田丸雅智のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
なるほど、小説にはこういうアプローチもあるのか、と唸らされながら、高いリーダビリティでワクワクしながら読めるショートショート集。
ゴッホやムンク、俵屋宗達らの名画を題材として、その名画から浮かぶインスピレーションを元にした自由なショートショートというだけでも面白いのだが、2人の作家が同じ名画を題材として競い合うという図式が見事。
例えば、平山郁夫がシルクロードを旅する一団を描いた「月明の砂漠」を、一人は砂漠に巣食う化物に襲われるホラーとして、もう一人は宇宙の神秘を描くSFという、全く違った作品に結実させている。
この工夫によって、名画を題材とする読み手のイマジネーションが広がっていく。ぜひ、美術館のパンフレットなんかでこの意匠が取られると面白いんじゃなかろうか。 -
Posted by ブクログ
チョコになった女、ネコになる山菜など『食』にまつわるちょっとおかしな短編
この短編のテーマのほとんどがダジャレみたいな言葉遊びです(たとえば、トウモロコシならぬ、トウモロコ歯。とか、創作料理ならぬ、捜索料理、とか。トウモロコ歯は"ポップコーン''にならなければ欲しいかなぁ(^_^;))
思いつきそうだけどなかなか意外性のある発想が、数ページで纏められているのでサクサク読めます。
切り取る世界は長編と違ってほんの一瞬。しかも、常識から『ちょっと離れた』面白い世界。常識から離れている分、『作者は一体何を書いてんねん』となりそうなものを、ちゃんと読んでいる"私たちの世界"から離れることなく、短く、緻密に、軽快に書いてくれています。(起承転結でいうところの"転"が薄く、ドラマティックな類のものではないところは不満に感じる人も多いかもしれないです。)
スパッとオチをつけて終わっているのは良い。読後にどんよりしたくない方、安心してお読みください。短編にそんな恐れを抱く人はそんなにいないのかもしれませんが^^;
ちょっとネタバレになるけど、何となく好きなオチを書きます。気になったら読んでみては?
『ネコが浸かる水槽の中に重曹をたっぷり入れるようにしてみるんだ。ゼンマイみたいにアク抜きできやしないだろうかって。』
『いっそこのまま、きみでフォンデュになるのも悪くはないさ』
キャベツサイボーグ、おそるべし(?) -
Posted by ブクログ
俳人の堀本さんが一般から俳句を募集し、その句をもとに田丸さんが、ショートショートを作った、という一冊です。
なかなか面白いですよ。もともと俳句って、詠む人の想像力を刺激するものなので物語を引き出しやすいのかもしれませんね。そして田丸さんのスタイルと俳句の相性も良さそうな気がします。ショートショートというと星新一さん、江坂遊さん、筒井康隆さん、阿刀田高さん、あたりの作品が有名ですが、この4人の作品は面白いのは当然ですが、ブラックでビターな部分がかなり強いんですね。皮肉が強い、というか。
対して田丸さんというのはゼロとはいいませんが、ブラックな要素は薄いですね。読後感さわやか、という作品がほとんど。特にこの俳句をもとに書かれた作品集はその傾向強いですね。ご本人の性格もあるでしょうが、世代的なものもあるのかな?1987年生まれだそうです。私の思い込みかもしれませんが、このあたりの世代って、ほんと優しい人たちが多いですよね。
『弾き蛙』
不眠に悩む青年が同僚からG線錠のマリアの楽譜を渡される。同僚の指示通りに水をはった風呂桶の中に楽譜を浸しておいた。朝目覚めて風呂を覗いてみると、あらびっくり!!!!!!という話。
『ムクドリ合唱団』
ムクドリの大量発生に悩むある地方都市の市役所に老人が現れる。騒音問題を解決するという。老人はムクドリの集まっている場所へ向かった。そして手にしていた指揮棒を振りはじめた。すると、ムクドリたちのは一斉に・・・・・・・。という話。
『ペーパーノイズ』
ペーパーノイズとはラジオ放送中にアナウンサーが紙をめくるときにする音のこと。トークの最中に聞こえるぺらっ、ぺらっ、という音ですね。ある女性DJのペーパーノイズは不思議なチカラを持っていて、ペーパーノイズの音を聞いたリスナーは時間をさかのぼることが出来る(ように錯覚する)。で、ある男から、後悔に満ちたハガキが届く。DJはいつもは1枚とか2枚くらいしかめくらないんだけど、その時だけは、ゆっくりと何枚も紙をめくる。ぺらぺらぺらぺら・・・・。すると、ラジオを聴いていた男の部屋のドアを叩く音がして・・・・・・という話。
2017/12/02 07:11 -
購入済み
切れ味がない
ショートショートは星新一の例を引くまでもなく、オチの切れ味で作品の値打ちの大半が決まってしまう。この作品集の多くの作品は、その肝心のオチの切れ味が鈍いと思う。それから、本作品集は横書きであるが、多くの電子本が未だに縦書きなので、かなり違和感がある。