篠田英朗のレビュー一覧
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大陸の中心部のハートランドを制したものが沿岸部のリムランドも制するのか、それとも、リムランドを制したものがハートランドも掌握するのか、シーパワーであるにも関わらずランドパワーとしての侵略を犯してしまった大日本帝国の、ランドパワーからの制圧(ソ連対日参戦)は必然なのか、地政学という定まっていない学問の中で歴史を読み解くことは非常に興味深い一方で、あまりにも変数が多いとも言える。中国という、ランドパワーもシーパワーも有する「両生類」が画策する一帯一路に、日本からインド、中東、東アフリカ世界を包含したアジア太平洋世界は対抗しうるのか、全ては何もまだ経験していないから分からないのである。
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憲法学会(憲法学者)による、組織的な日本国憲法のハイジャックを告発する本。
日本国憲法のテキストにない言葉、原則、概念をねつ造して日本国憲法本来の趣旨を歪め、その「国際協調主義」を全否定してきた憲法学会(憲法学者)の罪は重い。
憲法は、憲法学会(憲法学者)に任せるには重大すぎる事柄であると再認識した。
また、9条2項の「交戦権の否定」が、そもそも現代国際法において、「交戦権は既に現代国際法で否定されている」「(個別的および集団的)自衛権を否定するものではない」
「戦力の不保持」も、ここで対象となるのは、国際法で否定されている戦争を行うための戦力であり、自衛のための戦力の保持は何ら規制されて -
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読みやすい文章で、現行憲法において、集団的自衛権がなぜ合憲なのか(そして、なぜ憲法学者が嘘をつくのか)について、集団的自衛権の歴史及び日本国憲法制定の経緯から、その源流について述べている。
日本国憲法のそこにも集団的自衛権の制約はおろか、自衛権に関する規定もない
自衛権は国際法上の概念
「戦争」であるが合法である、と言う行為は、現代国際法には存在しない
「交戦権」は、現代国際法に存在している概念ではない
この英米系立憲主義を自然な思想傾向としてもつアメリカ人が起草した日本国憲法典を、ドイツ国法学とフランス革命の絶対主権論の信奉者である2本の憲法学者は、良く理解しなかった
国際連盟規 -
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毎日世界のどこかで争いが起こり大勢の市民が犠牲になっている。なぜ人は争うのか。権力争いの発展系や領土拡大欲、宗教の対立など原因は様々だ。その根本原因はそれぞれに違うだろうが、地球を海と大陸、そして流れる河や砂漠、山脈、地図の上から確認できる地形的要素を加えて、力の関係や方向性、政治を考察するのが地政学だ。ここ数年本屋で多くの書籍を見かけるようになったし、会社に訪問してくるグローバル企業のエバンジェリストの方なども、地政学の話をよくされるので、私もいくつか本を手に取り読んでみた。本書はその中でも、これまでの私の浅い知識を再整理し、言葉の意味合いや考え方のおさらいに非常に役に立つ。
わかりやすいと -
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「戦後日本の国体」に於ける日本国憲法がどのような歴史を辿って来たのかを著した一冊です。日本の歴代の憲法学者の主張を分析し、本当の日本国憲法とはどのように解釈すべきなのかを提言した含蓄に満ちた内容でした。日本国憲法は「国民による政府の制限ではなく、憲法規範による社会構成員全員の制限によって定義される「立憲主義」」と「国際協調主義」に基づき憲法と国際法の調和を求めていると本書は説きます。日本国憲法が既に存在していた国際連合憲章を後追い的に追認するものであるというのは、腑に落ちました。この本の発行当時は安倍総理による集団的自衛権の行使に注目が集まっていた時期だったので、終章の著者の憲法9条に於ける意
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日本人にとって他人事と思われがちな紛争について5つの理論的視座を地域とその歴史を通して対立の本質的要因を解いた本著はとても興味深かったです。正直、自分も意識的に注意しないと中東紛争など日本には関係ないと思ってしまっていた節がありました。しかし、他国(特にアメリカという超大国)と密接な関係を持ち、中国やロシアと地理的距離も近い日本こそ世界中の紛争に深く関係している事に気づかされ、事の重大さを思い知りました。今物議を醸している香港問題は米中対立や中国の東シナにおける台頭と拡張が挙げられていますがその背景にある地政学や勢力均衡、文明の衝突等の存在に文献のおかげで着眼することができました。
本著を通し -
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9条をめぐる国内の憲法学説が、いかに国際法と噛み合わないガラパゴス学説であるかを論じています。あくまで9条は不戦条約や国連憲章の焼き直しであることを強調しています。また、憲法学者ひとりひとりを章立てて批判しており、問題点を理解しやすい論じ方だと思いました。
本書にあえて疑問を投げかけてみます。
なぜガラパゴスではいけないのか。国際法が必ず国内法に優越することは自明ではないはずです。国内における特殊な理由があれば、ガラパゴス化そのものは非難の対象とはならないのではないでしょうか。また、もし憲法学者自身がガラパゴス現象を自覚しているのなら尚更でしょう。
なぜ戦後に憲法学者たちが、9条の特殊性 -
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とても読みやすく勉強になる本だった。
この本の前に、安保論の本を読んだ。
その本だけ読んでいたら、言われてみればそうだ!ってことばかりだったんだけど、その後にこの本を読み、そもそもこの世界の作りを知って、安保論の世界観は未来永劫続くものではないし、そもそもこの価値観は欧米諸国主導で作られたものであって、脆いものなのだ。
こんなことを考えながら、ニュースを見ているとかなり怖い。
世界の中の日本、という考え方から目をそらして、私たちはこうだからって言いたくなる気持ちも分かるけれど、それじゃあ滅びるんだなぁ。
1歳になったばかりの甥っ子の将来を案じつつ、じゃあどうしよう、ということを考える本だっ -
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こういう論争を呼び込む議論を新書でしているのは、わくわくしますね!
しかもその手法が既存の解釈に対して憲法典を忠実に読み込むことで反論とする、まるで現代の宗教改革みたいでおもしろいです。
読後の一番の感想は、法ナショナリズムへの欲求を我慢すれば改憲の必要はないのかも、ということでした。
本書では、戦前日本の軍事的挑戦を鑑みつくられたGHQ憲法と、当時の国際法との本来的親和性を強調します。目的は国際協調です。この議論でいう国際協調とはなにをイメージしたらいいのでしょうか。本書の筋で考えるとすれば、歴史的に見るべきでしょう。それは憲法成立時、国際法ならびに国際協調とは大戦の勝者、なかでもルーラー -
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日本国憲法観が一変した。学校教育での社会科、行政書士試験を通して日本国憲法を学習し、さらに数多くの集団的自衛権論を学んできた自分であったが、基本概念である「主権」や3大原理についてさえ、理解に大きな隔たりがあったとは驚きだ。また、歴史的な意図にも無知だった。芦辺『憲法』に代表される東大法学部出身者が作り上げてきた論を痛快に批判し、成功している。
・立憲主義とは「法の支配」の貫徹。国民主権に対しても屈することがない。
・紛争後の和平プロセスにおいて、あるいはもっと平常な開発援助を通じた場合であっても、大量の外国人コンサルタントによって法制度が整備されていく場面は、あまりにも日常的な風景だ。
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5つの理論的視座を通して、地域を別にして、紛争、対立の本質的な要因を読み解く。テレビ等の時事解説や政治家の言説がいかに浅薄なものだったか、この本で思い知る。
韓国の立ち位置、地政学の本来の意味、イスラムの混乱の本質、アフリカという国家制度がなじまない地域への視点、アメリカという成長神話を奉じる国家の限界などなどどれも目から鱗だった。
・国家間紛争に代わって、国家内紛争が主流になった、という言い方は、あまりに単純すぎる。
・米中という二つの超大国の双方が、他方に対する最善の窓口を韓国と指名するようなシナリオが韓国にとってベスト。
・東欧を制するものはハートランドを制し、ハートランドを支配する -
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歴史と理論を踏まえ、現在の世界の在り方を根源から問い直し、未来について考える良著。
勢力均衡理論により東アジアにおける日本、中国、韓国等の関係について見たり、マッキンダー等の地政学によりヨーロッパと2つの世界大戦を見たり、文明の衝突論により中東を分析し、 主権国家という仕組みそのものの根源について見たり、ウォーラーステインの世界システム論により世界システムの周辺としてのアフリカを分析し、国民国家を主体とする現代の国際秩序そのものの根源について見たり、成長の限界という観点からマニフェストデスティニーの思想のもと成長を続けたアメリカの歴史を概観し、限界を迎えたときにどうなるのかを考えたり。 -
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ハウスホーファーを始めとする大陸系地政学とマッキンダーなどの英米系地政学。大きく異なる二つの視点から歴史と現在の世界を概観する。そもそもの国家観や人間観という根本から異なるというのはなるほどと思ったし、その見方の違いによってアメリカのモンロー主義の意味合いやWW1参戦の捉え方も全然違ったものになるというのはわかりやすかった。地理的制約が政治や国際関係に影響を与えるというシンプルで確からしそうなメッセージを持つのにどこか胡散臭いイメージが拭えなかった地政学について、その経緯と理由も概ね理解できた(私は政治学部出身ですが地政学の授業なんてなかったですしね)し、どの辺りは有用なのかという部分も理解で
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「戦争の」とあるが、戦争に特化したわけではなく、現代の世界情勢を踏まえ地政学と各国の対外的国家戦略との関係を議論したもの。
大陸系地政学と英米系地政学の違いや、我が国を含む主要国が過去一世紀半にわたり、どちらの立場で行動してきたかをわかりやすく整理している。
我が国の現行憲法との関係にまで言及しているのは、著者の真骨頂か。
地政学は机上の仮説に留まらず、それに対する立場の違いが各国の国家戦略の違いとして明示的に現れるとの指摘は、ロシアによるウクライナ侵攻を考えれば正に的を射ている。
冊封体制への回帰を志向する中国や、イスラム原理主義は行動原理が従来の(欧米発の)地政学の前提とも微妙に異な