吉川幸次郎のレビュー一覧
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於菟が現在の研究を行う上で最も参考になった三冊の本の一つです。
内容(「BOOK」データベースより)
言語は、事実のコミュニケーションのための媒体であるばかりではない。言語自体がまた人間的事実であり、そこに集約されている著者の態度が精密に読み込まれてはじめて、読むことは十全な読書となる。論語・史記から契沖、宣長、徂徠にいたるまで、漢籍や和書を縦横にし、著者の内部に生起し蓄積する感情・思考・論理を通して内的事実に降り立つ実践を展開する。事実に触発される意識をたどり、読書論を超えて学問論にいたる。著者の悠然たる文学的逍遙につき随って、その思考の筋道をつぶさに経験する一巻。
著者略歴 (「BO -
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伊藤仁斎、荻生徂徠、本居宣長に重点を置いて、古典研究について解説しています。
伊藤仁斎、荻生徂徠については、論語などの解説書で見かけるものの、朱子学と比べれば傍流の学派だろうと思っていました。
とはいえ生前から有名な学者なので、何がそんなに人を惹きつけるのか不思議でしたが、本書はそれを大づかみにさせてくれます。
「全体を全体として説いたものは、むしろ糟粕」(204頁)とする彼らの立場からすれば、大づかみになどせず、論語を精読しろと言われそうですが。
宣長について、中国文学研究者の著者が取り上げたのは意外。
国学者本居宣長は漢学に結びつかないイメージがありますが、言われてみれば古事記は基本は -
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岩波新書 新唐詩選
前篇 吉川幸次郎 は 杜甫 解説がわかりやすい。後篇 三好達治 は 詩のチョイスがいい。表現は異なるが、両者とも詩の中の景色や自然から 人間の情感を取り出している。
吉川氏は 詩人別の特性を強調し、三好氏は 詩の読み方を強調している
吉川氏の杜甫と李白の詩の取り出し方の違いは面白かった
*杜甫の詩は 自然と人間を比較し、自然の完全な秩序や調和から人間の不完全や有限性(老い)の悲観性を憂い
*李白の詩は 人生を大きな夢に例え、自然と一体となって 秩序を保ちながら生きる楽観的な人間像を捉えている
李白の荘子的な詩情は印象に残る
*今日は風日好ろしきも、明日は恐らく如かざ -
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最近は白川静や、それを踏まえた酒見賢一の『陋巷に在り』を読んでいるせいで、この本に随分なつかしい感じを覚えた。
孔子が下級士族の子であるとか、孔子の思想の中心は人間の肯定、楽観があるとかいった理解が示されている。
ああ、白川静体験の前は、たしかにそんな孔子像を持っていたような。
そして知らず知らず持っていたその孔子像は、きっと吉川さんなど、この世代の学者の流れなのかなあ、とも思った。
ただ、この本を読んで、ちょっとびっくりしたのは、吉川さんはむしろ『論語』を敬遠してきたとのこと。
この本の最中に学生運動のピークがあったというが、学生運動の嵐の中で、孔子の知恵を再発見して行ったという点に驚いた -
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[ 内容 ]
中国の詩は、世界の詩のなかでも最も美しいものの一つである。
とりわけ唐代は、李白や杜甫をはじめとして、多くのすぐれた詩人が輩出した時代であった。
中国の詩に親しもうとする若い世代のために、中国文学者と詩人の二人の著者が協力して、主要な唐詩の読解とその味わい方を懇切に説いた唐詩の世界への案内。
[ 目次 ]
前篇(杜甫 十五首;李白 二十九首;王維 十二首;孟浩然 一首;常建 二首;王昌齢 一首;崔国輔 二首)
後篇
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆ -
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この本は後篇を読んでから前篇を読んだ方が理解が進む。
唐詩をしっかり理解して読みたいと思い、前に何冊か買って読んだ。小川環樹の『唐詩概説』(岩波文庫)は基礎知識をつけて変遷を追いかける意味ではまあよかったが、詩歌の魅力に迫ることはなく、また同じ人の『李白』(岩波新書)はただただ眠かった。前野直彬の『唐詩選』(岩波文庫)は上巻だけ読んだが、苦痛でしかなかった。どれを読んでも詩歌の面白さが伝わらず、文法解説書にしか思えない。
三度目の正直を期待して本著を購入したが、吉川幸次郎の担当した前篇(本篇)全部削って三好達治に紙幅を譲りたいくらい、三好達治の「オマケ」が素晴らしい。詩歌の楽しみ方や、目を -
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古代中国史における黄金時代を築いた漢の武帝の評伝です。
皇帝となったあと、祖母である竇太后の意に背いて儒教思想への傾倒を示したことや、衛青と霍去病を抜擢して匈奴征討を進めたこと、公孫弘や帳湯など内政を担当した臣下の業績などを解説しています。また、張騫を西域に派遣し、遠くローマ帝国にまで知見をひろげたことが、中国の皇帝である武帝の心にどのような波紋を投げかけたのかといったことについても、著者の見かたが示されており、興味深く読みました。
著者は、「武帝をとりまく時代全体が、活気にみちあふれた健康な時代であった」と指摘しつつ、それが現実のものとなったのは「武帝のあくまでも積極的な性格のせい」であ -
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・孔子が生きた地獄
筆者は『春秋左氏伝』を参照し、孔子の生きた周王朝末期の惨憺たる様相を描写する。中央の権力は衰え、諸侯は骨肉の権力闘争を繰り広げていた。殺戮と陰謀が渦巻き、血で血を洗うような環境であった。筆者は「それは人間の悪意を誇示する文献のように見える〈p.145〉」とまで形容する。しかし孔子はそのような時代背景の中で理想主義とも言える『論語』を残した。このことが孔子の強靭さを一層物語るのである。
本書の魅力として、充実した時代背景の記述が挙げられる。この点で、入門書としての役割を十分に果たしていると言えるだろう。
・仁とは愛である
地獄のような環境でも理想を説き続けた孔子の原動 -
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漢文の授業不要論がかまびすしい今日この頃であるが、本書を読むと、中国の古典、特に儒学が本当に重みを持っていた時代があったことを、改めて感じた。
古学の徂徠、国学の宣長は今でも相当に名が知られていると思われるが、著者は伊藤仁斎を高く評価する。理を重視したドグマ的な朱子学の解釈を批判し、孔孟の原文に即した実証主義的な解釈、自然な人間性を尊重する基本的姿勢など、その学問の特色を分かりやすく解き明かしてくれる。
仁斎、その息子東涯の著作を、とても読みたくなった。
ちょうど、著者の『論語』が角川ソフィア文庫から再刊されていて読み始めたところであった。中国の論語註解に加え、仁斎、徂徠の注を参照 -
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ネタバレ[ 内容 ]
武帝の時代は中国史上最も輝かしい時代として伝えられている。
武帝が十六歳の若さで帝位についた西紀前一四一年には、漢国は隆盛を誇り、国力は上昇の一途にあった。
独裁君主として権力を握った武帝の闊達で積極的な性格を生きいきと描きながら、政治的文化的に偉大な足跡を中国各所に残した時代の空気を興味あふれる筆致で描く。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書 -
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著者である吉川幸次郎さんのお名前を知ったのは初めてです。本書は、吉川氏が1966年にNHKラジオで1ヶ月にわたって「論語」について語られた中身を書き起こし、そのまままとめたものです。ですので当然文体も口語体です。この段階ですでに読みやすいことは確かなのですが、それ以上にこの本を読みやすくしているのは吉川氏の論語に対する姿勢にあるように思います。
言葉遣いが優しいことはもちろんですが、講師である吉川氏自身が論語で語られる孔子の言葉をあえて自分の視点だけで断定しようとしていないのです。学者ならば自分の解釈を述べるべきと思われる方もいるかもしれませんが、孔子にまつわる研究は数多く、諸説数多ある中