編が選ばれているようで、その明確さと曖昧さがいずれも際立ち、読者を幻惑する。
幻のような火星人の存在が、東キャナル市と、「火星人の道」とともに現れては消え、消えては現れる。
いったいどれが真実なのか。それはなかなか読者の前に現れてはこない。
そのつかみどころのなさが、寂漠とした世界とともに、読む者を魅了してやまない。
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