篠田英朗のレビュー一覧
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法学部法律学科で憲法を専攻する学生の視点から感想を述べる。
ゼミの夏合宿にて、総勢30名が本書の言説を多角的視点から分析したが、主に私が担当した憲法9条の解釈論(おそらく本書でいう1〜4章あたり)について、篠田氏の思考方法と、本書の内容について触れる。
⑴篠田氏の思考方法について
彼は主に国際法的観点から、憲法のあるべき解釈について主張している。ことに、憲法前文の記述を独自の解釈により9条の解釈について論じている。この思考方法は、なんら憲法学者と変わらず、その作法を守っている意味で、外観は、憲法的議論としては成立している。ただ、憲法前文では、周知の通り基本的人権の尊重、国民主権、平和主義が挙げられており、彼の言う「国際協調主義」は、普遍的なそれではなく、彼の色が入ったものになってしまっている。芦部や長谷部、その他憲法学者よれば、憲法学者は、国際協調主義=いわゆる平和主義の観点を、踏まえた上で憲法解釈を試みていることがわかる(芦部『憲法』を参照)。つまり、国連憲章やパリ不戦条約などの文言との連関について、篠田氏だけでなく、すでに憲法学者は実践済みということだ。したがって、篠田氏の思考方法については、間違っていないものの、その意味内容については、やや一元的かつ限定的なものになっていると解する。これについては下段に詳細を譲る。
⑵本書の内容について
東大法学部批判を試み、ことに憲法9条について独自の解釈内容を提供している。東大法学部批判については、芦部が理由なく、war potentialについて定義しているという批判については、納得する部分がある。平等原則違反につき、同法14条1項の後段列挙事由にあたる場合は、より厳格な目的手段審査を要する、という14条における芦部説が根拠をもっていないことと似ている。
ただ9条における解釈については、パリ不戦条約や国連憲章の文言を意識し過ぎた解釈となり、一元的なものになっている。また彼の主張を支える、根幹にある憲法前文は、国際協調主義を掲げたものであるという主張には、前文解釈において、誤読部分があり結果として論理として成り立っていない。また国際法学者の文献からもこの解釈が誤りであることがわかる。
しかしながら、本書並びに、彼の書籍における主張を分析する中で、法学的思考の重要性や新たな視点という発見や再確認する事項も多々ある。したがって本書を読む際には、憲法の教科書と比較しつつ読むべきであり、一般的な憲法学の専門書のみ、本書のみでは、得られるものはないと思う。すくなくともアカデミックなテーマを扱う本書のみで憲法について評価をつけることは、お勧めしない。
※同じことを繰り返し述べているので、論旨が記述されている部分は、以下の頁を参照。
参考文献
→彼の本を理解する上での文献を一部掲載します。
本書→19,22,24,26,32,53,63,91,92,101,117頁
篠田『ほんとうの憲法』(筑摩書房)→39,42,58,152-154頁
佐藤幸治『憲法1』(成文堂)127頁
芦部信喜『憲法』(有斐閣)54,56-59,67,385頁
長谷部恭男『憲法』(新世社)62頁
愛敬浩二『改憲問題』(筑摩書房)58-59頁
駒村圭吾『プレステップ憲法』(弘文堂)69頁
藤田久一「平和主義と国際貢献-国際法からみた9条改正議論」ジュリスト1289号(2005)89頁など。
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国際法学の観点から日本国憲法の特に9条の成立過程を読み解く。その論理は、緻密で説得力がある。しかし、一方的すぎる。
憲法学が東大の学者中心のヒエラルキーで成り立っていることや、宮沢、長谷部、(今をときめく)木村などの見解に論旨不整合ないし不充分な点があることも事実だろう。国際法的視点から現在の憲法学の主流の解釈がおかしいこともよくわかる。しかし、それでも憲法学の大勢が、国際法とは異なり、一切の戦力放棄あるいは集団的自衛権は違憲だが個別的自衛権は合憲という解釈を(無理をしてでも)主張してきた重みが軽視されている。「国際法からみるとこうなんですよ。」というスタンスであったなら、本書は(著者からみれば良識のない)憲法学者にももっと耳を傾けてもらえただろう。
論理的に正しくても人の心は動かせない。議論の在り方を考えさせられもする一冊。 -
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国際法の立場から見た、日本国憲法。
いかに国内の、んで、憲法畑の先生たちの論が、ガラパゴスなのかと。
利権構造、権威構造がここまで酷いのかと驚いた。
元々日本国憲法は英文で書かれたものを和訳したもの。原文に当たれば、不戦条約とか、国連憲章のコピペであることは一目瞭然で、であれば、それに沿った解釈をすべきではないか。
要は、国際ルールをきちんと守って、国際社会に復帰しますという約束なのだ。
それを変な思い込みに沿って解釈しようとするからおかしくなる。とことんおかしくなる。
目的のための議論。
政治家でもあるまいし。
全部受け入れて良いのかどうかは判らないけど、目的のために変節も厭わない方々だけのことを聞いているのも、また間違いなんだろう。
全般的に得心だが、先の大戦をさらりと日本の侵略という前提で語っているのは。引っ掛かった。ま、米国の作った方の立場から見たらそうなのだろうとは思ったけど。 -
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「『複数の人間(集団)が、相容れない目的をもっているとき』、紛争は生まれる」(P14)。分析のスタートとして的確な定義だと思う。つまりそう簡単に紛争はなくならない、ということだ。では不安定なりに維持しなければならない秩序とは何か。
著者が強調するのは、世界のそれぞれの地域に「国民」が存在し、その「国民」が「国家」を形成しているというしくみ(P38)自体が、せいぜい20世紀後半に確立したものであること、このいわば「今たまたま」の国際秩序を費用対効果に見合った方法で維持できるのか、その答えは見つかっていないこと(P42)、の二点。
当たり前だが、すべてを整合的に説明できるような統一理論は社会科学には(今のところ)存在しない。ただ冷静な観察からある種の傾向を見つけることは可能、ということは言えそうだ。 -
Posted by ブクログ
予想以上に、と言ってはいけないのだが、面白かった。
どっかの代表のおっさんが、憲法とは国の権力を制限するためにあることも知らんのか、と叫んでたのを見て、あれ、そうだっけと思って憲法関係の本を読んで見たかった。
憲法を素直に読もう。
そうか、そもそも英米法である日本憲法を大陸法で理解しょうとするところに無理はあるし、憲法村は東大法学部のお庭ななんだな。
「抵抗の憲法学」と言うことがも初めて聞いたけど、そう言うことか。
筆者は国際法の立場から憲法を眺めており、ちょっと、やっぱり解釈論だよねってところはあるが、9条だけでなく、日本と憲法を取り巻く歴史から語っており、わかりやすい。
つか、憲法学って今ある憲法の解釈に終始してて、そもそも日本に何が必要かって、考えないのよね。
ある意味不毛。 -
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まさか著者も私のような無学な人間が読むとは想像していなかったのかもしれない。
IQが離れていると会話が噛み合わないと聞いたことがあるが、読みながらそれを思い出した。何を言っているのかがわからない…。読み始めた当初は最近の私の悪癖、エセ速読(内容がしっかりと頭に入っていないのに、単語を形として認識しぽんぽん読み進めていく。それでほぼ問題ないくらいの内容の本を読んできたので癖になっていた)とこの本の難しさが相性が悪かったのかもしれない。徐々にきちんと読まないとこれは理解できないぞ、となり、一語一語しっかり読むようになって少しわかるときもありました。
この本を読んで、自分が本で触れてきた地政学が、地政学の全てではないということがわかりました。結構大きな収穫と思っております。
並々ならぬ思いがあって、この本を書いたのはわかるのですが、
手に取りやすいものは本作ではなく、もっとかみ砕いた内容のものだと思います。事実自分が手に取ったものももっと平易なものでした。
嘆くのでは無く、自分もアプローチを変えて啓蒙したらどうなのかなと頭をよぎりました。監修とか。
memo:
この本で初めて知った単語「敷衍」。 -
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地政学については今でも興味を持っている分野ですが、昨年の私の59歳の誕生日を迎えるあたりに読んでいた本でいた本ですが、部屋の隅に放置されていました。
地政学の本を読んでいて楽しいのは、本文の理解を助けるために、必ず地図が出てくることですね。それも、現在の見慣れている地図ではなく、事件・戦争が起きた時の地図なので、今と国境や時代を遡れば、地形さえも変わってきますからね。読み終わって時間が経過していますので、レビューを書きながら中身を振り返りたく思います。
以下は気になったポイントです。
・17世紀までは、スウェーデンが北方勢力の代表であった、18世紀以降は、ロシアが勢力を拡大し、欧州北方に位置する大国として君臨するようになった(p87)
・アメリカの思想が第一次世界大戦後に広がってきた、それに加えて、国際秩序お面では帝国主義的な大国政治を否定し、民族自決にもどづく秩序を打ち出した、それを裏付けるのが、戦争を違法とする国際法の構造転換、さらに、集団安全保障の制度である(p93)
・バルト3国はともかく、旧ソ連から分離して独立国となった、ウクライナ・モルドバ・ベルラーシ・ジョージア・アルメニア・アゼルバイジャン・中央アジアの国々は焦点となった。2008年にブッシュ政権がウクライナ、ジョージアのNATO加盟を提案した際には、プーチン大統領はこれに猛然と怒りを表明した(p113)
・日清戦争によって朝鮮半島と台湾を清の勢力圏から切り離すことに成功した日本は、清と手を結んで欧米の大国の植民地主義に対抗するうような外交政策はなく、海洋国家として諸島部と半島に対する大陸の大国の影響を排除する外交政策に合理性を見出した(p127)
・第二次世界大戦が終結すると、ドイツではハウスホーファが戦争犯罪人としての嫌疑をかけられた、日本でも彼の地政学理論を参照しながら大東亜共栄圏を推進していた人々は、戦争犯罪人として嫌疑をかけられた(p141)
・大陸系地政学の観点から見ると、NATOの東方拡大は、ロシア勢力圏の切り崩しでしかなかった、プーチンが激怒したのは、アメリカが支援した民主化運動によってマイダン革命が起きたこと、民主化支援はアメリカから見ればロシアの勢力圏切り崩しとは異なる事柄だったであろうが、プーチンにとっては、暗黙の合意に対する裏切り行為であった。そこで、プーチンはクリミア併合と、東部地域の分離主義運動への軍事的加担を行った(p191)
2023年3月31日読破
2024年8月25日作成 -
Posted by ブクログ
日本では戦前の流れから忌避されてきた「地政学」。
ところが、「地政学」と言った、確定された学問分野は実はない。
やばかったのは大陸系地政学で、今の日本はむしろ、もう一方の英米系地政学に則っている。
その、英米系地政学は、実は、日英同盟の分析から唱えられた。
いわゆる、ランドパワーに対するシーパワー。
ランドパワーは、バランスオブパワーとか、生存権とか勢力圏とかいうものに繋がっていくもので、日本も、本来シーパワーに属していたのが、ランドパワーに変に偏って行った結果、破滅した。
もっとも、そこに追い込んだのは、敵と味方を間違える天才、シーパワーの雄、お米の国、のような気もする。
篠田先生自体も、別段地政学が絶対とは仰っていない。
だがこの視点は大切なんだと思う。
篠田先生の本はどれも簡潔で説得力あって、読みやすい。 -
Posted by ブクログ
国際法学者・紛争解決論の専門家 戦争でなく武力紛争
紛争
複数の当事者multiple partiesが相反する目的incompatible goalsを追求する際に発生する状態
P.35 ポーツマス条約に見る第三者=アメリカの位置づけ
立場と利益interest(より深層に設定されるべきneeds)
P.55 紛争解決の事例としての薩長同盟
紛争対応
・回避avoidance
・交渉negotiation
・調停mediation, arbitration
・強制coercion
問題解決のアプローチ MECE
P.117 カンボジア 民主化の紛争解決