【感想・ネタバレ】新編 閑な老人のレビュー

あらすじ

放蕩と極貧生活を送った元破滅型文学青年。歳を重ねてからは、草木を愛で散歩を趣味とし、寒くなれば冬眠する。人はいつ死ぬかわからない、だからこそ生きているだけで面白い――生死の境を彷徨い「生存五ケ年計画」を経て辿り着いたこの境地。「暢気眼鏡」の作家が“閑な老人”になるまでを綴った、文庫オリジナル作品集。〈編集・解説〉荻原魚雷

目次


五年
祖父
退職の願い
約束
狸の説
片づけごと

閑な老人
歩きたい
上高地行


相変らず
厭世・楽天
古本回顧談
気の弱さ、強さ
文学と家庭の幸福
運ということ
老後の問題
核兵器――素人の心配
明治は遠く――
わが家の男女同権
戦友上林暁
生きる

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「生きていることは、何となく滑稽で面白い」

目に映るものの面白さ(良さとか正しさ、ではない)に注目して書かれた文章は、何かを指南するわけではないのに、読み手の生き方をちょっとずつ、軽く楽しい方へと変えていく気がする。

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2022年11月10日

Posted by ブクログ

植物や虫の観察に時間を忘れるようにして穏やかに過ぎる老年の生活と、家族家産を犠牲に文学を志した若かりし頃‥
人生や社会への信頼をモットーとする著者の極端を嫌う中庸の美徳が、身近な人々や事物への愛情溢れる文章の行間からこぼれ落ちる。

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2025年07月17日

Posted by ブクログ

随筆と私小説で編まれた作品集。生き続けることが、書き続けることであった方なんだなと感じる作品世界。書けなくなる時期もあるのだけれど、周囲の家族や友人達の支援、本人の努力によって乗り越え、穏やかな老年に至る。「人間を信ずる」(p215)。「他人の批評で右往左往していたら何も出来ない」(p237)。「自分が感動したことを自分流に書く」(p250)。「今在るもののすべてと、できるだけ深く交わる」(p283)。閑な老人になるには、確固とした信念と努力の積み重ねが必要なのだな。編者の荻原魚雷の解説によると、1972年刊行の『閑な老人』とは三篇しか収録作が重ならないらしい。いずれオリジナル本も読んでみたい。

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2024年01月14日

Posted by ブクログ

 文学を志しながらも無軌道な生活を送り、長男としての役割も果たさず親族とは絶縁状態になってしまった著者だったが、再婚を機に生活を立て直し、芥川賞受賞など作品も評価されてくる。しかし、終戦前後の長い病臥生活。
 漸く回復してからの過去を振り返って思う妻や子どものこと、親や神主だった祖父のことなど。

 また、生活の周りの自然を興味をもって眺め、淡々と文章に綴った「苔」や「閑な老人」。(残念ながら苔や木々、蛾や尺取虫、これらに関心を持って相手をしようとする境地には至っていない)

 そして「狸の説」。関口良雄『昔日の客』で知った古本屋店主関口と、尾崎士郎や尾崎一雄たち文士の親密さが、本編にも良く表われている。

 この世に生きていることが楽しい、生死を彷徨った作者だけに、この言葉は重いし、羨ましい。

 人生も後半に入り、日常生活を楽しんで過ごしている本作のような作品に魅力を感じるようになっている。

 

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2022年02月27日

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