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中国の詩は、世界の詩のなかでも最も美しいものの一つである。とりわけ唐代は、李白や杜甫をはじめとして、多くのすぐれた詩人が輩出した時代であった。中国の詩に親しもうとする若い世代のために、中国文学者と詩人の二人の著者が協力して、主要な唐詩の読解とその味わい方を懇切に説いた唐詩の世界への案内。
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Posted by ブクログ
45年以上前に購入して読んだ。漢詩の知識が無く教科書を補填する意味で読んだ。解説がわかりやすかった。
岩波新書 新唐詩選 前篇 吉川幸次郎 は 杜甫 解説がわかりやすい。後篇 三好達治 は 詩のチョイスがいい。表現は異なるが、両者とも詩の中の景色や自然から 人間の情感を取り出している。 吉川氏は 詩人別の特性を強調し、三好氏は 詩の読み方を強調している 吉川氏の杜甫と李白の詩の取り出し方の違い...続きを読むは面白かった *杜甫の詩は 自然と人間を比較し、自然の完全な秩序や調和から人間の不完全や有限性(老い)の悲観性を憂い *李白の詩は 人生を大きな夢に例え、自然と一体となって 秩序を保ちながら生きる楽観的な人間像を捉えている 李白の荘子的な詩情は印象に残る *今日は風日好ろしきも、明日は恐らく如かざらん〜春風は人に笑う *世に処るは大きな夢のごとし(人生は大きな夢である) *頭を挙げて山月を望み、頭をたれて故郷を思う 三好氏は漢詩を読むことを歴史を読むことと同じに捉えている〜なるほどと思う 〈絶句ニ首〉 江は碧(みどり)にして 鳥は いよいよ白く *江=揚子江→揚子江のみどりの水面の上を飛ぶ白い鳥 *白=旅人の悲しみ 山は青くして 花は燃えんと欲す 今の春も看のあたりに又過ぐ 何の日か是れ帰る年ぞ *燃えんと欲す=自然のエネルギー *今の春も看のあたりに又過ぐ=今年の春も今までと同じように通り過ぎていく→万物はみな推移する感覚 *何の日か是れ帰る年ぞ=失った官吏の職を得るために長安に帰れるだろうか〜おのれの命は旅人として推移しているが 吉川幸次郎 杜甫解説 〈春の望(なが)め〉 国破れて山河在り 城は春にして草木深し *国家の機構が解体してボロボロになった状態→敗戦を意味しない *城郭に囲まれた町に今年も春が来た〜人間は秩序を失っても自然は秩序を失わない 烽火(ほうか)は三月に連なり 家書は万金に抵る *三月=最も美しい月だが、安禄山の乱による狼煙の火はやまない *家族はどうしているだろうか〜家書(家からの消息の知らせ)が得られたら万金に相当する 〈江亭〉 腹をたいらにすれば江亭の暖かに 長く吟じて野を望むる時 *江亭に大の字に寝そべりながら詩を口ずさむ幸福な時間 水は流れて心競わず 雲は在りて意はともにのどかなり *悠々たる春の流れのように、わが命を安らかに、時間の流れに託す *自然と同じ秩序にいる 〈高きに登りて〉 風は急に天は高くして〜不尽の長江はコンコンとして来たる *風は 激しく山から見る天空は 高い *長江は大きくうごめきつつ流れている 万里に秋を悲しんで常に客となり 百年の多病に独り台に登る *郷国を去ること万里、おのれはいつまでも客(たびびと)である *人生百年の半ばを過ぎたのに、わが身には多病と孤独しかない
[ 内容 ] 中国の詩は、世界の詩のなかでも最も美しいものの一つである。 とりわけ唐代は、李白や杜甫をはじめとして、多くのすぐれた詩人が輩出した時代であった。 中国の詩に親しもうとする若い世代のために、中国文学者と詩人の二人の著者が協力して、主要な唐詩の読解とその味わい方を懇切に説いた唐詩の世界への...続きを読む案内。 [ 目次 ] 前篇(杜甫 十五首;李白 二十九首;王維 十二首;孟浩然 一首;常建 二首;王昌齢 一首;崔国輔 二首) 後篇 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
2人の名ソムリエによる漢詩のガイドブック。 風景描写が主で、かつ端的に纏まった詩の数々について、このように膨らませて味わえば良いのかという点で、目から鱗が落ちたようです。 また、「長樂少年行」は吉川・三好共に載せている詩ですが、2人の解釈が異なる所も、2人のアプローチの違いを表しているようで良かっ...続きを読むたです。 しかし、自力でこの解説のレベルまで補えるか?と思うと自信はありません。 とは言え、厳選された詩はどれも味わい深かったので、細かい事はおいておいて、また読み返したいです。
これは高2から高3にかけてカバンに入れてよく読んでいた記憶有り。ごく短い間ではあったが、王維、白楽天、杜甫などを身近に感じていた頃があったのは確か。仕事に一段落つけたら旅の途上で携行してみたい一書。
実は古文漢文の教師になろうと思っていたほどの漢文好き。あの漢字のなかから広がる世界って素晴らしいと思う。詩っていいわ。
初版1952年。2023年100刷。新書ですが古典ですね。 前編吉川氏部分は選抜した漢詩の解釈・解説。漢文鑑賞本によくあるパターン。但し紙幅が限られるので駆け足感が半端ない。 後編三好氏部分は、漢詩の味わい方。詩興を説く。詩の選択と感想が独自でおもしろい。 漢詩の入門書らしいが内容は深く、ちゃんと理...続きを読む解するにはそれなりの鑑賞眼が要りそうだ。 漢詩の入門書としてはお薦めしない。
この本は後篇を読んでから前篇を読んだ方が理解が進む。 唐詩をしっかり理解して読みたいと思い、前に何冊か買って読んだ。小川環樹の『唐詩概説』(岩波文庫)は基礎知識をつけて変遷を追いかける意味ではまあよかったが、詩歌の魅力に迫ることはなく、また同じ人の『李白』(岩波新書)はただただ眠かった。前野直彬の...続きを読む『唐詩選』(岩波文庫)は上巻だけ読んだが、苦痛でしかなかった。どれを読んでも詩歌の面白さが伝わらず、文法解説書にしか思えない。 三度目の正直を期待して本著を購入したが、吉川幸次郎の担当した前篇(本篇)全部削って三好達治に紙幅を譲りたいくらい、三好達治の「オマケ」が素晴らしい。詩歌の楽しみ方や、目を向けるべきところ、中国詩の特徴など、詩歌に疎い人にとって非常に為になる話ばかり。吉川の文章はどちらかというと論語でも読まされているような感じで、訳文も、ゆうたら悪いが、センスがない。いづれにしてもあの文章を通じて詩歌に魅力を見出すことはできなかった。 前篇は書題どおり『"新しい"唐詩選』で、吉川幸次郎の(多分)独断と偏見で選ばれた唐詩が解説とともに紹介されている。ただし紙幅の関係で扱う範囲は盛唐から晩唐で、つまりどう考えたってはじめから杜甫と李白しか紹介する気がない。実際、吉川担当の前半だけで李白の詩が60頁。前半全164頁の中の60頁なので、三分の一強。本家唐詩選も李白の詩が可也の数収録されているらしいので、この割合についてとやかく言うつもりはなかったが、王昌齢の紹介で「ただこの詩人については、吉川の前著……に、相当詳しい記載があるので、ここには……一首のみをあげる」という乱暴ぶりに驚いた。自著の宣伝か。 --- p.128 「杜甫が人間の心情の美しさを歌う詩人であり、李白が人間の行為の美しさを歌う詩人であるとすれば、王維は主として自然の美しさを歌う詩人である。中国における自然詩……は……自然を詠ぜんとして自然を詠じたのではない。……自然の美しさを人間の道理の源泉、典型としてあがめつつ詠ずる……傾向にある。……王維の自然詩は、他への関心をたって、純粋に自然の美を探究する。」 p.140 獨坐幽篁裏,彈琴復長嘯。 深林人不知,明月來相照。 (独り幽篁の裏に坐して、弾琴復た長嘯。 深林人知らず、明月来たりて相に照らす) 鳥の声や風の音、葉や枝の触れ合うささめきを聴くのではなく、琴や唄いという人工音で悦に入っている時点で自然美といえるのか甚だ疑問。自然と人間の間で生きているといった方が当たっているのでは。
高校の漢文の授業でこの本を読まされて以来の愛読書。今でもたまに引っ張り出して読みたくなる。唐詩のリズム感と生き生きとした描写は素晴らしい。一度中国人の友達に北京語で朗読してもらって、韻の美しさにびっくり。
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吉川幸次郎
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