メアリー・シェリーのレビュー一覧
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芹澤恵さんの美しい訳に導かれるように、久しぶりに夢中になって読んだ。
最後まで自分のことしか考えないヴィクター・フランケンシュタインと、ただ愛されることだけを望む「怪物」。
怪物のような愛への渇望が、他者への興味が、ほんの少しでもヴィクターにあったなら、結末は変わっていたと思う。
姿かたちで人の内面を判断する軽薄さが最後まで悲劇をもたらすところも秀逸。
「人を見た目で判断してはいけません」なんていうつまらない教訓ではなく、そうした軽薄さがどれほど深く人の心に巣食っているかを描き切る冷徹さがかっこよかった。
さまざまな作品の下敷きになるのも納得の、不朽の名作。
前人未到の場所への好奇心、名誉欲 -
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ネタバレヴィクターの人間らしい憎しみ、憎悪こそがホラー。
ヴィクターの亡霊(ドッペルゲンガー)「怪物」の孤独からくる憎しみ、苦しみとの対比が読者をぞっとさせる。なぜか?
この物語の怖さの本質は「怪物」の見た目の恐ろしさでもなければ、主人公の愛する肉身の数々の非業の死でもない。自分が生み出した生命に対する人間らしいエモーショナルな感情の熱情が怖いのである。明らかに自分に帰ってくる許すべき存在である「怪物」に復讐することに取り憑かれた「哀れな」マッドサイエンティスト、それがフランケンシュタインであり、人間とはそうでしかあり得ない臨場感に恐怖する。
「怪物」の視点でこの原作を読むと、その眼差しの奥にアニミズ -
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ネタバレフランケンシュタイン博士という科学者が、外見が醜く、身体能力が高く、感情と知性を持つ「怪物」をつくる。しかし、博士は、その外見を見て恐ろしくなり、逃げてしまう。怪物は、人間と関わろうとするが、その外見からひどい目に合う。そこで、自分と同じような醜い伴侶がいれば、自分の孤独も癒えるだろうと思い、博士につくってくれと頼むが、博士は二人が協力して人類に危害を加えるのではと考え断る。博士の周りの人間から始まり、最終的に怪物も含め全員死んでしまう。
フランケンシュタイン=怪物のことだと思い込んでいたが、つくった博士の名前だったとは驚いた。
博士は無責任だと思った。自分がつくったものを放り出し、噛みつ -
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ネタバレ青ざめた四角い顔に目の上のコブ、醜い図体、というのがフランケンシュタインのイメージで漫画のキャラクターぐらいの印象しかなかった。 ところが英語の本の愛読書のランキングに必ず出てくる。 ??ということで本を読んでみることにした。
結果、誤解していたことが一つ、フランケンシュタインは怪物の名前ではなく、怪物を創造した科学者の名前だった。 そして意図してつくった人工人間が意図せず怪物となったことによる、とんでもない悲劇が展開していくことになる。 悲劇と言ってしまえば一言で終わってしまうけれど、愛と憎しみ、欲と虚栄心、など深いテーマが隠されている。 そして、何よりもAIブームの入り口にいる現代人に、 -
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原題も"Frankenstein"、初出は1818年。
フロストシリーズで毎度テンポの良さとユーモアに富んだ訳で唸らせてくれる芹澤恵さんによる新訳。芹澤恵さん、こんな古典ものの翻訳もされているのねー、これからも色々と読みたい訳者さん。
書かれたのが200年前というのがまず驚くし、作者は執筆当時、20歳の女性だったということにまた驚く。ちなみにメアリーは17歳のときに妻のいる男性と駆け落ちし、駆け落ちの旅行中で本書を執筆した。その妻が自殺して20日後に結婚したらしい。スキャンダラスすぎるし、今の時代からみても倫理的にどうなんだと思う。しかし本書の序文には、「筆者の主な関心は -
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恐ろしくも美しく、身勝手で哀しい物語。
最期の怪物のセリフは、心からの叫びとして胸に突き刺さる。
俗っぽい言い方をするなら…、
「ただし、イケメン(≒容姿普通以上)に限る」。
作中幾度となく人間のもつ性善説的な描写に出くわすけれも、それも相手の容姿ひとつで簡単に翻ってしまう。
心地よい登場人物たちの交流が、怪物の存在から途端に軽薄なものにも見えてしまう。
ここまで性善説的な美徳と、偽善的な見方と、迫害される側の哀しみが同居しているのはある意味面白い。
風景描写はとにかく美しい。それがまた怪物の容姿や恐怖、悲哀を際立たせる。…この手法、むごい。
それにしても…。
怪物に対して「フンガー!」 -
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ネタバレフランケンシュタインは、怪物を造った科学者の名前である。常軌を逸した熱情に駆り立てられて墓場から掘り出された死体をつなぎ合わせ、電気ショックによって生命を与え怪物を誕生させてしまう。怪物は姿は醜いが思慮深い。しかし最後まで名前もない。可哀想なのだ。言うなればこの科学者は、誕生させた赤ちゃんをネグレクトしたのではないか。などと次々と本書のテーマがあるように考えられる。
旅行記のようにヨーロッパ中を壮麗な光景が眼に浮かぶように描写してあることも読み応えたっぷりである。文学的であり芸術的である。
もしかして心優しいエリザベスが怪物のよき理解者、友、母親的になったかもと思うのだ。ヴィクターの対処が -
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ネタバレ天才科学者フランケンシュタインが生み出した怪物と、生みの親であるフランケンシュタインの話。
フランケンシュタインは、科学への好奇心から怪物を生み出したが、その怪物は人間と変わらぬ知性と感情を持っていいた。怪物はその醜い見た目から、親切を働いた人々にも拒絶される。親切や善意が拒絶されたことにより怪物が世界と関われるのは悪意を通した凶行だけだった。悪意に任せるまま、怪物は創造主であるフランケンシュタインへ復習するために、フランケンシュタインと関わりの深い人々を次々に殺していく。そして、フランケンシュタインもまた怪物への復讐を誓う。
誰も救われない展開に呆然とすることしかできない。どちらが悪かを -
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「タイトルは有名だけど中身知らないよね」
となる典型的な作品の一つ。
長らく積ん読状態だったけど、
とあるブログのレビューが興味深かったのでこの度呼んでみた次第。
語り手が交代しながらモノローグを行うように展開されていて、
解説よろしくこれが後生の『嵐が丘』等へ派生していくというのは個人的に胸がアツくなる部分ではある。
フランケンシュタインと聞くと一般的には怪物をイメージしがちだけれども、
怪物には固有名詞はなくフランケンシュタインとは怪物を生み出した天才科学者(ヴィクター・フランケンシュタイン、主人公)の姓である。
物語の原題は正式には『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウ