木村紅美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレどんな感想を抱けばいいのか、悩む小説だった。
虐げられた女性のための家に住むリツとアイ、
キッチンカフェで出会った(程度の関係しかなかった)サキとヒロ。
2組の女性どうしの暮らしの中に、それぞれ現れた赤ちゃん。
アイが夜の公衆トイレで発見した赤ちゃんは、リツとアイ、家主である「先生」に囲まれて育っていく。
ヒロに助けを求めたサキが腕に抱いていたのは赤ちゃん…と同じくらいの大きさのバスタオルの包み…。
命を繋いだ男の赤ちゃんは「ユキ」と名づけられるが、男性を恐れるリツのもと、女の子の服を着せられて中性的に育てられる。
ある日その子は、住み慣れた家を逃げ出して保護される。
女たちは、拾って育て -
Posted by ブクログ
暴力から逃れてきた女たちを 匿かくま う山奥の家で暮らしていたら、なんの因果か"男の"赤ちゃんを拾ってしまう
もちろん出生児に割り振られる性別がその子の性別にそのまま当てはまるとは限らないわけだが、男に育てたくないためにステレオタイプな女の子像を赤ちゃんにインストールしようとする様子はなんだか悲しくて滑稽ですらあった
読み終わっても、登場人物たちがどうすればよかったのだろう、どうなるのが正解だったのだろうと考えてしまう
でもこのなんだかすっきりとしない心地は、いまはもはや小説ではないとなかなか味わえないかもしれない。社会情勢がそうさせるのかはわからないけれど、どんどん”わか -
Posted by ブクログ
雪の降る深夜、道の駅のトイレのおむつ交換台の上に「たすけて」というメモと共に置き去りにされていた赤ん坊。
このまま放っておいたら死んでしまう、と赤ん坊を保護した女は、男から逃れてきた女たちのための、女たちだけが住む、山の中の家に連れてきた。
雪の日に拾ったから「ユキ」ちなみに男の子である。
警察に連絡しなくてはいけなかったのに、「初動」を間違えたまま、どんどん歪んだ道へと進んでいく。
女たちは、人間の子どもを使って育成ゲームもどきのことをしている。
または、好きに個性を与えて作っていく、自身のアバター?
幼児期に同居の叔父から性的イタズラを受けたトラウマから、リツは54歳の今でも、男がぶら下 -
Posted by ブクログ
トイレに放置され助かった命と海の底に葬られた命。ふたりの棄て子の生と死は隔絶したふたつの事実ではあるのだけれど、ある地点に於いてはどちらも生の可能性、あるいは死の可能性を帯びていた訳で、その決定的な分岐のことを思うととてもやるせない気持ちになる。直接は描かれていないものも含めて、この小説の中には幾つもの間違いを引き寄せた正しさと、正しさを引き寄せた間違いがあるように感じる。エンタメ化が進んで分かり易く面白い純文学が書かれる流れの中にあって、そのように不明瞭な部分を不明瞭なまま大きな問いの影として読み手に提示する覚悟のようなものが、漠然とした言い方にはなるけれど、本作を“良い小説”たらしめている
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレ公務員の遊佐薫は、20年前に住んでいたアパートの大家さんが熱中症で孤独死したことを、出張先のホテルの朝刊で知る。
川島雪子(90)
眠るように死んで、まだきれいなままで下宿人に発見されたい、というのが彼女の夢だったが…
(たぶん、眠れる森の美女みたいな自分を妄想していたのだろう)
死後一週間は発見されなかったらしい。
下宿人ではなく、連絡がつかなくなったことを不審に思った親戚によって発見されたのだった。
薫は、自分がアパートを飛び出すきっかけになった、大家の過干渉に思いをはせる。
他人がプライベートに踏み込むことをどこまで許せるかによって、この本の感想…雪子さんや主人公の薫に対する印象も変わ