小野寺健のレビュー一覧
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本書はカズオ イシグロのデビュー作で最近映画化もされ話題になった作品なので読んでみたいと思い手に取った。
他の方のレビューにある通り難解だった。
舞台は1980年代のイギリスで主人公悦子の元にある理由で娘のニキが帰省し、イギリス(現在)と戦後まもない長崎を回想しながら交互に物語は進んでいく。
読み進めていくと違和感と?が満載で読み終わったあとも霞が懸かってうっすらしか先が見えない感じ。
それもそのはず、具体的に語られていない部分があるので、解釈を読み手に委ねるタイプ。
なので池澤さんや三宅さんの解説、映画も解釈の一つで正解はないということ。
佐知子、万里子母娘の言動も謎や違和感ばかりで、 -
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先に映画を見たら、分からないことがいくつかあり、原作を読んでみた。疑問が解消されたわけではないが、それでいいのかも知れないと思えたし、読んでよかった。
なんだかすべてが霧の中に霞んでる感じ。なのに、強い印象を受ける場面がいくつかあった。
とくに、主人公と舅が戦争にまつわる思い出にふれながら、肝心のことはお互いに避けているような会話。
(ここは映画では、もっと具体的なことを話していた)
主人公と友人の佐知子が稲佐山でかわした会話も、かみ合っているのかいないのか。でも佐知子という鏡をとおして、主人公の気持ちがしだいに分かるように思えた。
映画を見て、分からないことに不満を覚えていたが、分から -
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著者のカズオ・イシグロさん、初読みです。長崎生まれでイギリス国籍の方です。ブッカー賞、ノーベル文学賞などを、受賞されています。この作品は初長編で、1982年に彼が英語で書いた小説を、小野寺健さんが翻訳された本です。
私は映画を先に観たので、登場人物は俳優の顔が浮かび、情景も映像が浮かびながらの読書でした。疑問に思っていたことを知りたくて、この本を読みました。訳者のあとがきと、作家の池澤夏樹さんと文芸評論家の三宅香帆さんの解説に助けられて、ようやく理解できました。(と思っていましたが、色々な解釈があることをあとで教わりました。)
小説は、悦子が長崎で過ごした過去と、イギリスで暮らす家に休暇で -
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カズオ・イシグロのデビュー作。
『蜜蜂と遠雷』『ある男』『Arc』など着実にキャリアを上げている石川慶監督による映画化のこのタイミングで手に取った。
1970年代のイギリスの田舎町、一人で暮らす悦子の元に娘のニキが訪ねてくる。ニキはライターで悦子の長崎時代、特に原爆が投下された以降どうやって暮らしてきたのかを文章にしようと考えている。
悦子からするとそれは家を出て自殺したニキの姉、景子のことを思い出すことでもある。
悦子は長崎での暮らしはどうだったのか、その生活を捨て何故ロンドンに来たのか、景子には何があったのかを語っていく。
その語られていく1950年代の物語では長崎で夫の二郎と暮らす -
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ネタバレ◼️ カズオ・イシグロ「遠い山なみの光」
映画を先に観て再読。広瀬すずが悦子にダブる。描かれない部分を想像する。
カズオ・イシグロの、日本を舞台にした初期作品はノーベル文学賞受賞の時に読んだ。次作の「浮世の画家」では戦争に協力した大家の画家が戦後、世間の価値観が変わり、画壇の関係者が離れていく様が中心になっている。
「遠い山なみの光」にも、戦前戦中は教壇に立ち戦後おそらくは教職追放となった老教師が、かつての教え子から教育雑誌で名指しの批判を受け、納得できずに談判に行く場面が盛り込まれている。これらの印象が強かったためか、もうひとつメインのストーリーは思い出せず、映画を観た時はこんなにミス -
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オーウェルといえば政治的な要素を含む小説やエッセイのイメージだったので、食事や家事、流行りの音楽、洋服などの日常生活に関するエッセイが入っていると聞いて気になり購入。当時のイギリスの生活に密接した内容なので興味深かった。
本来のオーウェルの人柄がより伝わってくるような気がしたしTHEステレオタイプ的なイギリス人ってかんじの皮肉も聞いていて文章としてとても面白かった。
代表作が重い内容であるからこそ本人の人柄や価値観を知ることによって、その作品で何を伝えたいのかということがより分かりやすくなるような気がするのでこういうエッセイは好きです。 -
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ネタバレ読書期間 2025/2/5〜2025/2/7
面白かった!英文学の名作と言われるのがよくわかった
エドガーかヒースクリフかと言われたら私はヒースクリフ派だな。新しい世界を見せてくれそうだし、何しろ世界を敵に回しても愛してくれそうだし
主人公のロックウッド、勝手に押しかけたのに送って貰えずにキレるの図々しくて面白い。同級生が卒論で「ロックウッドは人付き合い嫌いと言いながら、ヒースクリフに興味津々で、人嫌いとは言えないのではないか」と言っていたのを思い出し、面白く読んでいた
正直登場人物はネリーとエドガー以外感情移入できる人はいなかったかなぁ。キャサリンはわがままで自分勝手だし、アーンショ -
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ネタバレタイトルだけは知っていた古典作品を読むシリーズ。身分の違いに引き裂かれた恋に対する復讐の裏で生き続ける純粋な愛の話。かもしれないし精神的に不安定な一族とそこに訪れる外部の人間との交わらない生の模様なのかもしれず、荒野に佇む幽霊の話なのかもしれない。多様な側面がある物語。
舞台となるヨークシャーの寒村にある嵐が丘、スラッシュクロス、アーンショウ家、リントン家と家の外からやってくるヒースクリフ、ネリーをはじめとした使用人達。そして訪問者のロックウッド。一人もまともな奴がいない。あえていうならネリーが常識人に近いと言えるか。そのネリーは単なる善良な平民ではなく、物語世界を解釈して語る物語の進行者で -
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J.オーウェルというと1984年と動物農場のイメージしかなく、生活のために書評や短文エッセイを書いていたとは知らなかった。
文化や自然に関してあくまで保守的な態度である点、産業主義的な娯楽や全体主義に関しては批判的である点、洞察力に優れている点はイメージ通りだが、あの理知的な文章で食器洗いに毒付いているのには笑った。先進的技術憎しではなく、あくまでそれによって社会に齎される負の影響に懸念を抱いていたのだということがよく分かる。
また、オーウェルの書物・文章への美学と拘りを知ることができた。
彼が風刺した未来の只中であっても、「一杯のおいしい紅茶」を楽しむ心の余裕は持ちたいものだと思う。 -
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ヒースクリフの復讐は次の世代をも巻き込んでいく。ネリーの語る回想は、冒頭で青年が見た光景まで進むが……。
恋愛を扱っているのに恋愛小説っぽくなく、むしろ不気味なサスペンスを感じる下巻。しかしヒースクリフとキャサリンの愛にはすさまじいものがあり、そこだけは素直に感動した。キャサリンの方は上巻で本音を語るシーンがあったのでわかるが、ヒースクリフを突き動かしているのは何だろう?単に愛情からくる復讐心、だけでは説明がつかない気がする。徐々に子どもたち3人の話に移っていくなか、彼の圧倒的な存在感はさらに増していく。そしてラストは……。
訳者の解説で補助が得られたものの、初見では深い理解には届かなかっ