澁谷知美のレビュー一覧

  • 日本の包茎 ――男の体の200年史

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    ネタバレ

    着実な仕事ぶり。

    但し読む前の期待が大きすぎたかもしれない。戦前戦後のテキストが丹念に分析されているが、総括として「『土着』の恥ずかしさ」とまとめられてしまうのが物足りなかった。徴兵時のM検が及ぼした影響をはじめもっと突っ込んでほしいと感じる論点もあった。

    また高須の「創造」について序盤で早々に否定しながら、後段で彼(ら)の煽りに対する批判が縷々展開されていく。高須にとっては踏んだり蹴ったりだろうが、いち読者としては一度は凡庸な推論として否定された様に思ったところに結局戻ってくるようで、肩透かしを食った気分になった。

    …などと文句から先に書いてしまったが、女性の声を恣意的に引用し、矢面に立たせながら利用する構図、男が男を搾取する構造を、こんなに鮮やかに論証するのは凄い。また既存の男性身体のステレオタイプへの批評も的確で、オルタナティブを探る上での土台になる鋭い批判だと思う。この分析を踏まえて、マジョリティの恥の意識について引き続き考えていきたい。

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    あと蛇足だが韓国オタとしては、読みながら『韓国の包茎』が折に触れて頭をよぎった。費用は数万円で日本と桁違いに安く、ネットで検索すると親が思春期の息子に手術受けさせるケースが多い様な記事がゴマンと出ている。本書によると高須も今でこそ嫌韓だが昔韓国に関わったらしく、何がどうしてこうなったのか…。(成形)手術に関する類書はないか、今後探してみたい。
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    追記。M検については過去の著作『立身出世と下半身』で思い切り章立てされていた…。そちらを先に読むべきだったかも。今後読みたい。

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    2021年10月21日
  • 日本の包茎 ――男の体の200年史

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    原始的な、なんとなくな土着の恥ずかしさ
    戦時中の男性間における包茎を通した支配的構造
    敗戦による男性の精神的な劣等感
    美容整形の始まり
    性器への拡大
    医師と出版社によるマーケティング
    男性による女性視点での言説の流布によるマッチポンプ
    男性間の関係性の再構築

    著者の怒りと優しさを感じました。

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    2021年05月03日
  • 日本の包茎 ――男の体の200年史

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    ネタバレ

    <目次>
    序章   なぜ仮性包茎の歴史なのか
    第1章  恥と包茎~1940年代半ばまで
    第2章  包茎手術の商品化~戦後の混乱期から1960年代まで
    第3章  青年と包茎~1970年代から90年代まで
    第4章  中高年と包茎~1980年代から現代まで
    終章   包茎手術のたそがれ

    <内容>
    女性社会学者の研究書。戦前は新聞や雑誌の広告、戦後は若者向け雑誌の広告やタイアップ記事などを丁寧に読み込んで、「包茎手術」を悪とし、やらなくてもよい「仮性包茎」の手術で儲けた美容整形医のことや、その中で恐怖にあおられた(モテない・バカにされる・病気になる)背景などをしっかりと分析している。
    女性の豊胸手術などとは根本的に違う(「ペチャパイ」好みもいるから)、他人には知られたくない心理を巧みについて様子が読み取れる(高須クリニックなどはとっくに戦線離脱している)。いまだにテレビCMが流れるので(上野クリニック)、まだ一応の需要があるのだろう。第4章のように、ターゲットの年齢が上がっただけ(同じ層の人が狙われている?)なのかもしれない。 

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    2021年03月17日
  • 日本の包茎 ――男の体の200年史

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    日本人男性における包茎コンプレックスの歴史的経緯について論じた本。戦前から広く浸透していた包茎コンプレックスが、80年代以降の美容整形医によるコンプレックス商法とそれに加担したメディアによってより強固なものとされていった。という流れに新規性は感じられないが、皆がだいたいそういうもんだろうと思っていたことを、きちんと逐一資料にあたり検証し明らかにした功績は大きい。
    個人的には明治から戦前にかけての近代化から軍国主義へと向かう中での包茎に対する認識の変遷についてもう少し深堀りして欲しかったところだが、多分、それは木本至が「オナニーと日本人」の中で論じていたことに繋がるような、また別の話になりそうで、この本にそこまで求めるのはお門違いなのかもしれない。

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    2021年02月24日
  • 日本の童貞

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    雑誌を中心としたメディアが童貞について、様々な言説を生みだしてきたことが分かった。
    別に僕にとって、そのような言説はかなりどうでもいいものだった。

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    2019年08月03日
  • 日本の包茎 ――男の体の200年史

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    包茎治療の歴史は200年前の江戸時代後期から現代(2025)に至るまでの歴史がある。だが、当初は包茎治療は極一部であり、ここ1950年代以降の近代化が進み、美容医療、メディア等のマーケティングで男性に「包茎は恥」という印象と概念を植え付けさせ、本来は「治療不要な包茎」を、美容医療の包茎ビジネスとして成功させている。
    さて、現代(2025)において劣等感や包茎を恥または悪だと抱く男性は20代以上の全て世代に当てはまる。包茎は日本人男性のほとんどであり本来は恥でも病気でも治療も必要もない。身体を洗うのと同じで性器も清潔にすればいいだけの話なのだ。男性間で見られるのも性器の形や大きさも合わせて比較されからかう文化もあるが、それも違い形も大きさも個性であり病気でない限り手術の必要はないということを認識する必要がある。他、もし悩みがあるのであれば美容医療ではなく泌尿器科に行くことを勧める。本来はそれが正しい。美容医療は自由診療ビジネスなので基本的に美容治療を勧める。泌尿器科は医学的にその性器が病気か否かだけを判断する。治療不要と言われるのがほとんどであろう。
    現代では包茎は恥という認識は減少傾向にある。「治療しなくても良い」「気にしない」とする声や、そもそも大多数が仮性包茎であるという事実を踏まえ、「気にしなくて良い」「標準的な状態である」とする医学的見解も広まりつつある。だが、依然としてビジネスとしての美容医療ビジネスは優位にあり、本来、劣等感を抱く必要のないことに時間と意識を持っていかれている。
    本著は学校の性教育でも取り入れるべき内容である。10代、思春期において身体の変化を多感に感じやすい時期にとって重要な情報となるだろう。そして、家庭内での性教育においても両親が包茎や性器の扱い、性教育という話す場を設けるのもいいだろう。これからもどのような形であれ、劣等感ビジネスは続き不要な治療、不要な高額な治療費、不要な悩みを正しく理解し、本著においては包茎という悩みという本質的な意味と向き合うには大変教養もあり自分の子どもへも活かせる良書といえるだろう。

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    2025年09月13日
  • 日本の童貞

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    「童貞」という言葉にコンプレックスを抱く男性は多い。本著では、童貞というレッテルは社会構造に問題があると指摘している。性教育をする上でも、「童貞とは一体なんなのか」という疑問に思った男女問わず当事者も含めて性規範の一つの角度で理解が深まる良書である。
    さて、男性が童貞を意識するのは、早くて小学校高学年から始まり、中学校、高校、大学または社会に出ても「童貞」ということだけでイジられて、レッテルを貼られる。私個人はそれは悪だと認識している。童貞を卒業したいという男性の言葉を聞く度に私は「大人になりたい」という成長の手段として用いているように感じている。だが、実際には童貞を卒業しても放蕩、放埒、享楽に耽り、その過程で子どもが生まれても大人になることはない。もし精神的に大人になったと言えるのであれば、それはきっと女性側の人格由来する影響だろう。
    社会に出ても童貞か否かは値踏みをされる。かと言って、風俗で童貞を卒業してもそれはそれで「初めては風俗だった」と半ばトラウマになっている人も多い。童貞か否かで人は計れない。歴史を見ても生涯童貞であっても偉業を成した人物も多い。男性は童貞であるということは、自分の恋愛を育み、知らない自分と出会い、様々な体験を通して男女共に成長した先に童貞から開放されることだろう。だが、童貞を卒業してもしなくても人生には影響はない。答えは人によるだ。性で虐める人は意外に多い。無意識でやっているのだ。それは本著でいう戦後から続く童貞に対する価値観が現代(2025)においても続いている。童貞か否かでその人の人間性を全て知ることは不可能だ。悪影響が出るなら方便を使うのも良いだろう。男女共に性のレッテルいじりは長期間続き抉られるものがある。
    童貞についての向き合い方も大切だし、避妊や女性への生理についての理解も深めるのをおすすめする。男女共に性の理解を深め理解し共に歩むことができる存在と出会うことができるのであれば、それは互いにとっての良い異性であり、善き理解者であるといえよう。

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    2025年09月07日
  • どうして男はそうなんだろうか会議 ──いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと

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    面白い研究。
    「自分は相手のことを完全には分かっていない」と意識し続けることで、弱い存在を意のままに扱わない、相手を支配できるけど支配しない。相手とのパワーの非対称性を支配.従属の関係に転嫁させないようなあり方、ケアリング・マスキュリニティの獲得。

    「相手にとって1番良い事は何か、私が最もよく分かっている」と言う自覚は相手への支配に他ならない。なぜなら「相手の全てをわかっている」と言うのは、相手の人格を掌握すると言うことであり、相手の何もかもを手中に収めることだから。自分が考える「相手にとっての最善」を疑わず、相手の生活を好きにコントロールしてしまう。そういうことを強い側は弱い側にしばしばやってしまう。

    自分が優位に立ってしまう事は構造上自分の意思ではどうにもできない問題かもしれないが、その構造を利用するかしないかは自分の意思で選択できる。上司から、部下への抑圧的な言動は、立場上、部下が口答えすることが難しいからこそハラスメントになる。「立場上相手は口答えしにくいだろうから、こちらも言いすぎないようにしよう。」とシフトする。

    実のところ全然変わっていないせいの不動平等への意義申し立てを批判をイクメンなどの「ハイブリットな男性性」は躱してしまう。「新しい現象」にばかり目を向けることで、実は変わっていない不平等が等閑視される可能性がないかは常に意識したい。

    「差別論」佐藤裕
    「差別は大抵悪意のない人がする」キム・ジヘ

    近代という時代はどんな人であれ、等しく人権を持っているという約束のもとに成り立っている。こうした考えがあるから、先人は差別や格差を無くそうと努力してきた。
    人権を大切にしないことを容認するということは自分も大切にされない立場になる可能性も出て来るからみたいなことが書いてあったと思うんだけど、どこだったかな?

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    2023年05月18日
  • どうして男はそうなんだろうか会議 ──いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと

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    ・同じ著者の本をよく読んでいるせいか、また聞いた、みたいな事例や話が良く出てきてしまっている。
    ・ただ、それでも良いとも思っている。自分は物覚えが良くないと思っているので、体に覚え込ませるつもりで読もうと思っている。
    ・身に覚えのある話や考えが多くあり、うわ〜…と声が出てしまう事もしばしばだ。
    ・同時に新しい世界の成り立ちのとば口に居る様でちょっとワクワクしている感じもある。(楽観的?不謹慎?)

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    2023年04月30日
  • どうして男はそうなんだろうか会議 ──いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと

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    男社会の日本をめぐるやるせなさや理不尽を語る会議。
    テーマは性や恋愛や社会など多岐に渡る。

    議論の中には賛同できることや反対したい事が様々あったが、基本的には自分たちの主張を正当化しすぎていて、せっかくの対談なのに賛同しかなかったので、これではお互いが歩み寄れる議論にはならないのではと思った。

    特にマイノリティの男性や男性意識を保護する方向でのみ議論していたのは危険だと思う。
    もっと当人がしんどくならないけど、世渡りができる考え方を供与すべきでないかなど。

    問題的としては面白かったが、評価は2から3のあいだくらい。

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    2022年10月10日
  • 日本の童貞

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    <目次>
    はじめに  童貞とは誰か?
    第1章   「新妻にささげる贈り物」としての童貞
    第2章   童貞のススメ~男の性の問題化と医療化
    第3章   貞操の男女平等の暗面~「花柳病男子拒婚同盟」への反応
    第4章   女の童貞、男の童貞~「童貞」という言葉の変遷
    第5章   「恥ずかしいもの」としての童貞~戦後の雑誌言説
    第6章   シロウト童貞というカテゴリー~「恋愛自由市場」の一側面
    第7章   「やらはた」の誕生~童貞喪失年齢の規範化
    第8章   マザコン・包茎・インポ~童貞の病理化
    第9章   「童貞は見てわかる」~童貞の可視化
    第10章   童貞の復権?

    <内容>
    男性のセクシャリティ社会史を専門とする女性。もともとは2003年に文春新書になったものの文庫化。さらに種本は氏の博士論文。丹念な史料の読み取りにより、「童貞」の観念や見立ての変遷を追っている。女性の「処女」とは少し違うのだ。そしてその評価も20世紀の中でも変わってきていることがわかる。労作だ。

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    2022年04月20日
  • 日本の童貞

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    「日本における"童貞"と見做される人たちの特徴」についてではなく、「日本社会が"童貞"をどのように捉えてきたか」についての一冊。

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    2022年02月19日
  • 日本の童貞

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    童貞言説を丹念にまとめた一冊。最後が「童貞と首を絞めるのは男性自身」という「男子ってバカよね」的なオチを迎えたのは少し残念だったが、読んだ甲斐はあった。

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    2018年04月07日