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Posted by ブクログ
面白い。
酷評される要素が多いことも分かっているが、敢えて言う、面白い。
冬の東北を舞台に、人々の暮らし、因習、社会問題、想い、
そういったものをないまぜにしながら物語は進む。
その、いわゆる「地方」の生活のいい意味での泥臭さのようなものが、
多少誇張を含んだ形ではあるにせよ、良く描けていたと思う。
熊が出てくるくだりも、個人的にはすごく好きだ。
ミステリなのに、全然別の角度からドキドキさせられる。
迫力もあるし、事件とからむのかからまないのかすら分からなくてページを繰る手が早くなる。
「え?熊なの?人なの?人為なの?自然なの?」と戸惑わされる感じ、悪くない。
というか、熊の場面でのドキドキ胸が高鳴る恐怖感が、
そのまま物語全体の雰囲気づくりに一役買っている。
マタギの老人の「熊は一度人を喰ったら餌としか思わなくなる」
という言葉も心にズン、と響いて、
その思苦しい感じが殺人が続く村内の怯えと重なってより一層黒い不安を掻き立てる。
ただ、やっぱり「もったいない!」と思えるフシが多いのは事実で、
とても興味をそそる伏線をいっぱい張り巡らすことができているのだから、
もっともっと存分にその持ち駒を活かせたらいいのに、とも思う。
私個人としては、この本に限って言えば、
最近めっぽう多い理論武装を重ねて綺麗すぎるほどシャープに
物語が片付いてしまうミステリと比べて、
妙に宙ぶらりんだったり、想像の余地を含ませて終わる部分があるのは、
むしろ現実に近い感じがして新鮮な風を感じ、
「そうか、まぁ、こういうのもアリかな」と思えた。
(※別にこの作品内容や登場人物に強いリアリティがあるというわけではない。
そうではなくて、実際の現場って何もかもがそんなにピシッと
片付くわけではないだろうし、
理詰めじゃ説明できないモヤモヤしたものもあるだろうし、
そういう、完全にカタがつくわけではない部分がある、という意味での「現実」ね)
横溝正史大賞を受賞してしまったせいで、
あちこちから「横溝作品とは比べものにならない」という批判を浴びせられたようだけど、
そもそも横溝と彼女の作品の共通項は物語の禍々しさや推理の面白さにあるのではなくて、
その土地や生活に根付いた、
人間と土地、人間と時代とが絡みついて起こるドラマ性にあるのではないだろうか。
そういう意味では、横溝作品と彼女の作品とは良く似ている。
物語自体は、特異な専門用語や小難しい抽象論などを振りかざすことなく、
現場を足で調査する捜査員のように順を追って泥臭く進むので、
変なアタマを使うこともないため脳も気持ちも疲れず、
夜更けになるまで時計すら見ることなく夢中になって読んでしまった。
この後の作品が非常に楽しみだ。
Posted by ブクログ
高校生の頃、映画化をきっかけとした第一次横溝正史リバイバルがあった。猟奇的な表紙絵付きの黒本が田舎書店の棚を席巻する姿は壮観であり異様でもあった。級友には全作読み切った猛者も居た。21世紀の横溝正史と呼ばれる著者。状況設定は確かに似ているし、東京者の若い医者が異界とも言える岩手の山間僻村に感じる得体の知れない違和感がよく表現されている。硝子窓を通して覗き見る様な不安定な距離感。書評では厳しい評価も見られるが、一種の様式美、書割の前で演じられる舞台劇と看做せば楽しめる。ところで赤熊は何の為に出て来たのやら。
『なにかが斜面から飛び出ている。雪の中から生えている。足だ。人の足が二本、雪の中から突き出ていた。』さすが横溝正史ミステリ大賞受賞作。お約束のパフォーマンスか?^^; 2012年09月09日
タイトルといい、”21世紀の横溝正史”という謳い文句といい、非常に陳腐で、あまり期待できそうにもないが、熊クマ繋がりで読んでみる。 2012年08月09日
Posted by ブクログ
惜しい!惜しいよこれ。
面白くなる要素いっぱいあるのにもったいない。
というわけで、どの辺が惜しいと感じたのか挙げてみます。
解説でも書かれているけど、人物描写が弱いので感情移入しづらい。特に女性キャラ。最終的には が探偵役になるわけだが、それまでの印象が薄いので、えっ、あんたが謎解いちゃうの?って感じになる。
そして謎解きのプロセスがほとんど無いままいきなり犯人と対決。さっそうとトリックを暴いてくれるけど、展開の早さについていけない。
そして赤熊の出現。リアリティのある描写で引き込まれる内容。これだけで本1冊書けるんじゃないのっていうくらいのクオリティなのに、本筋の事件とはほとんど絡まずいつのまにやら終息。もったいなさすぎるでしょ。
大村友貴美ははじめて読んだけど、他の作品も読んでみたいと思える内容ではあった。シリーズ物で続きがあるということなので、他の作品に期待。
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