荻原魚雷のレビュー一覧

  • 怠惰の美徳

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    面白かったです!
    怠け者の著者が昭和日本をユーモア溢れる文体で切り取った随筆と、頽廃的な雰囲気を纏う短編が収録されている。
    句読点の多い文体がある種のリズムを作って本の世界観に呑み込まれていく体験をした。
    前半の随筆は面白い語り口のなかでも考えさせられるような内容。
    後半の短編はどこか寂しげな読後感に心地よさがある。

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    2025年11月28日
  • 新編 不参加ぐらし

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    ネタバレ

    "八方ふさがりになっているのだから、余り大きなことを考えたり、志したりしない。自身の能力を超えた仕事を自惚れ強くも背負いこみ、自分がつぶれるのはかまわぬが、他人もひっぱりこんで他人をつぶしたり、傷けたりすることは御免だと思っているということである。そういう自惚れにおちいらぬように、これは自分に向って厳しくありたいと思っている。"

    「参加しない」ことは、生きやすい世の中にするための一つの手段だと思うし、実際にそういうマインド(行動にできているかはわからない)で生きている。けれど、なぜ積極的に参加しないのだという世間や自分の声は気にしてしまうし、「参加しない」ことに固執して、

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    2024年07月13日
  • 怠惰の美徳

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    戦後間も無い日本をユーモア溢れる観点から書き綴った梅崎春生のエッセイ集。現代の若者が憧れるような、文学と自堕落に耽る「怠惰」な生活が描かれながら、戦後日本の雰囲気を一市民として語る視点は興味深く、楽しめる。怠惰であることに社会は厳しいが、もっと生きることのハードルを下げて楽しめる社会が来るといいのではないかという視点も感じるが、苦しんだ先にある悦びに価値を感じる方が、人間として健全であるとも思う。

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    2024年06月15日
  • 怠惰の美徳

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    戦前戦中戦後の中を生き抜いた作者だけれど、怠惰ぶりがおもしろい。生きなければと思いつつも布団から出たくない。まるで自分のよう
    百円紙幣のはなし笑えた。読みやすかった!

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    2024年06月09日
  • 新編 閑な老人

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    「生きていることは、何となく滑稽で面白い」

    目に映るものの面白さ(良さとか正しさ、ではない)に注目して書かれた文章は、何かを指南するわけではないのに、読み手の生き方をちょっとずつ、軽く楽しい方へと変えていく気がする。

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    2022年11月10日
  • 怠惰の美徳

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    がんばらない。楽していい。たっぷり休め。戦争するな。日本すごいって勘違いするな。年寄りの言うことは聞かなくていい。

    今の時代こそ、梅崎文学が必要。

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    2022年07月10日
  • 怠惰の美徳

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    【滝なんかエッサエッサと働いているようだが、眺めている分には一向変化がなく、つまり岩と岩の間から水をぶら下げているだけの話である。忙しそうに見えて、実にぼんやりと怠けているところに、言うに言われぬおもむきがある。私は滝になりたい】(文中より引用)

    何もしないことの素晴らしさを説いた表題作品を含む短編小説集。何もしない、何もしたくない人間の目に映る社会の厳しさやおかしさを見事に捉えた一冊です。著者は、海軍体験を踏まえた『桜島』で注目を集めた梅崎春生。

    なにかと心がささくれ立つニュースや出来事が多い毎日に効いてくる処方箋のような作品。肩の力をふっと抜くことのできるエッセイ調の小説の数々が、現代

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    2021年01月26日
  • 新編 閑な老人

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    植物や虫の観察に時間を忘れるようにして穏やかに過ぎる老年の生活と、家族家産を犠牲に文学を志した若かりし頃‥
    人生や社会への信頼をモットーとする著者の極端を嫌う中庸の美徳が、身近な人々や事物への愛情溢れる文章の行間からこぼれ落ちる。

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    2025年07月17日
  • 怠惰の美徳

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    とにかく、このひとのことすごく好きだ。
    怠けていながらも、人間の底にあるものをいつも見ているし、人間を愛しているし、とてもやさしいひとだったんだろうと思う。

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    2025年07月06日
  • 怠惰の美徳

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    他の方も多いようですが、私もNHKの理想の本棚から

    1部はショートショート、2部は短編集
    情報がほぼなしだったので、戦前戦後の作品だと知らずに読み始めましたが、思わずクスクス笑ってしまうセンスのよさ。
    とくに「蝙蝠の姿勢」はまさに怠惰の美徳を感じましたし、「法師蝉に学ぶ」は思わす声を出して笑ってしまいました。

    だらしなく、でも潔く、面白い1冊でした

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    2024年06月07日
  • 新編 閑な老人

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    随筆と私小説で編まれた作品集。生き続けることが、書き続けることであった方なんだなと感じる作品世界。書けなくなる時期もあるのだけれど、周囲の家族や友人達の支援、本人の努力によって乗り越え、穏やかな老年に至る。「人間を信ずる」(p215)。「他人の批評で右往左往していたら何も出来ない」(p237)。「自分が感動したことを自分流に書く」(p250)。「今在るもののすべてと、できるだけ深く交わる」(p283)。閑な老人になるには、確固とした信念と努力の積み重ねが必要なのだな。編者の荻原魚雷の解説によると、1972年刊行の『閑な老人』とは三篇しか収録作が重ならないらしい。いずれオリジナル本も読んでみたい

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    2024年01月14日
  • 怠惰の美徳

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     昭和17年の「防波堤」以外は1947(昭和22)年から1964(昭和39)年にかけて書かれた梅崎春生の、随筆/エッセイおよび、それが小説的形態を取った作品を収めたアンソロジー。
     読んでいるとユーモアがあってなかなか笑える文章が多い。このような文章の雰囲気は、昔大好きでよく読んでいた北杜夫さんのエッセイにも通じるものがあり、やはり戦前戦時の日本文学の随筆とは違っていて、太平洋戦争から東京大空襲・敗戦を境として明らかに世代・文化の断裂が生じていたのだと改めて感じた。
     ことに「猫と蟻と犬」にはとても笑った。
     さて著者は一時期以来身体が弱く、また神経症なのか、やる気の出ず朝から晩まで横臥しつつ

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    2022年02月12日
  • 怠惰の美徳

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    心に効いてくる。
    本質に怠惰な無気力な視線からついてくる。
    今まで本を読んでいて初めての感覚で、
    語彙が足りなくて今の感情をうまく表現できないのが悔しい。

    やっぱり冒頭の詩で、ものすごく惹きつけられるなあ。

    怠惰な視点で、日常の細かい出来事を鋭く突きながら語る、洞察力の鋭さ。
    それをちゃんとユーモアで包んで言葉にしているからただの怠け者とは訳が違う。
    人間のどうしようもない怠け癖を肯定していないようでしてくれているようで。
    時代が古いからシチュエーションは違えど、、、

    荻原魚雷いわく、筋金入りの傍観者。
    怠惰な日々の中にも文学がある。
    勇気づけられる本。

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    2022年02月05日
  • 吉行淳之介ベスト・エッセイ

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    ネタバレ

    いい文章だなあ うまいなあ うまいこと落ちをつけるよねえ と感心しながら読んだエッセイ。

    近頃ネットの情報満載の文章ばかり読んでいたため、このうえなく癒やされ心地よかった。

    この人のエッセイは、つらつらとあちこち寄り道しながら思いつくまま書いているようでいて、実のところものすごく計算された構成になっている。

    文章作法を研究したところで、常人はこんなふうに洒落た感じに主張をユーモアでカバーしながら書くはなれ技は無理だ、と思う。

    もてたんだろうねえ
    飲む打つ買う をどこまでも上品に嗜むタイプ
    と文章からわかってしまう。

    ミソジニーなだけでなく、今日なら差別的として校閲で直されそうな表現も

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    2019年11月10日
  • 怠惰の美徳

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    タイトルに惹かれた人は一度読んでみる価値あり。
    『私は自主的に怠けているのである。』と言い切る作者が好きだ
    怠惰な日々の中にも文学はある。

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    2024年11月17日
  • 怠惰の美徳

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    理想的本棚から。

    芯のある自堕落。

    私だけが歩ける道を、私はかえりみることなく今年は進んで行きたいと思う。私の部屋に生えた茸のように、培養土を持たずとも成長し得るような強靭な生活力をもって、私は今年は生きて行きたいと思う。

    戦時下の日本の風景。

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    2024年05月12日
  • 怠惰の美徳

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    テレビで紹介されているのを見て面白そうだと思い、読んでみた。タイトルから引き込まれたが、私には難しいと感じてしまった一冊。
    それでも怠惰でダラダラとしていたい気持ちには共感できる部分もあり、やりきれない気持ちを抱えてお酒を飲み、酩酊している様子には切なさも感じられた。飼い猫カロの話しが衝撃的だった。

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    2024年04月29日
  • 怠惰の美徳

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     随筆+短編小説集。自身を怠惰だと自嘲しているものの、著者が生きていた時代背景を考えつつ本書を通読すると、怠惰であることが許されない世相を、必死の努力で怠惰に生きていた、ということがひしひしと感じられる。若い時には西欧の芸術に遊んでおきながら晩年に俳句や擬古文に耽る先人たちを嫌悪し、「私は日本人であることよりも、人間であることに喜びを感じたいのだ」(p99)と宣言する『哀頽からの脱出』、戦時中にも居酒屋の開店待ちをする行列が出来ていたことがわかる、当時の横寺町の名物酒場であったお店の客層の描写も楽しいルポ『飯塚酒場』、怠惰であることからの著者なりの決別の過程が描かれた『防波堤』が読み応えあり。

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    2023年10月21日
  • 新編 閑な老人

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     文学を志しながらも無軌道な生活を送り、長男としての役割も果たさず親族とは絶縁状態になってしまった著者だったが、再婚を機に生活を立て直し、芥川賞受賞など作品も評価されてくる。しかし、終戦前後の長い病臥生活。
     漸く回復してからの過去を振り返って思う妻や子どものこと、親や神主だった祖父のことなど。

     また、生活の周りの自然を興味をもって眺め、淡々と文章に綴った「苔」や「閑な老人」。(残念ながら苔や木々、蛾や尺取虫、これらに関心を持って相手をしようとする境地には至っていない)

     そして「狸の説」。関口良雄『昔日の客』で知った古本屋店主関口と、尾崎士郎や尾崎一雄たち文士の親密さが、本編にも良く表

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    2022年02月27日
  • 怠惰の美徳

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    梅崎春生氏のことは知らなかった。
    勤勉性に関する研究の一環として対立する?怠惰についての情報収集の一つとして読む。

    「怠惰の美徳」は3ページのエッセイ。仕事があるから怠惰が成立する,仕事がない怠惰は怠惰と呼べない。相対論か。

    その他はエッセイと小説で構成された本。「衰頽からの脱出」は印象深かった。

    いろいろ言って最後は自分で落とすスタイル。福岡出身で福岡の話も出てくるのでイメージしやすかった。

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    2020年05月06日