大村友貴美のレビュー一覧
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ネタバレミステリやサスペンスはあんまり読まないけどこれは読み易かった。本格ミステリや謎解きを期待する人にはお勧めしないけど、エンターテイメント性は十分だし、二時間ドラマくらいに簡潔にまとまってる所にも好感が持てる。
確かに犯人予想は早い段階でついてしまうが、犯人の心情、動機、奈々に対する気持ちが後々語られていくのが興味深い。
それに津嶋が働きざかりに母と祖母の介護をしなければならなくなり、身体的にも精神的にも金銭的にもすり減る気持ちはとてもよく分かる。同情もしてしまう。
泣きそうになったのは母が脳梗塞の後遺症で若年認知症を患い、通帳がなくなったと身内の津嶋を疑う場面。
津嶋が母親を殺す一歩手前までいっ -
Posted by ブクログ
面白い。
酷評される要素が多いことも分かっているが、敢えて言う、面白い。
冬の東北を舞台に、人々の暮らし、因習、社会問題、想い、
そういったものをないまぜにしながら物語は進む。
その、いわゆる「地方」の生活のいい意味での泥臭さのようなものが、
多少誇張を含んだ形ではあるにせよ、良く描けていたと思う。
熊が出てくるくだりも、個人的にはすごく好きだ。
ミステリなのに、全然別の角度からドキドキさせられる。
迫力もあるし、事件とからむのかからまないのかすら分からなくてページを繰る手が早くなる。
「え?熊なの?人なの?人為なの?自然なの?」と戸惑わされる感じ、悪くない。
というか、熊の場面でのドキド -
Posted by ブクログ
明治後期の鉱山集落に派遣された若い医師、衛藤真道。
鉄を含む地質のせいで赤く見える川に流された獣や囚人の死体。
腕はいいが真道に対してはそっけない先輩医師の殿村は何かを隠している。
集落付近の監獄に収監されている思想犯をめぐるきな臭い動き。
劣悪な環境下で働き、貧困が故に医療を受けられない労働者たち。
ミステリが軸ではあるけど、この時代における医療の限界に悩む真道の心情の描写が多い。産業の発展が著しかった時代であり、日清戦争もあったことから、怪我の治療をしても以前と同じように動けなくなってはその後の生活に困り生きていけなくなる患者がいる。医師としてただ治療だけすればいいのか、患者の思いを優 -
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明治33年、宮城県の山間集落を流れる猩紅川に双頭の犬、猫足の猿という異形な動物の死体が流れてきた。その数か月後にはバラバラにされた人の遺体も流れ着き、山で四つ目の動物や火の玉を見た者がいるという噂も相まって村に不穏な空気が流れ始める。
同じころ、東京で新人外科医として働く衛藤真道は、医大時代の恩師の勧めでこの村の鉱山病院へと赴任することになる。そこにいたのは優秀だが一癖ある医師・殿村。その殿村にも、墓場から遺体を掘り出して切り刻んでいるという怪しい噂があった・・・
鉱山の村を流れる緋い川、貧困に喘ぐ鉱山労働者、囚人たちの不穏な動き、怪しい行動をとる外科医・・・横溝正史ミステリ大賞を受賞した作 -
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世界は自分を中心に回っていると勘違いしている人がいる。
周囲の迷惑や困惑はまったく気にとめず、何かをしてもらうことだけを待っている。
あたり前のように自分の思うがままに振る舞う女性。
幸せとは何だろう。
どんな境遇であったとしても、そこに幸せを見つけられる人もいる。
どんなに恵まれた環境にあっても、いつまで経っても満足できない人もいる。
言葉にするのは難しいけれど、口にしなければ伝わらないこともある。
悲しいけれど、黙っていても伝わるものがあるなんて幻想なのかもしれない。
死墓島は思慕島・・・何となく物悲しい。
閉鎖的な島、意味ありげな子守唄、そして対立する旧家。
横溝さん的な雰囲気もあって、