谷川徹三のレビュー一覧
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残酷な自然の中、こういうやつは嫌われる、みたいなものが描かれる短編が多い。
やはり銀河鉄道の夜に触れたい。余韻がすごい。カムパネルラとの関係性が微妙になる中、博士の思考実験という体の世界で、沈没船や蠍の火を通して、みなの幸せに自分の人生を捧げたい、本当の幸せとはなにかをジョバンニが考える。現実に戻ってからの畳み掛けがすごい、感情が追いつかない。カムパネルラが死んでしまうことから、銀河鉄道は親友の死を受け入れるための通過儀礼としてのジョバンニの精神世界という解釈が自然そう(銀河鉄道の最後にカムパネルラがいなくなることからも)
本当の幸せとはなにか?を考えさせられることが、すきとおったほんとうのたべものなのだろう。 -
Posted by ブクログ
心象のはひいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲(てんごく)模様
(正午の管楽よりもしげく
琥珀のかけらがそそぐとき)
宮沢賢治の小説は苦手だが、詩は好きだ。「雨ニモマケズ」や「永訣の朝」もいいが、「春と修羅」が一番好きだ。何を言っているのかはわからないのに、何が言いたいのかはなんとなくわかる、この不思議な言葉の連なりが好きだ。
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾(つばき)し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
『銀河鉄道の夜』から連想される、聖人君子みたいな賢治はここにはいない。ここにいるのは、潔癖さゆえのフラストレーションに悶える、ひとりの孤独な青年だ。遠くに聞こえる雷鳴のような、青白い炎のゆらめきのような、何かひとつでもバランスが崩れれば今にも荒れ狂いそうな、破滅的なエネルギーの予兆。
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(玉髄の雲がながれて
どこで啼くその春の鳥)
荒ぶる魂は、ときに文法や文脈をも破壊する。しかしその逸脱に、私はほとんど本能的な悦楽を覚える。形式上は破綻しているそれらの言葉は、交響曲のように重なりあい、響きあって、ひとつの世界を形成しているのだ。これが計算に基づくものなのか、感性によるものなのかは、私にはわからない。しかし賢治のように、既存の言葉を破壊してなお、言葉によって人に感銘を与える者がいるとすれば、それは「詩人」と呼ぶよりほかないではないか。
まばゆい気圏の海の底に
(悲しみは青々ふかく)
ZYPRESSEN しづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截(き)る
(まことのことばはここになく
修羅のなみだはつちにふる)
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Posted by ブクログ
宮沢賢治による寓話集。
表題作『銀河鉄道の夜』の他、『注文の多い料理店』『オッペルと象』『山猫とどんぐり』などが収録されています。
約5年ぶりの再読ですが、いろいろな発見がありました。今回は特に表題作の『銀河鉄道の夜』以外の作品を中心に収録された寓話を読みすすめると、宮沢賢治の作品に共通する世界観や頻繁に登場するテーマがすこしずつ見えてきました。
本書に収録された物語にはしばしば倫理的な主題が現れます。『オッペルと象』『ツェねずみ』など他者を欺供養な人物、性根が曲がったような生活を送っている人物に対して辛辣な結末が訪れる作品が多く見受けられます。随所に賢治らしい独特な言葉のリズムやみずみずしい風景描写は見られますが「幻想的な賢治童話」という認識からは大きく外れる作品群です。
このような作品から垣間見える宮沢賢治の理想的な生とは清く正しく黙々と生きるということなのだと思います。彼の倫理観が最も端的に現れている作品は本書収録外の『雨ニモマケズ』でしょう。そして賢治が読者たちを善導しようと記した作品がこれらの倫理的な寓話たちなのです。
そしてやはり賢治童話の魅力は多彩な情景描写でしょう。『銀河鉄道の夜』の幻想的な宇宙などの風景描写は当然ながら素晴らしいですが、私が感動したのは『からすの北斗七星』や『二十六夜』のは2作品です。この両作品に見られるような動物たちの感情をたっぷりはらんだ動きと夜の帳が下りた山々の風景の描写は私たちが知らない夜の静寂の世界で実際にこのような情景が繰り広げられているんじゃないかと想像されるほど、臨場感があふれています。宮沢賢治の描く動物たちの仕草はとても動物らしい一方でとても人間らしく、この筆致こそが独特の幻燈を生み出すのではないかなと思われてきます。その一方で2作品共に登場する動物たちには衝撃的な出来事が起きますが、その描かれ方はとても抑制的に感じます。この抑えられた文章によって私は過度に登場人物に感情移入せずに物語を読み進めることができ、実際の自然ドキュメンタリーを見ているようにこの物語世界と向きあう事ができまし事になりました。そしてこの寓話を一定の距離感を持って鑑賞することによって賢治の物語世界全体を楽しむことができたのではないかと思います。
もちろん上記に書きましたことは『銀河鉄道の夜』にも言えることではないかと思います。『銀河鉄道の夜』に見られる倫理的なメッセージや物語世界と近づきすぎずに全体的に提示してみせる筆致に注目て読んでみると、少し違った読み方ができて面白かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書はおそらく一番風の又三郎を推している。
だが、私はグスコーブドリ伝記が一番印象に残った。
父親母親妹ブドリの家族四人が、毎日森の中で幸せな日常を送っている場面から話は始まる。そして、気象師のブドリは自分を犠牲にすることで不作となったであろう未来を変えて農家を救い、話は終わる。話の始まりと終わりを取りあげることでわかるように、この作品はわらしべ長者のように刻一刻と状況が変化する。その変化は予測不能、けれども斬新で不快感を感じない。もはや清々しさを感じ、次の展開を早く知りたくなる。そして、ふと我に返って今に至るまでに過ぎた出来事を思い返すことで、普通では想像もできない道筋を辿ってきたことにはじめて気付く。それほどまでに自然な流れでブドリが成長していく様子を書き連ねている。このような寓話は他に類を見ない。宮沢賢治の想像力と文章力に改めて畏怖した。