澁谷知美のレビュー一覧
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ネタバレ自分の考え
喧嘩するほど仲が良い、という言葉に違和感があった。自分はどちらかといえば親しい人でも戯れ合いに近い喧嘩はしてこなかったから。この格言の「ほど」という言葉に引っ掛かりがあるのだと気がついた。つまり喧嘩する者としない者の比較であり、喧嘩する者の方が上であるという言外の感覚に違和感を感じていたのだとわかった。自分の周りでこの言葉を言う人は大抵やんちゃなカップルが多かった印象で、その人たちの見下した感じがこの言葉には含まれている。
そういうコミュニケーションを取るかどうかは社会的な関係によって左右される、つまり、常に競争を求められる社会ではイジリやからかいによって笑いと同時にポジショニン -
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SNSで話題になっていて、編集者の澁谷知美さんの「日本の包茎-男たちの200年史(筑摩書房)」や清田隆之さんの「自慢話でも武勇伝でもない『一般男性』の話しから見えた生きづらさと男らしさのこと(扶桑社)」を読んでいたこともあり、共感することも多いだろうと思い、発売前に注文して読み込んだ。
編者の澁谷知美さんは、「はじめに」のなかで「ぜひ、会議に参加する気持ちで読んで下さい。賛成するところも反発するところもあるかもしれません。が、誰かが苦しんでいる社会よりも、誰もが自由で平等な社会がいいですよね。」と提起され、本書を読みつつも、自分も会議に参加している気持ちになって、考え、学び、そしてなにより -
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包茎などを処置する「割礼」と呼ばれる儀式やしきたりは、世界中の民族・部族にあり、また男性に限らず女性も心身共に被害を受けている例も紹介されます。日本の包茎にまつわる200年の歴史的変遷を膨大な歴史的資料を元に解明していきます。日本人の半数が病的でない仮性包茎であるにもかかわらず、包茎を病気とし、女性を男性性器で性的に支配する構図、包茎男性に劣等感を持たせ男性をも支配する構図を明らかにします。また、明治期より最近まで商業利用として、雑誌や新聞記事にまことしやかな記事・宣伝を連載し続けたマスコミの責任も取り上げます。男性クリニックを経営する高須克弥氏や芸能人、マスコミ関係者などの無責任な発言も丹念
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澁谷知美、清田隆之ご両名と西井開、中村正、平山亮、前川直哉、武田砂鉄それぞれとの対話形式。こういう系統の本を読むの好きだし、ほぼほぼうなずきながら読めるんだけど、一方ではここまで男ってミソクソに言われないといけないのとも思う。
だいたいこういう本を真に受けて品行方正におさまる人はますます品行方正を深めてしまう反面、非難に値するしょうもない男たちはまったくこんな本省みずのうのうと生きることだろう。そういうのってちょっと悔しいな。書いてあることは正論なんだけど、そういうことが通じないんだよね。世代が違って「いまどきの若者は何を考えてるのかわからない」って言うのと同じような感じか。
登場する人々がみ -
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自分は男性だが、男性とのコミュニケーションのときにホモソーシャル的なやり取りにうんざりすることが多いと感じていた。だが、同時に自分のなかに時折マチズモめいたものが頭をもたげる瞬間も感じるときもある。
以前読んだグレイソン・ペリーの『男らしさの終焉』を読んだときは自分ごとに感じつつも著者がイギリス人で、これは自分も同意するなと思う部分もあれば、これは日本では感じないかも、という部分があって、日本人男性向けの”(有害な)男らしさ” についての本があったらなー、なんて思っていた。
本著はまさにその日本人の男性向けに男性視点から書かれた著作(聞き手は女性である)で、自分もよく見たり聞いたり、体験する -
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・自分の感情や体験を言語化することに慣れていない男性が多い
・そもそも男性同士の友人間コミュニケーションでも自分に関することの話は少ない。いじる/いじられる、片方が優位に立つコミュニケーションが多い
・加害は日常と地続き。暴力というほどではないが抑圧され支配されていた日常の経験から地続きにある。自分が抑圧される側だったときは嫌だと感じているはずなのに再生産してしまう
・ケアは(資本主義からみて)生産的ではない、というのは間違い。人間という資本のケアであり究極的に生産的と言い切ってくれるのは気持ちよかった。その通りと感じた。
・非モテ=未達感。本来は女と付き合って一人前、仕事して一人前、という理 -
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この本を読む前にたまたま、セジウィックの「男同志の絆イギリス文学と~」という本を上野千鶴子さんがTVで取り上げているのをたまたま見ていた。その番組で作られた社会のシステムのようなものを取り上げていて、なるほど、と思って見ていたのだが、全部読まなくてもセジウィックが書いた男社会の仕組みのようなものを、知っておくのは良いことだと思った。
その上で、この本を読むと、問題の根深さは相当に深刻である。というのも、これでは、人と人との結びつきのきっかけのなかにそもそも問題があって、それを意識できるかできないかが影響するからだ。社会そのものの作りは、空気のように透明で、そうと思わなければ意識できない。意識 -
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医学書は別にして、日本の「包茎」についてはここまで詳細に研究した本が今まであっただろうか。本書カバーには「本邦初の書」とあるので、おそらくなかったのであろう。
医学書はもとより、一般書や新聞、雑誌の記事や広告まで、包茎にまつわる内容を近代から現代まで丹念に調べ、いかに日本において包茎が恥とされ、それを基にしたビジネスが作られていったかを克明に描き出している力作。
しかも著者は女性である点もユニークだが、本書を読んだ後では、男性にしっかり植え付けらえた包茎コンプレックスを鑑みると、男はわざわざコンプレックスの対象である包茎を研究対象として近づこうとはしなかったのかも、と考えられ、とすれば、本