あらすじ
「集団的自衛権をもたない国は侵攻される」。ウクライナをはじめ、世界がロシアの暴虐から得た教訓である。ところが、日本には「集団的自衛権は憲法違反」という珍奇な説を訴える人々がいる。アメリカを憎み、日米同盟を壊そうとする憲法学者が、あろうことか国連憲章にある国際法上の「自衛権」がおかしな概念であり、日本国憲法こそが正しい、という倒錯した議論を展開しているのだ。国際社会の合意、平和維持のルールを突き崩そうとする危険な主張にほかならない。著者は近年の空気に危機感を抱き、本書で「集団的自衛権の考え方は国連憲章以前から存在する」ことを明らかにする。たとえばアメリカ合衆国が19世紀に掲げた「モンロー・ドクトリン」(「孤立主義」の表現は誤り。本書参照)や、自由主義陣営の優越性を守る「トルーマン・ドクトリン」、ウッドロー・ウィルソン大統領が語った「いかなる国も自国の政策を他国民の上に及ぼそうとしてはならず、すべての人民が妨害されることなく、脅かされず、恐れることなく、弱小国も強大国も等しく、自らの政策と発展の道を決定するのに自由でなければならない」というビジョンである。しかしウィルソンの構想は現在、「勢力圏」を唱えるロシアや膨張主義を正当化する中国によって悪用されてしまっている。ウクライナに続く侵略の犠牲者がいつ、どの国から出ても不思議ではない状況だ。今こそ、日本を守る集団的自衛権の意味を正しく伝えることを試みたい。
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Posted by ブクログ
読みやすい文章で、現行憲法において、集団的自衛権がなぜ合憲なのか(そして、なぜ憲法学者が嘘をつくのか)について、集団的自衛権の歴史及び日本国憲法制定の経緯から、その源流について述べている。
日本国憲法のそこにも集団的自衛権の制約はおろか、自衛権に関する規定もない
自衛権は国際法上の概念
「戦争」であるが合法である、と言う行為は、現代国際法には存在しない
「交戦権」は、現代国際法に存在している概念ではない
この英米系立憲主義を自然な思想傾向としてもつアメリカ人が起草した日本国憲法典を、ドイツ国法学とフランス革命の絶対主権論の信奉者である2本の憲法学者は、良く理解しなかった
国際連盟規約から国際連合憲章に至る歴史的経緯を見れば、集団安全保障と集団的自衛権が、相互補強を期待されて導入されたことは一目瞭然世ある
違法行為によって生み出された結果を承認してはいけない
国際秩序は、戦争を違法行為とみなす。だからこそ対抗措置である「自衛権」が正当化され、必要視される。
NATOは人類の歴史で稀に見る平和で安全な地域を作り出し、今なおそれを維持し続けている組織である
もともと憲法9条は自衛権を否定していないので、芦田修正はかんけいない
Posted by ブクログ
篠田先生の、憲法論を読んだことなければこれからでもいいかも。
主張自体はこれまでのまとめみたいかな、と思ったが、そもそも集団的自衛権という発想が、新興国アメリカのモンロー主義からであり、ヨーロッパにはなかったというのが驚きであった。
いわゆる孤立主義ではなく、旧世界の汚れたヨーロッパ主義でうちに絡んでくんなというのがモンロー主義。
ヨーロッパでは大国のバランスオブパワーがルールであり、小国の主権は尊重されず、つか、喧嘩して負けるならそれは自分を押し出す主権がないのだから国ではないという発想。
倉山先生の本ではウィルソン大統領は、稀代の悪魔ということになっているが、なるほど、こういう観点もあるのか、つか、こっちが一般なのか。
何より、日本の憲法学と憲法学者の異常がこれでもかと前面に押し出される。
これは、この通り。法学部で漫画を描いていた頃から、何言ってんだこいつらと思ってはいたから。
読みやすい。