LGBTについては知っているが、LGBTQの"Q"については知らない人も多いのではないだろうか。
そんなQ…クエスチョニングで"キュー"トな男子中学生2人の、時に悩み時に楽しく過ごす、自分の「好き」の形を共につくっていく絆の物語。
かわいい表紙なので、中高生男子が手に取るには少し勇気がいる本かもしれ
...続きを読むないが、ぜひ男女クエスチョニング問わずティーンエイジャーに読んでほしい本。
ティーンズ向けとしてこの本を書いてくれたことに、嬉しさすら感じる。
表紙も裏表紙もとてもかわいい。
作中の描写から察するに、表紙の右側の子が主人公のナオで、左側の子がユエだろう。
学校トップの優等生・久瀬(ことユエ)が化粧をしてウィッグをつけて女性もののかわいらしい服装をして古着屋を見て回っているところを、主人公ナオは目撃してしまう。
うっかり屋さんなナオは、そんな久瀬の姿を見かけてしまったことをうっかり本人に明かしてしまう。
久瀬の変身がすごかった!と素直に褒めるナオに、久瀬は「じゃあ僕が変身するとこ、見てみる?」とナオに自分が化粧をしてウィッグをするところを見せる。
そうして仲良くなった2人は一緒に古着屋を巡ったりして、ナオはだんだん自分の抑えていた気持ちに気づく。
そうだ、僕はかわいいものが好きだったんだ。
物語は2人の友情、好きなものを好きだ!と思いながら満喫する幸せ、そして恋愛なのかなんなのか難しい感情、自身の性的指向への葛藤を咀嚼して悩みまくるエピソードが中心だが、彼らの周りの登場人物たちも全員重要だ。
孤立した状況で、好きなものを好きだと、勇気を出して一歩を踏み出すのは難しい。
周りの理解があって、仲間がいて、応援してくれる人がいて、初めて好きなものを本当に楽しむことができるのだ。
周りに理解者がいなければ、この結末はなかっただろう。
そのことも本書は教えてくれる。
ナオ自身の心理描写はもちろん、ナオから見た他の登場人物の仕草や言葉から分かる心理描写もとても巧みだ。
クエスチョニングゆえの2人の葛藤や、つらいことも描写されるが、ナオの友達や久瀬に片想いをしている後輩女子など、やさしい子が多く登場するので、つらい気持ちに傾きすぎず、安定して読める。
そして親しみやすい文体でテンポよく読める。
大人の描写はほとんどないが(ただ主人公2人の親は息子がかわいいものに関心があることを許容しない描写がある)、私はその方がティーンズ向け作品としていいと思う。
本作のようなお話に下手に大人が介入すると、物語としてバランスが崩れそうなので。
あと、同年代の子どもたち同士で考え合って、フォローし合って、お互い向き合う姿を見せるところが、本作のいいところだとも思っているので。
結末も、私は希望を感じた。
私自身アセクシャルだから、結末に関して、少し共感して読めたところがある。
私は今のところ恋人を作らないという意味では一生一人でいるつもりだが…恋人ではない生涯の友という意味でパートナーがいたら人生心強いよなぁと思う。
作中にもあるように「どっちでもいいじゃん」で私はいいと思っている。
性別や性的指向はグラデーションで、その時によって変化することもあるのだから。
この物語はフィクションだが、"Q"にあたる人々も様々で、それぞれどのように感じているのかよく調べて描かれている印象があり、物語を楽しみつつ、LGBTQについて考えることを促してくれる。
繰り返しになるが、ぜひたくさんの人に読んでほしい。