【感想・ネタバレ】日本の包茎 ――男の体の200年史のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月26日

とても良い本!
広告という媒体が包茎への偏見を増長させるに至った日本の歴史について、相当な文献にあたった上で社会批評+ジェンダー論+メディア論などを交差し論じる。
Xでの広告費稼ぎや過剰とも言える文句の数々に踊らされるぐらいなら、信頼し合える関係を構築し言葉を交えコミュニケーションを積む、その過程こ...続きを読むそがジェンダー不平等への地味な一歩となる。
男性間における視線が、劣等感を抱かせ、その卑屈や内面への閉じこもりがミソジニーに繋がる。

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Posted by ブクログ 2023年01月15日

包茎の日本人の歴史の話
ではなく、包茎が男性に及ぼすスティグマに迫る

これがめちゃくちゃ面白い
芳醇な文献に触れることは至らなかったが、文章をなぞるだけでも時を忘れてしまうほど

ちなみにこの本の話を妻にしたところ、それ脱毛の話に似てると言われた
男性の包茎、女性の脱毛は近いのかもしれない

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Posted by ブクログ 2021年09月26日

包茎に関する資料研究の最高峰だろう。よくぞこれだけの資料を調べあげたものだと感心する。男性同士のまなざしやしんどさの指摘、包茎の議論から最後のジェンダー論への展開が刺さる。

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Posted by ブクログ 2021年08月29日

包茎などを処置する「割礼」と呼ばれる儀式やしきたりは、世界中の民族・部族にあり、また男性に限らず女性も心身共に被害を受けている例も紹介されます。日本の包茎にまつわる200年の歴史的変遷を膨大な歴史的資料を元に解明していきます。日本人の半数が病的でない仮性包茎であるにもかかわらず、包茎を病気とし、女性...続きを読むを男性性器で性的に支配する構図、包茎男性に劣等感を持たせ男性をも支配する構図を明らかにします。また、明治期より最近まで商業利用として、雑誌や新聞記事にまことしやかな記事・宣伝を連載し続けたマスコミの責任も取り上げます。男性クリニックを経営する高須克弥氏や芸能人、マスコミ関係者などの無責任な発言も丹念に、そして経年的に分析します。男性雑誌に掲載された商業的包茎治療を促す記事も、最近は国民的理解が深まったのかED関係の宣伝に変更されていることにも注意が必要です。私自身も誤った認識をもっていた事を内省し、ジェンダー平等を別の視点から観た日本の包茎。多くみなさんに知って欲しい知識です。

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Posted by ブクログ 2021年05月17日

この本の存在自体が凄いと思います。こんなテーマでしかも女性が纏めていることがとても不思議。入念な調査と、男性にはできない冷静な分析が、この本を面白くしている。良し悪しでなく、後にも先にもこの本のようなものは発生し得ない気すらして、畏怖すら感じる。あと、あとがきが面白い。

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Posted by ブクログ 2022年04月18日

さえぼー先生がオススメしてた本書、とても面白い力作だった。
膨大な史料を参照しながら認識や言説の変遷をたどっていくのは、ちくま新書『害虫の誕生 虫から見た日本史』に通じるものがある。
それにしても、雑誌の記事やら広告やら、よくぞここまで集めたな…と感心してしまう。

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Posted by ブクログ 2022年02月19日

医学書は別にして、日本の「包茎」についてはここまで詳細に研究した本が今まであっただろうか。本書カバーには「本邦初の書」とあるので、おそらくなかったのであろう。

医学書はもとより、一般書や新聞、雑誌の記事や広告まで、包茎にまつわる内容を近代から現代まで丹念に調べ、いかに日本において包茎が恥とされ、そ...続きを読むれを基にしたビジネスが作られていったかを克明に描き出している力作。

しかも著者は女性である点もユニークだが、本書を読んだ後では、男性にしっかり植え付けらえた包茎コンプレックスを鑑みると、男はわざわざコンプレックスの対象である包茎を研究対象として近づこうとはしなかったのかも、と考えられ、とすれば、本書のような研究は女性でないとなしえなかったのかも、と思うに至った。

私が感じた本書の結論としては、数の上から多数派である包茎は恥でもなんでもなく、よってそのほとんどは手術は不要、よってそのコンプレックスあおるような、記事や広告は全く無視して良い、である。

今現在の若者にそのようなコンプレックスがあるのかどうかわからないが、少なくともそのようなコンプレックスを抱かせ、包茎ビジネスの餌食にならないようにするためにも、本書のダイジェスト版を冊子にして、中高生の性教育の一部として使用したらよいのでは、とも思った。

そういえば、最近TVCMでタートルネックのセーター着た人のCM見なくなったな~。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年09月04日

着実な仕事ぶり。

但し読む前の期待が大きすぎたかもしれない。戦前戦後のテキストが丹念に分析されているが、総括として「『土着』の恥ずかしさ」とまとめられてしまうのが物足りなかった。徴兵時のM検が及ぼした影響をはじめもっと突っ込んでほしいと感じる論点もあった。

また高須の「創造」について序盤で早々に...続きを読む否定しながら、後段で彼(ら)の煽りに対する批判が縷々展開されていく。高須にとっては踏んだり蹴ったりだろうが、いち読者としては一度は凡庸な推論として否定された様に思ったところに結局戻ってくるようで、肩透かしを食った気分になった。

…などと文句から先に書いてしまったが、女性の声を恣意的に引用し、矢面に立たせながら利用する構図、男が男を搾取する構造を、こんなに鮮やかに論証するのは凄い。また既存の男性身体のステレオタイプへの批評も的確で、オルタナティブを探る上での土台になる鋭い批判だと思う。この分析を踏まえて、マジョリティの恥の意識について引き続き考えていきたい。

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あと蛇足だが韓国オタとしては、読みながら『韓国の包茎』が折に触れて頭をよぎった。費用は数万円で日本と桁違いに安く、ネットで検索すると親が思春期の息子に手術受けさせるケースが多い様な記事がゴマンと出ている。本書によると高須も今でこそ嫌韓だが昔韓国に関わったらしく、何がどうしてこうなったのか…。(成形)手術に関する類書はないか、今後探してみたい。
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追記。M検については過去の著作『立身出世と下半身』で思い切り章立てされていた…。そちらを先に読むべきだったかも。今後読みたい。

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Posted by ブクログ 2021年05月03日

原始的な、なんとなくな土着の恥ずかしさ
戦時中の男性間における包茎を通した支配的構造
敗戦による男性の精神的な劣等感
美容整形の始まり
性器への拡大
医師と出版社によるマーケティング
男性による女性視点での言説の流布によるマッチポンプ
男性間の関係性の再構築

著者の怒りと優しさを感じました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年03月17日

<目次>
序章   なぜ仮性包茎の歴史なのか
第1章  恥と包茎~1940年代半ばまで
第2章  包茎手術の商品化~戦後の混乱期から1960年代まで
第3章  青年と包茎~1970年代から90年代まで
第4章  中高年と包茎~1980年代から現代まで
終章   包茎手術のたそがれ

<内容>
女性社...続きを読む会学者の研究書。戦前は新聞や雑誌の広告、戦後は若者向け雑誌の広告やタイアップ記事などを丁寧に読み込んで、「包茎手術」を悪とし、やらなくてもよい「仮性包茎」の手術で儲けた美容整形医のことや、その中で恐怖にあおられた(モテない・バカにされる・病気になる)背景などをしっかりと分析している。
女性の豊胸手術などとは根本的に違う(「ペチャパイ」好みもいるから)、他人には知られたくない心理を巧みについて様子が読み取れる(高須クリニックなどはとっくに戦線離脱している)。いまだにテレビCMが流れるので(上野クリニック)、まだ一応の需要があるのだろう。第4章のように、ターゲットの年齢が上がっただけ(同じ層の人が狙われている?)なのかもしれない。 

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Posted by ブクログ 2021年02月24日

日本人男性における包茎コンプレックスの歴史的経緯について論じた本。戦前から広く浸透していた包茎コンプレックスが、80年代以降の美容整形医によるコンプレックス商法とそれに加担したメディアによってより強固なものとされていった。という流れに新規性は感じられないが、皆がだいたいそういうもんだろうと思っていた...続きを読むことを、きちんと逐一資料にあたり検証し明らかにした功績は大きい。
個人的には明治から戦前にかけての近代化から軍国主義へと向かう中での包茎に対する認識の変遷についてもう少し深堀りして欲しかったところだが、多分、それは木本至が「オナニーと日本人」の中で論じていたことに繋がるような、また別の話になりそうで、この本にそこまで求めるのはお門違いなのかもしれない。

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