蒲生俊敬のレビュー一覧
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読んでいてワクワクするような稀有な科学読み物。ほとんど一気読みでした。
宇宙飛行士が550人を数える時代に1万メートル超の海溝底に到達したのは3人だけ。太平洋の平均深度は4188メートルもあり、最も深いマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵は1万920メートルもあります。
著者の蒲生俊敬さんは研究船や潜水艦によるフィールド調査をこよなく愛し、乗船観測は1740日に及び深海潜水船での潜航経験を15回持つ海洋研究者。本書を読んでいると蒲生さんの海洋愛がひしひしと感じられます。
「世界最大の広さを誇」る「太平洋を、三次元の視点で眺めながら、ぼく自身の調査経験や知識の及ぶかぎりにおいて、これは重要と思 -
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太平洋について、その海洋を「柔らかい太平洋」とし、その海洋底以下のプレートを「堅い太平洋」として、太平洋地域全体をそれぞれの研究発展史も含めて網羅的に記載するというアイディアが中々面白い。著者の専門は、どちらかといえば海洋の方らしいが、プレートテクトニクスの面からも十分に記載しており、特に、現在ハワイにあるホットスポットの移動という話は新しい研究結果なのか、この種の本で初めて目にした。バチスカーフとかトリエステ号という言葉は、以前はもっと知られたもののようだった気がするが、最近はすっかり目にしなくなった。トリエステ号の浮力にガソリンが使われていたとか、初めて聞く話も多く、大変興味深く読むことが
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ネタバレ太平洋や北海道民にとってのオホーツク海より地味な印象の日本海。
しかしそこは地球の海の縮図ともいえるダイナミックな海。
知的好奇心を刺激する、一級の科学読み物。
日本海の特徴は風呂桶のような構造になっていること。3000mを超える深度があるにもかかわらず、周囲の海峡は深さ150m(対馬海峡)から10m(間宮海峡)程度しかない。その日本海の深層水を調べると驚くべき結果がでる。
塩分濃度、温度、酸素濃度が2つの断層面は挟むものの一定に保たれていること。これは海水が十分に攪拌されていることを示す。ではどのようにその流れが起きるのか。
ロシアから吹き降ろす冬季の北西季節風により対馬海峡 -
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深海の世界を紹介した本。図表と写真を使い、大変分かりやすい文章で好感を持てた。 ポピュラーサイエンスの本は、こうあるべきだろう。 深海の世界は、テレビのドキュメンタリーで時々見ることがあるが、断片的な情報だけで具体的に知ることはなかった。 この本では、深海の世界を様々な角度から紹介していて、大変勉強になった。 高校生の地学の参考書、読み物としても良さそう。 中でも海底探査の歴史は、面白かった。 今までに地球の最深部チャレンジャー海淵に到達した人はわずか13名しかいないそうだ。 中でもヴェクターヴェスコーヴォは、5大洋の最深部に潜った人として有名。でもあまり知られていない。それほど深海に興味を持
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購入済み
著者得意のテーマ
日本海、太平洋と続く著者得意のテーマである。
世界の深海を冷水がめぐる大循環。気球温暖化によるその大循環が止まることによる影響。
等の記述がとても印象に残った。 -
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海洋の専門家による、太平洋の話。太平洋を構成する水と海底地形から始まり、海底火山、海溝、その西側にある列島(島弧火山)について述べ、最後に今までの調査経験を踏まえ、深海へのチャレンジについて書いている。ブルーバックスらしく、子供でも分かるように、簡潔に詳しく太平洋について知ることができ、役立った。
「1927年、音測によってフィリピン海溝を本格的に測量したドイツ軍艦「エムデン号」は、ミンダナオ島の東方海域で1万0739mという、人類史上初めて1万メートルの大台を超える水測値を得ました」p184
「JAXAの統計によれば、宇宙を飛行した人類は、世界ですでに550人を超えています。これとは対照的に -
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memo:
平均水深 最大水深
日本海 1667m 10920m(マリアナ海溝)
全海洋 3800m 3796m(日本海盆)
黄海・東シナ海 272m
オホーツク海 973m
大和海盆 3000m 対馬海盆 2600m 大和堆 236m
海峡 間宮10m 宗谷50m 津軽130m 対馬130m
~海峡の浅さ、強い閉鎖性
干満の差 八戸130cm 深浦20cm
(P37)
「ブロッカーのコンベアーベルト」
北大西洋深層水(冷却され塩分の高い北部北大西洋で沈み込んだ高密度水)→大西洋を南下 →南極底層水 →(地球の自転の動きで西へ)→太平洋 暖かい -
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ネタバレ以前知人が「日本海側で潮干狩りがあまり盛んでないのは潮の干満差がないから」と言っていたので、実際にはどうかとブルーバックスの本書を読んでみることにする。
日本海は狭い海峡を通じてしか外海と接しておらず、この閉鎖性から潮の満干きが小さい。また、対馬海峡を通って日本海へ流れ込む対馬暖流が果たす役割は非常に大きく、日本列島に豊かな水資源をもたらす降雪や、日本海の海水を上下にかき混ぜ酸素を供給するの一因となることが分かった。
著者は東京大学大気海洋研究所の教授で永年海洋循環を研究してきた。日本海は全海洋のたった0.3パーセントを占めるにすぎないが、「日本海の深層循環系は、それだけで完結しているという点 -
Posted by ブクログ
何一つ知識のないジャンルは、ブルーバックスや岩波ジュニア新書で知ることが多い。
なんといっても分かりやすいので重宝している。
海ものは好きだけど、詳しいことは全然知らない世界。
今回もこの本で楽しく入門の扉を叩いてきた。
深海の研究は難しく、特に世界でも指折りの最深の場所、日本海溝周辺の研究はようやくはじまったと言えるらしい。
圧力との戦い、遠き場所での孤立無援のチャレンジャーという点でも、同じ時期に進められてきた、宇宙の研究と似ているとのこと。
読んでいて面白かったのは、空気中と水中では、音と光のあり方が反対だという点。
水中では、光はすぐに失われてしまうが、音は空気中より遥かに速く、