小野寺健のレビュー一覧

  • 一杯のおいしい紅茶 ジョージ・オーウェルのエッセイ

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    ジョージ・オーウェルの随筆集。「Ⅰ食事・住まい・スポーツ・自然」完璧な紅茶の淹れ方についての議論はつきなさそう。ガラクタ屋の雰囲気やスクラップスクリーンに妙な魅力を感じる。「Ⅱジュラ島便り」この章は個人に宛てた書簡が中心なので、当時の生活風景や人となりが伝わってきて好き。「Ⅲユーモア・書物・書くこと」書物対タバコ……現代の貨幣価値で日本円に換算してみたい。自然や庶民への愛情を感じる一冊だった。

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    2021年09月20日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    『1984年』、『動物農場』と、政治思想を前面に押し出した作品を書いた著者が、どのような旅の記録をまとめるのかと身構えつつ読んでみたけれど、これは面白い……。
    いえ、面白いと言ってはいけないのかも。
    パリとロンドンでの浮浪者生活を描いたものなのだから。
    パリでは道端で人が死んでも驚かないほど無気力な窮乏生活を送り、皿洗いの仕事を得る。
    食堂の裏側のおぞましいほどに不潔で、ちょっとおかしな話を読み、外食はしたくないと思わせられた。
    英国では仕事が得られず各種の収容所を巡る。
    その実体験を通じて、浮浪者は特別な存在でないと論じる箇所は説得力があった。
    他のルポルタージュも読んでみたい。

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    2021年05月09日
  • 一杯のおいしい紅茶 ジョージ・オーウェルのエッセイ

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    オーウェルといえば1984や動物農場などの作品のイメージが強いけれど、このエッセイを読んで彼に対する印象が大きく変わった。特に1章の食事や日常生活に関する内容がとても面白い。電車の中で笑いをこらえてしまうようなところさえあった。筆者が言うには、おいしい紅茶を入れるには11点もの譲れない条件があるらしいし、理想のパブの条件をすべて満たすパブは実在しないらしい。

    私がこの本をこれだけ面白く読めたのは、日本語訳がまた実に良いものだったからというのもあると思う。たいていの翻訳ものは、読んでいて何を言っているかわからなかったり、ジョークが通じなくなっていたり、「本当に原文でこんなこと言ってるのか?」と

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    2021年05月03日
  • 嵐が丘(下)

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    愛か憎悪か。より深淵な感情が物語を衝き動かす。英国北部の広大な二大豪邸に道徳と教養を奪われた無法者が放たれる。禍いは明らかだ。自然美溢れる丘陵地帯を舞台に荒れ狂う魂が躍動する。獰猛な恋慕に終焉は無く、未だに奥底で燻り続けている。

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    2021年02月16日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    あまり期待せずに読み始めたら面白くて止まらなくなった。オーウェルの観察眼と表現力が光る。翻訳も素晴らしい。

    パリ編もロンドン編もおもしろいが、特筆すべきだと感じたのはP232〜234で、オーウェルが自ら経験した窮乏生活から学んだ「物乞いの社会的地位」について述べている部分が感慨深い。

    それに続く、ロンドンのスラングと罵詈雑言について、また「零落した人間」についてなど、終盤にさしかかったところからの記述が深い。

    そして、ここで出てくる『暇つぶしの才覚』という表現がタイムリーだった。この本を読んだのがちょうどコロナ騒ぎの真っ只中で、自粛生活がつらい、暇でしょうがない、などという世間の話題をよ

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    2022年03月16日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    この本を普段の生活では味わえない価値観というエンターテインメントとして捉えたくはないと思った。

    現在日本も人手不足だけど、法律や福祉を正せば輝ける人材もあるのではないかと思う。

    ホテルに対する記述が、私が思っていたけど言葉にできなかったもやもやを晴らしてくれた。
    「高級といわれているものの実質は、要するに従業員が余分に働き、客は余分な金を払うというだけのことなのである。」
    この文章が言いたかったことを表してくれた。
    こういった商売で経済が回っているのは事実だけど、本来必要な所に金が行き届いていない原因でもあるのではないか。

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    2020年03月20日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    社会にとって有益な仕事に妥当な賃金が払われず、なんでもない仕事が逆に法外に高い賃金を獲得するこの不平等はいつの世も同じだなと感じた。

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    2020年02月02日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    ジョージオーウェルと言えば動物農場...と思いきやこんなルポ的な旅日記のような、そんな本も書いていたんですね。
    しかも1933年と、かなり若い時の執筆です。

    パリとロンドンでの底辺暮らしの経験をみずみずしい感性で綴ったエネルギーを感じる一冊です。

    個人的には前半のパリの話の方が好きです。

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    2019年06月15日
  • オーウェル評論集

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    大好きな作家のひとり。数多くの体験記、書評、社会評論などのうちから、とりわけ時代批評に根差した主題が収載されている。

    自伝は、場面が鮮やかに迫ってくる。書評は、衒いがないのに新鮮。社会評論には、時代をこえた示唆がある。

    ここでこうして書いている自分の不誠実さが身にしみる。

    自分自身を見つめなおすこと、寛容であること、”真実”に向き合うこと。その難しさと大切さを教えてくれる。

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    2019年01月18日
  • オーウェル評論集

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     1948年に発売されベストセラーだった。『1984年』を読んで、「なんと退屈なホラー小説」「露骨な反共」と思った人は多いだろう、だが
    だがオーウェルは読む価値がある。
    英国には≪王制廃止≫共和制の時期もあるし、マルクス以前からの社会主義運動の伝統もある。オーウェルは階級闘争のモティベーションは認めていたがスペイン人民戦線敗北後「底辺を上部に取り換えても混乱のあと同じことをするだけ」と≪革命≫を評価しなかった。WW2最中(以降でも。『冷戦』を公言できるまでは。)の英国では「ドイツだけでなくUSSRにも強制収容所はある」と同盟国を棄損するような言動は自粛させられ『動物農場』は寓話であるがソ連を当

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    2020年02月22日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    前半のパリ編が秀逸。
    20代の1年半をパリで過ごしたからこそ描写できた街の一面。南京虫と悪臭漂う底辺の暮らしを、ヨーロッパ中から集まってくる様々な人の人生との出会いを通して、生き生きとどろどろと描きだしている。
    20世紀前半のこの時から、パリの根本部分は変わっていないと思う。

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    2018年08月28日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    オーウェルの突撃ルポ、デビュー作。1927年から3年間、パリ貧民街とロンドンのホームレス界にどっぷり浸かって取材。やはり性来の裕福さがポジティブな行動と考え方を生んでいる感はあり、よくある王子さまが身分を隠して庶民の中で生活をして学んだり、社長の息子が平社員として素性を隠して研修するという、ベタな物語を実際に行ったルポルタージュ。面白がってはあかんのかもしれませんが、単純に面白いです。だいたいにしてオーウェルがええとこの子なだけに、目が曇ってなくて、好奇心と探究心があるというか、面白がっているところが文章にも現れていて、読んでいるほうもワクワクします。

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    2018年09月17日
  • オーウェル評論集

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    「ナショナリズムとは何か」と問う時、最も明確な指標を与えてくれる作家。ナショナリズムが帰属するのは国家民族に限らず、本質的に権力志向と結びついている。WWⅡ当時の英国-ソ連間の国民意識についても詳述されており興味深い。

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    2017年08月11日
  • 嵐が丘(下)

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    ネタバレ

    上巻が重かっただけに下巻はキャサリンの娘キャシーの天真爛漫さに救われた
    前半 ヒースクリフの息子リントン ロンドン育ちのせいなのか、マジか?!ってくらい、虚弱すぎる キャシーの方が数倍たくましい ほんとうにヒースクリフの実子か? やっぱり荒野で育った子達はたくましいw
    中盤 リントンのキャラが、もう、ひ弱とかいうレベルじゃない 段々とギャグに思えてくる キャシーはこの小皇帝のどこがいいんだ リントンのキャシーへの独占欲の強さは父親譲りのようだ  
    ネリーが仕えてるお嬢様に対しての口の利き方が乱暴すぎる 田舎のメイドだからなのか ずっと違和感があった
    なぜ、父親がヒースクリフを下男として育てなか

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    2016年04月20日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    1984年の著者で有名なジョージ・オーウェル。

    若い時に、あえて貧乏生活を自分に課して
    どんぞこの生活をする。
    3日に1日のパン。寝る暇もない労働。浮浪者となりイギリスを彷徨う。。

    自分が見ている世界とまったく違う世界。
    それが目の前にあるように感じられるように書いている。
    純粋に面白い。

    これを読んだ後にいまの自分の生活を省みるとどんだけ恵まれてるんだと思う。

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    2014年01月26日
  • 嵐が丘(下)

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    魂揺さぶる美しい散文たち。激しい愛と苦悩、美しい若い恋人たち。近代文学のスフィンクスと呼ばれるだけのことはある。久々に本当に読んでよかった一冊。

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    2013年05月24日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    あまりに飄々としていてユーモラスなんで、
    フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。
    いや、それくらい楽しい本ではあるんです。

    フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、
    ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、
    20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。
    それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、
    どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。

    軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、
    これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。
    こういう人になりたいもんだと思います。

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    2013年01月28日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    自らに貧乏生活を課し、パリとロンドンで浮浪者となった作者の生活と、出会った人々達とのエピソード集。

    文体から彼の誠実な人柄が伝わってきて面白い。パリ編はコミカルだが、ロンドンでは浮浪者に対する扱いの差が起因しているのか、重々しい。

    一人一人の浮浪者達が生き生きと描かれていた。浮浪者も、金持ちも、同じ人間であると作者は伝えている。

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    2012年12月15日
  • 嵐が丘(下)

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    ラストがやや弱いかなと感じたけど、ヒースクリフの執念に感服。
    愛のための殺人は小説でよく題材にされるけれど、情熱的な愛と冷静な法的手段を併せ持ったヒースクリフこそ、完全な復讐鬼だと感じた。

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    2012年11月28日
  • パリ・ロンドン放浪記

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    ネタバレ

    大した家柄の筆者が身をやつして、戦間期のパリとロンドンで最下層の生活をレポートする。戦勝国にもロクでもない生活があったという当たり前の事実に気付かされるとともに、ロクでもない生活を最大限に楽しむ心意気を感じられる。
    この筆者はなぜここまでやるのだろうという興味がムクムクと湧く。筆者がこの後にスペイン内戦に身を投じるのは当然の流れなのか。なんにしても密かにあこがれのルポライターである。

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    2012年09月25日