小野寺健のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『1984年』、『動物農場』と、政治思想を前面に押し出した作品を書いた著者が、どのような旅の記録をまとめるのかと身構えつつ読んでみたけれど、これは面白い……。
いえ、面白いと言ってはいけないのかも。
パリとロンドンでの浮浪者生活を描いたものなのだから。
パリでは道端で人が死んでも驚かないほど無気力な窮乏生活を送り、皿洗いの仕事を得る。
食堂の裏側のおぞましいほどに不潔で、ちょっとおかしな話を読み、外食はしたくないと思わせられた。
英国では仕事が得られず各種の収容所を巡る。
その実体験を通じて、浮浪者は特別な存在でないと論じる箇所は説得力があった。
他のルポルタージュも読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
オーウェルといえば1984や動物農場などの作品のイメージが強いけれど、このエッセイを読んで彼に対する印象が大きく変わった。特に1章の食事や日常生活に関する内容がとても面白い。電車の中で笑いをこらえてしまうようなところさえあった。筆者が言うには、おいしい紅茶を入れるには11点もの譲れない条件があるらしいし、理想のパブの条件をすべて満たすパブは実在しないらしい。
私がこの本をこれだけ面白く読めたのは、日本語訳がまた実に良いものだったからというのもあると思う。たいていの翻訳ものは、読んでいて何を言っているかわからなかったり、ジョークが通じなくなっていたり、「本当に原文でこんなこと言ってるのか?」と -
Posted by ブクログ
あまり期待せずに読み始めたら面白くて止まらなくなった。オーウェルの観察眼と表現力が光る。翻訳も素晴らしい。
パリ編もロンドン編もおもしろいが、特筆すべきだと感じたのはP232〜234で、オーウェルが自ら経験した窮乏生活から学んだ「物乞いの社会的地位」について述べている部分が感慨深い。
それに続く、ロンドンのスラングと罵詈雑言について、また「零落した人間」についてなど、終盤にさしかかったところからの記述が深い。
そして、ここで出てくる『暇つぶしの才覚』という表現がタイムリーだった。この本を読んだのがちょうどコロナ騒ぎの真っ只中で、自粛生活がつらい、暇でしょうがない、などという世間の話題をよ -
-
-
-
Posted by ブクログ
1948年に発売されベストセラーだった。『1984年』を読んで、「なんと退屈なホラー小説」「露骨な反共」と思った人は多いだろう、だが
だがオーウェルは読む価値がある。
英国には≪王制廃止≫共和制の時期もあるし、マルクス以前からの社会主義運動の伝統もある。オーウェルは階級闘争のモティベーションは認めていたがスペイン人民戦線敗北後「底辺を上部に取り換えても混乱のあと同じことをするだけ」と≪革命≫を評価しなかった。WW2最中(以降でも。『冷戦』を公言できるまでは。)の英国では「ドイツだけでなくUSSRにも強制収容所はある」と同盟国を棄損するような言動は自粛させられ『動物農場』は寓話であるがソ連を当 -
-
Posted by ブクログ
オーウェルの突撃ルポ、デビュー作。1927年から3年間、パリ貧民街とロンドンのホームレス界にどっぷり浸かって取材。やはり性来の裕福さがポジティブな行動と考え方を生んでいる感はあり、よくある王子さまが身分を隠して庶民の中で生活をして学んだり、社長の息子が平社員として素性を隠して研修するという、ベタな物語を実際に行ったルポルタージュ。面白がってはあかんのかもしれませんが、単純に面白いです。だいたいにしてオーウェルがええとこの子なだけに、目が曇ってなくて、好奇心と探究心があるというか、面白がっているところが文章にも現れていて、読んでいるほうもワクワクします。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻が重かっただけに下巻はキャサリンの娘キャシーの天真爛漫さに救われた
前半 ヒースクリフの息子リントン ロンドン育ちのせいなのか、マジか?!ってくらい、虚弱すぎる キャシーの方が数倍たくましい ほんとうにヒースクリフの実子か? やっぱり荒野で育った子達はたくましいw
中盤 リントンのキャラが、もう、ひ弱とかいうレベルじゃない 段々とギャグに思えてくる キャシーはこの小皇帝のどこがいいんだ リントンのキャシーへの独占欲の強さは父親譲りのようだ
ネリーが仕えてるお嬢様に対しての口の利き方が乱暴すぎる 田舎のメイドだからなのか ずっと違和感があった
なぜ、父親がヒースクリフを下男として育てなか -
-
Posted by ブクログ
あまりに飄々としていてユーモラスなんで、
フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。
いや、それくらい楽しい本ではあるんです。
フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、
ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、
20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。
それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、
どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。
軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、
これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。
こういう人になりたいもんだと思います。 -
-