伊図透のレビュー一覧
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憎しみと、愛の深さが余りにも拮抗していたからかもしれないが、もしウルナが子を宿す女性と言う性別で無ければ、ウルナは生きる道を選んだだろうか。フェミニズムがヒステリックに叫ばれているが、互いが互いであり、性別を含めての個体であると言う認識が出来んもんか、人間は…と考えさせられる。1~2巻辺りを読んでいると、女性への搾取が描かれているし、女性性を自覚して利用する場面もがっつり描かれていて、嫌悪感を抱いたりもするのだが、主人公のウルナは一貫して、親無しの自分を育ててくれたトロップと言う土地に住む人への恩義だけを純粋に生き抜いた。一人の弱くて強い人の物語だ。
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人と接触すると、その人の心の中身、現在・過去・未来の全てを読み取ってしまう能力を持ったが故に、家庭が崩壊し、新興宗教に拾われ、その能力で教祖に祭り上げられ、そこから脱出した草野慧の物語。政府機関のエリート官僚でもある「完璧な書類」を作る駿河は、認知力の限界があってこそ、人間関係は育まれるのだと、誰でもない人物になり、下町の工場で働く慧を探り当て、監視しながら考えている。「戦後の無策をチャラにしたい連中の怠惰を背負ってマウンドに立たされる 孤高のエース」、駿河は慧に彼女を追っている政府の思惑を話す。
誰の心にもある「闇」を見てしまう、この先に待ち構える「闇」を見てしまう慧に、駿河は「孤独」の本質 -
Posted by ブクログ
人間の中には多分誰にも「強い」と「弱い」がある。「強い人間」と「弱い人間」があるのではなく、一個の人間の中にあるもので、それが他者からなんらかの干渉を受けた時に「強い人間」「弱い人間」に分類されるのかもしれない。
性搾取される女性性を、この作者はどう言う気持ちで描いているのだろうか、といつも思う。物語のある漫画としては非常に面白いのだが、どうしてもこの部分が引っ掛かってしまう。多分、現在社会に於いても、女性を性発散の物体くらいにしか考えない男はいっぱいいて、警鐘を鳴らしているのかもしれないが、どうしても後味が悪いと感じてしまう思いが拭えない。 -
Posted by ブクログ
ヅード族を殲滅しようとしたのは、その文化ゆえに受け入れ難かったからだろうか(禁忌とされる風習があった為)。トマホの夜に巣くう闇は、最期の一人になってしまった怒りと憎しみと絶望から生まれているのか、それともヅード族が持つ本質から来るものなのか。彼の怒りや憎しみは筆舌に尽くし難い。ウルナに対する復讐のやり方もこれ以上ないと言う程に残酷なものである。が、一兵士として赴任し、任務を果たしていただけのウルナが女性であったからこそ、こう言う復讐を考えられるわけで、憎しみを越えて二人が愛し合っているとしても、今は失きヅードの故郷の風景を記憶するたった二人の人間だったとしても、トマホの行為は女性性に向けられて