大村友貴美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレミステリやサスペンスはあんまり読まないけどこれは読み易かった。本格ミステリや謎解きを期待する人にはお勧めしないけど、エンターテイメント性は十分だし、二時間ドラマくらいに簡潔にまとまってる所にも好感が持てる。
確かに犯人予想は早い段階でついてしまうが、犯人の心情、動機、奈々に対する気持ちが後々語られていくのが興味深い。
それに津嶋が働きざかりに母と祖母の介護をしなければならなくなり、身体的にも精神的にも金銭的にもすり減る気持ちはとてもよく分かる。同情もしてしまう。
泣きそうになったのは母が脳梗塞の後遺症で若年認知症を患い、通帳がなくなったと身内の津嶋を疑う場面。
津嶋が母親を殺す一歩手前までいった時、母が本来の母につと戻って、「いつでもいいよ(自分を殺すのは)」と、すまないと、方言で話すのだ。
サスペンス以上の人間ドラマを見た気がして双方が苦しんでいるんだと思った。
ただ、殺害動機が弱い気はする。いくらお金に困窮しようとも、介護疲れを経験しようとも日野原の侮辱や態度で殺害計画を綿密に準備するまで憎むだろうか?反対にカッとなって殺してしまった、ならあり得るかもしれないが。
とりあえず奈々が前を向いて進めるようになるといいと思う。
田楽とのロマンスも期待しなかった訳ではないが、奈々は当分、恋愛しそうにないようだ。残念。 -
Posted by ブクログ
面白い。
酷評される要素が多いことも分かっているが、敢えて言う、面白い。
冬の東北を舞台に、人々の暮らし、因習、社会問題、想い、
そういったものをないまぜにしながら物語は進む。
その、いわゆる「地方」の生活のいい意味での泥臭さのようなものが、
多少誇張を含んだ形ではあるにせよ、良く描けていたと思う。
熊が出てくるくだりも、個人的にはすごく好きだ。
ミステリなのに、全然別の角度からドキドキさせられる。
迫力もあるし、事件とからむのかからまないのかすら分からなくてページを繰る手が早くなる。
「え?熊なの?人なの?人為なの?自然なの?」と戸惑わされる感じ、悪くない。
というか、熊の場面でのドキドキ胸が高鳴る恐怖感が、
そのまま物語全体の雰囲気づくりに一役買っている。
マタギの老人の「熊は一度人を喰ったら餌としか思わなくなる」
という言葉も心にズン、と響いて、
その思苦しい感じが殺人が続く村内の怯えと重なってより一層黒い不安を掻き立てる。
ただ、やっぱり「もったいない!」と思えるフシが多いのは事実で、
とても興味をそそる伏線をいっぱい張り巡らすことができているのだから、
もっともっと存分にその持ち駒を活かせたらいいのに、とも思う。
私個人としては、この本に限って言えば、
最近めっぽう多い理論武装を重ねて綺麗すぎるほどシャープに
物語が片付いてしまうミステリと比べて、
妙に宙ぶらりんだったり、想像の余地を含ませて終わる部分があるのは、
むしろ現実に近い感じがして新鮮な風を感じ、
「そうか、まぁ、こういうのもアリかな」と思えた。
(※別にこの作品内容や登場人物に強いリアリティがあるというわけではない。
そうではなくて、実際の現場って何もかもがそんなにピシッと
片付くわけではないだろうし、
理詰めじゃ説明できないモヤモヤしたものもあるだろうし、
そういう、完全にカタがつくわけではない部分がある、という意味での「現実」ね)
横溝正史大賞を受賞してしまったせいで、
あちこちから「横溝作品とは比べものにならない」という批判を浴びせられたようだけど、
そもそも横溝と彼女の作品の共通項は物語の禍々しさや推理の面白さにあるのではなくて、
その土地や生活に根付いた、
人間と土地、人間と時代とが絡みついて起こるドラマ性にあるのではないだろうか。
そういう意味では、横溝作品と彼女の作品とは良く似ている。
物語自体は、特異な専門用語や小難しい抽象論などを振りかざすことなく、
現場を足で調査する捜査員のように順を追って泥臭く進むので、
変なアタマを使うこともないため脳も気持ちも疲れず、
夜更けになるまで時計すら見ることなく夢中になって読んでしまった。
この後の作品が非常に楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
明治後期の鉱山集落に派遣された若い医師、衛藤真道。
鉄を含む地質のせいで赤く見える川に流された獣や囚人の死体。
腕はいいが真道に対してはそっけない先輩医師の殿村は何かを隠している。
集落付近の監獄に収監されている思想犯をめぐるきな臭い動き。
劣悪な環境下で働き、貧困が故に医療を受けられない労働者たち。
ミステリが軸ではあるけど、この時代における医療の限界に悩む真道の心情の描写が多い。産業の発展が著しかった時代であり、日清戦争もあったことから、怪我の治療をしても以前と同じように動けなくなってはその後の生活に困り生きていけなくなる患者がいる。医師としてただ治療だけすればいいのか、患者の思いを優先すべきか、新しい医療に挑戦すべきか… -
Posted by ブクログ
明治33年、宮城県の山間集落を流れる猩紅川に双頭の犬、猫足の猿という異形な動物の死体が流れてきた。その数か月後にはバラバラにされた人の遺体も流れ着き、山で四つ目の動物や火の玉を見た者がいるという噂も相まって村に不穏な空気が流れ始める。
同じころ、東京で新人外科医として働く衛藤真道は、医大時代の恩師の勧めでこの村の鉱山病院へと赴任することになる。そこにいたのは優秀だが一癖ある医師・殿村。その殿村にも、墓場から遺体を掘り出して切り刻んでいるという怪しい噂があった・・・
鉱山の村を流れる緋い川、貧困に喘ぐ鉱山労働者、囚人たちの不穏な動き、怪しい行動をとる外科医・・・横溝正史ミステリ大賞を受賞した作者が描く物語は、赤みがかった表紙のレトロな感じも相まって、オドロオドロしい要素は十分。
期待感に膨らみながら読み進めるも、一向に進まない話は中だるみの様相。主人公の真道も今一つ魅力に欠けるし、事件の真相も想定の範囲。
輸血も移植も行われていない時代、奇天烈な方法でそれらに果敢に挑もうとした医師と、手の施しようのない患者に医師はどう向き合うべきか?生きるとは?幸せとは?と悩む若き医師の葛藤が並行して描かれ、そこに一定の答えを見出していく過程はそこそこ爽やかで、ミステリとしてではなく懐古的人間ドラマとしてはよかったかな。 -
Posted by ブクログ
世界は自分を中心に回っていると勘違いしている人がいる。
周囲の迷惑や困惑はまったく気にとめず、何かをしてもらうことだけを待っている。
あたり前のように自分の思うがままに振る舞う女性。
幸せとは何だろう。
どんな境遇であったとしても、そこに幸せを見つけられる人もいる。
どんなに恵まれた環境にあっても、いつまで経っても満足できない人もいる。
言葉にするのは難しいけれど、口にしなければ伝わらないこともある。
悲しいけれど、黙っていても伝わるものがあるなんて幻想なのかもしれない。
死墓島は思慕島・・・何となく物悲しい。
閉鎖的な島、意味ありげな子守唄、そして対立する旧家。
横溝さん的な雰囲気もあって、しかも読みやすい物語だった。