高槻成紀のレビュー一覧
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人間による環境改変によって絶滅する生物の数は増える一方、という中で環境と動物の生態の関わり合いを論じる。「ジュニア新書」とはいえ食物連鎖の延長のような話にはとどまらない。
絶滅しかかった野鳥を守るには、卵を襲うネズミの駆除は不可避。オオカミもおらずハンター人口も減っている日本で「シカの命を奪うのはかわいそう」という運動が続くと森林が全滅してしまう(この愛護運動は「バンビ症候群」といって世界中で見られるらしい)。一方で野生のゾウによる被害の甚大なスリランカの農村で、個体数調整を考えた著者に現地の人々は「ゾウを殺すなんてとんでもない」と答える。ゾウは神聖な動物なのだ。
野生動物の保護はそれぞれ -
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古本で購入。
生物の保全には生態の保全が必要、つまりその生物を取り巻く環境の保全こそが重要。
そこで力を発揮するのが、「保全生態学」。
本書はこの保全生態学の基本について丁寧に書かれてます。
今どんな問題が起きているか、絶滅とは、保全生態学とは、その実践とは、生物に対する価値観とは…
そういったテーマごとに多くの具体例で話をしてくれるので、とてもわかりやすい。
設定されてる読者層が中学生くらい(たぶん)のジュニア新書らしいつくり。
語りかける文体なので、非常にとっつきやすいです。
ただこの「ジュニア新書」、侮るなかれ。
読んだことのある人はわかると思うけど、「どこが『ジュニア』だ」と -
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「生態学」という、「生物と環境の関係を解明する学問」(p.18)で、生物をミクロに捉えるのではなく「生物どうし、あるいは生物と環境の関係を総合的にとらえる」(同)学問が専門の著者が、「故郷」の歌詞を読み解きながら、その歌詞に表現されている「里山」とはいかなる場所か、なぜ里山は破壊されたか、という話題を中心に語ったもの。まさに「学際的研究」という言葉が相応しいような、特に後半は社会的、歴史的な構造の変化についての考察がなされている。
「故郷」の歌は、訳があって数年前に合唱をすることがあり、ピアノの伴奏の練習をやったり、いずれこれを英訳して歌う授業ができないかとか、そんなことを考えていて、たま -
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非常に評価しづらい。人々が動物たちとどう接し、彼らそれぞれにどういう印象を持つように至ったのか。そして社会情勢の変遷によりどのような変化が生まれたのか。そして今後人々はどのように動物たちと接していくべきなのかをまとめた一冊。文章は(やや価値観が古いな、と思う部分は散見されるものの)読みやすく、紹介される事例も面白い。なのだが結論がどっちつかずの玉虫色で、「結局何が言いたいの?」が正直わかりづらい。もちろん、動物倫理なんて簡単に答えを出せる問題ではなく、「これはこう」なんて断言してしまったら必ずどこかの方面でカドが立つのはわかるのだが、やはり一冊の本としてはなんらかはっきりとした結論を提示してほ
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- カート
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試し読み
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野生動物(自然環境)をどのようして守るか、という側面について重点的に書かれた本でした。
昨今話題になった「ペット」についての部分は冒頭の一生だけでしたし、そこで語られる内容は(その次の章の「家畜」の在り方についての章も含めて)他の本でも語られている情報も少なくなく、特別に新しい視点が提供される、という事はありません。
とはいえ、岩波ジュニア新書という媒体で、中高生にとって読みやすい語り口で説明がされているので、動物倫理について考えてみたいという生徒にとっては良いきっかけになると思います。
巻末の読書案内も(若干、本書の読者として想定されているであろう中高生にとっては難解な本もあるようには思いま -
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ヒトが独擅場と自負する知能は狩猟する獣に共通する。遊牧は文明の原点で、定住化=農業開始は能力退化。人類は“自己家畜化”することで“繁栄”してきたが、ハンターではなくドンキーになることでもあった。農業はリスク低減に見えたが気候条件などで大きく成果に上下がでるし、水路確保などで広域代表権力の誕生も促した。採集捕食者とのバトル開始でもあった/著者の専門はシカ。遺体の腐敗はヒトに共通する、鎌倉、~桃山時代、江戸時代初期までよほどの貴人でなければ葬儀はせず“河原に置き捨て”だったらしい。葬儀と埋葬をするのはヒトだけ。「ヒトの肉の味」をケダモノに知らせないためか?
クジラが海岸に打ち上げられても、食肉にせ -
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誠文堂新光社のこのシリーズは文章の量と図版の量のバランスがとても良く、読みやすい。
タヌキはキツネと並んで、日本人にとって特別な動物であり、三鷹辺りの住宅街でも生息しているらしいから、野生哺乳類の中では一番身近な動物かもしれない。(鼠はもっと都心でも生息しているけど、あれは野生とは言わないよね。)
この本で一番感銘を受けたのは、震災の後タヌキが戻ってきて植生が豊かになったというところ。そして愚かな人間がせっかくタヌキたちが作り出したものを引っこ抜いて防潮堤を作ってしまうところ。
こういう人間の愚かさにはいつもガッカリさせられる。自然界で生きるものたちはこんなことは決してしない。
タヌキが暮らせ