ジョナサン・スウィフトのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大人が読む物語として、
柴田元幸の訳書は逸品だと思う。
「馬の国」とも言われる
第四部「フウイヌム国渡航記」
冒頭
「平家物語」で俊寛が罪人として島流しされた話を思い出す。
「(平家物語)島には、住む人も少なく、言葉も通じません。田畑もなく、魚や獣を取って食料にするしかありませんでした。」
未知の世界に踏み入れる時に、好奇心より不安や恐怖、嫌悪感からくる表現か。
理解するより拒絶を感じる。
自分とは違う。
自分が基準。
本当にその基準は正しいのか。
正しさとは。
どうどう巡りさせて
きがついたらぐるぐると
思考の深みにはまる。
難しい言葉の羅列なく
物語だからこそ出会う思考の探究。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ思ってたより書かれた時代が前。今では異世界転生めちゃくちゃあるけど、そういうお決まり一切ない時代にできた異世界生活の話。目次見てまずびっくりした。大体書いてあるじゃん!
解説が充実してる。痒いところに手が届くって感じで無かったら得られる情報半分以下になってたかも。黒後家蜘蛛の会読んでからアイザックアシモフを知り合いだと思ってるので、アシモフの注釈を引用してくれるの嬉しい。一緒に読んでる気分になる。
どこの国行ってもイギリスの腐敗した政治を人間代表みたいに語るのやめてほしい。他に漂着する人滅多にいなさそうだから、多分今でもめちゃくちゃな世界として伝えられてると思う。流石に仕組みはもうちょっと進化 -
Posted by ブクログ
ネタバレ期待通りの面白さ!
旅行記なので物語というより、不思議な国に行った記録のような書き方。当時の習慣や歴史的背景の知識について、ページの端っこに補足があるのがうれしい。それも事細かではなくて、知ってると面白くなる程度の軽い内容で書かれているのでストーリーを読むときの邪魔にはならない。
当時の常識なので今さら批判しても仕方ないけれど、妻の社会的地位は圧倒的に夫より低かったんだなあと分かる。好きな時にフラッと妻子を置き去りにして数年間旅行にでかけて、帰ってきても再会を喜ぶどころか頭がおかしくなってる旦那を、それでも献身的に出迎えないと生きていけない妻。金持ちの旦那でお金には不自由してないみたいだから -
Posted by ブクログ
朝日新聞で連載されていた翻訳の単行本化。連載で読むのはもったいなくて、書籍になるのを待っていた。
注釈が多いので、読むのが大変だなと連載時には思ったが、世相や権力への皮肉が込められている内容が多く、注釈がなければ意味が分からないところも多い。この本には、青空文庫では得られない喜びがある。
ガリバーはどの国に行っても王、帝から寵愛を受ける。まあ、そうしないと生き抜いていけないわけで、ストーリー上困るからだろうが。
しかし、何度も難破したりして訳の分からないところに流れ着いて、その度えらい目にあうのに、まったく家に居つけないガリバーは異常だ。こんな亭主を持ったら、大変である。
最後は嘘をつ -
Posted by ブクログ
何故今になってガリバー旅行記を改めて読んでみようと思ったのか全く覚えていないのだが、絵本しか知らなかった私がそのイメージで気軽に挑んでいい本ではなかった。絵本の筋書きは本当になぞっただけで、全く子供向けではない。読み終えた今ではむしろ、なんでここだけ抜粋して絵本にした?という感じ。
旅行記と名のつくように、主人公があらゆる国(もちろん架空の国)を渡航した記録なのだが、国を巡っていくにつれて文章全体が厭世的になっていく。最初は旅行記らしく、その国の政治や風土、慣習など詳細に記しているものの、ページを捲るにつれて政治や科学への言及が多くなり、遂には人間の愚かさや醜さについての記述が対話文のまとめと -
Posted by ブクログ
厭世主義的諧謔と人間への嫌悪に満ちたジョナサン・スウィフトによる空想旅行記。全四話で構成されているが、第一話のリリパット(小人の国)と第二話のブロブディンナグ(巨人の国)以外は広く知られていない。現在では児童文学と見なされることが多いが、原書ーー特に第四話のフウイヌム旅行記ーーではモキュメンタリー形式の辛辣な文体で、人間社会における政治・法律・科学・風習・堕落・欺瞞・男女・権力闘争にまつわる悪徳が告発されている。他国の者達との対話の中で登場の英国社会に蔓延する病を浮き彫りにしながら、次の章では何事もなかったかのようにガリヴァーに愛国心を語らせるのも滑稽だ。第三話に登場する過去の偉人達にまつわ