泉谷閑示のレビュー一覧
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現代の「常識」と定義されている、人生観や死生観に悩まされている人にはぜひ勧めたい。
今の社会では秩序を維持するため、商品を売る為、人の不安に漬け込んでこういう生き方が常識とされていますよ、多くの人が人生においてこのモデルコースを歩いていますよってメッセージが嫌でも耳に入ってくるし、そこを逸脱する事に対してとてつもないペナルティが待っていると思わされている。
そのモデルコースを考えなしに歩む事に違和感を覚えた人達が生きづらさを抱え、社会と自身の考えのギャップに苦しみ、精神科へ足を運ぶようになる。
みんなが歩く大通りは舗装されていて、歩きやすくて、正しくて、明るくて、清潔で、美しくて、、、
と -
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泉谷 閑示
精神科医。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部附属病院、(財)神経研究所附属晴和病院、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、1999年に渡仏し、パリ・エコールノルマル音楽院に留学。パリ日本人学校教育相談員もつとめた。現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京・広尾)院長。大学や短大、専門学校等での講義も行ってきたほか、現在は一般向けの啓蒙活動として、さまざまなセミナーや講座を開催している。また、作曲家や演出家としての活動も行っている。著書に『「普通がいい」という病』『反教育論』(ともに講談社現代新書)、『「私」を生きるための言葉』(研究社)など。最新刊に『仕事 -
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一生手元に置いて読み直したいと思えるような、素晴らしい書籍だと感じました。仕事がどうして辛いと感じてしまうのか、世の中の状況や、過去の哲学者や文学者の言葉を用いて具体的に説明してくれています。
会社で働くのが何となく辛い、虚しいというのが何故なのかがはっきり理解出来ました。タイトルから、仕事の自己啓発本かと思いますが、仕事だけでなく生きることについて考えさせて教えてくれる本です。
何でも金に換算する消費社会の中で、効率と効果が崇拝されて、質は価値を失ってしまい、仕事のほとんどが単純労働化されてしまいました。こんな単純労働とすぐに消費されて消えていくものを作るために長い時間をかけて働いているの -
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COURRIER JAPON
著名人の本棚
山口周さんの推薦図書より
頭と心と身体の関係について。
ああ、良い本に出会えた。
読むとするすると思考がほぐれて、心がふわふわと軽くなっていきます。。
精神科医であり思想家でもある筆者は造詣が深く、詩、哲学、宗教などの様々な分野からの引用も多く、多面的な論ですっと腑に落ちる。
頭で認識するというより、身体に落とし込まれ染み渡るような感覚の読書体験。
引用されている古今東西のあらゆる言葉たちをこんな風に咀嚼して編み上げ、自らの論旨の説得材料にするのは素晴らしいと感じた。
本を読む、とはこうやって自在に言葉を操る域まで至ること。私はまだまだまだまだ -
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軽やかな筆致で掘り下げられる、人間の生き方。
おもしろかった。
高校生のころ、若い人を主人公にした成長の物語ってたくさんあるけど、中年以降はどうなるのだろう?とずっと不思議に思ってたけど、その問いに答えてくれた。
「敏感で太い」自分、経験は未来に向かって開かれる、螺旋の旅路、十牛図など、印象的な言葉やイメージもたくさん。
西洋東洋、古典と現代作を問わず引用される文献も魅力的で、読みたい本がまた増えてしまった。
読みたかった本を一冊読むたびに、新たに読みたい本が三冊くらい出てきて、雪だるま式に心の積ん読リストが増えていく現象、なんとかならんものかな……。 -
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■「自分がない」という困惑~現代の「うつ」の根本病理
個人差はあるものの、その人の「我慢」のタンクが一杯になったとき「心」は分かち難くつながっている「身体」と協働して何がしかのシグナルを発してくる。食欲がなくなる、いろいろな物事に興味が持てなくなる、妙に怒りっぽくなる、睡眠がとりにくくなる、仕事で凡ミスが増える、等々。
それでも本人がこのシグナルを無視して過ごしてしまうと「心=身体」側は、いよいよストライキを決行する。ある日突然、朝起きられなくなったり、会社や学校に行けなくなったりする。これがうつ状態の始まり。
■「生きる意味」を問うということは、とても人間的で必然的な魂の希求であり、そこ -
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「うつ」を悪とし、抑え込もうとする西洋医学的な常識に疑問を呈し、「病とは何らかのメッセージを自分自身に伝えるべく内側から発されるサインである」という視点から「うつ」を捉え直す一冊である。同時に、「うつ」の背景にある現代社会の歪みを指摘し、「自分らしい在り方」「幸せな生き方」への示唆を与えている。
(きっかけ)
Reapraという会社のCEOが「自我喪失」について語ったインタビュー記事の中で、推薦していたので手に取った。
(感想)
本書を読む以前は「うつ=異常な状態」という認識があり、自分の実存的存在に悩み軽い鬱状態になったときも、その意識から自己否定、自己嫌悪に陥っていた。しかし、うつが引 -
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冒頭より(拙者要約)
人はみな他の人とは違う「角」をもって生まれてきた。しかし、この「角」はひときわ目立つため、他人は真っ先にこの「角」を話題にする。現代では、多数派の信奉する価値観(=普通がいい)によって、この角の切除が行われている。例えば、あるがままの人間は邪悪なもので、あるべき姿に向けしっかりと理性で制御すべきだという考えはその一例である。角が切除された大人たちをモデルとして育った人たちの中には、生きる意欲や生きる意味を見失って、日々むなしさを紛らわせるだけになっていたり、強い自己否定が心の中に巣くってしまっていることがある。
本書は、人間という生き物の根本的な特性を深く理解し、そのう -
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日本で生きていく上での生きづらさを「世間・日本語」というものから紐解く名著。
日本語が備える曖昧さや日本社会における未熟的0人称による“世間”というものの構造を解き明かした上で、1人称で生きていくこと、さらに、超越的0人称になる行程を深い考察で書いています
本書を書くにあたっての作者の苦労は本当に脱帽です
年功序列からジョブ型雇用へと移行する企業が最近よくニュースになっていますが、それも“世間”というものの崩壊が始まったものだと理解されます
いかに自分がぬるま湯的世界観をもって生きていたかが克明に判明すると同時に、これからのグローバル化、インターネット社会に必読すべき書物だと思います