あらすじ
なぜ「化かす」と思われていた?
ポンポコはどこからきている?
津波後の海岸にヒトより早く戻ってきたって本当?
野生動物とうまく共存していくために知っておきたい
長い間人のそばで生きてきたタヌキの真実
昔話でもおなじみ、古くから人とともに生きてきたタヌキは、現代人にとっても最も身近な野生の哺乳類である。
東京23区すべてに生息が確認されているほど、都会でもたくましく生きる野生動物だが、その生態はほとんど知られていない。
そのわりに、昔から化かす動物と思われていたり、タヌキおやじなど抜け目ない生き物の代表として使われたりと、さまざまなイメージがついてまわるふしぎな動物でもある。
そこで、生態等の基礎知識を紹介しながら、そんなタヌキのイメージをじっくりひもといていくのが本書である。
どこに住んでなにを食べているのか、どうして化かすと思われたのか、本当に腹鼓を打つのかなどを、野生動物の専門家がひとつひとつわかりやすく解説する。
タヌキのたくまくしさは都会ばかりではなく、東日本大震災の被災地でも確認された。
街も植物も流された仙台海岸に人間よりも早くタヌキが戻ってきていたのである。
本書ではそんな最新事情まで知ることが出来る。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
なぜか昔からタヌキが大好き…愛すべきタヌキの本、見つけてすぐに読み耽った
タヌキの生態のみならず、オオカミなどのほかの動物、タヌキの周りの植物なども教えてくれる。
タヌキ、ユニークな存在だ。
「科」は市、「属」は町など分類を住所にたとえて頂けたのも大変頭がスッキリした。
そして何よりも、人間による自然破壊や自然を顧みない姿勢に憤りを感じ、深く考えさせられた。
震災後、逞しく戻ってきてくれた植物やタヌキたちが、人間のための工事により再び立ち退きを余儀なくされたと知り、愕然とした。
自然の生命力、回復力を無視して破壊することが果たして復興と言えるのでしょうか?
キツネや野ウサギのように人間社会の発展によって姿を消して行く動物もいる中で、たくましく都市にまで順応し、付いてきてくれた野生動物がタヌキだ。
家のそばで彼らの姿を見るとホッとするのは、ここにはまだ彼らの好む環境があるという自然に対しての安心感かもしれない。
もし、居なくなってしまったら…寂しいだけでは済まないのかもしれない。
Posted by ブクログ
以下2点がキッカケで読むことになった『タヌキ学入門』(高槻成紀)。
❶『狼 その生態と歴史』(平岩米吉)にタヌキも出てきた時、関連書読みたくなってきた。
❷ 『エチュード春一番 第三曲幻想組曲「狼」』(萩原規子)で、
「キツネやタヌキが人を化かす話を、おぬしも少しは聞き知っているだろう。だが、昔話に言い伝えが残った時点で、キツネやタヌキの化け方がどれほど稚拙だったかがわかる。オオカミであれば、何一つ証拠を残さなかった。人間にほとんど気づかせなかったのだ。
(中略)
キツネやタヌキの比ではないな。人間の脳というものは、じつにたやすく幻影を見るのだ。その性癖につけいる技術さえあれば、人にはめったに気づかれることもない。もっとも、察する能力を持つ少数の人間がいることはいる。」
というセリフを読んだ時に、
「『怪物事変』(藍本松)や『平成狸合戦ぽんぽこ』(宮崎駿)以外にキツネ&タヌキの化かす話読みたい」と思った次第。
本書ではタヌキについての形態学・生態学・民俗学など、さまざまな視点で見る事ができるもので非常に面白かったです。
タヌキの愛らしいフォルムが秋には最大になる事も知れましたし、
「タヌキオヤジ」や「古ダヌキ」と言われてしまう事の理由までしっかりと。これはこれでかわいそうw
あとはあの「キュオーン」という切ない鳴き声を聞ければもう満足…。これはYouTubeあたりで聞こう。
そして…
まさか【動物に対するイメージ】の項目でオオカミが出てくるとは思っていなかったので思わぬ収穫!!!
今までに読んだ本の情報を思い返し、「こんな事読んだよなぁー!」と嬉しくなってしまった。
イエローストーン国立公園のオオカミ復活話はまさにそれです。
アタクシの記憶は衰えが速いのであります。
(でも、秩父の三峰神社はちゃんと覚えてますよ)
という事で、❶のミッションはクリア。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(余談)その他タヌキなるほどポイント以下5点。
①タヌキフォルム詳細
「タヌキは秋になると果実などをたくさん食べて脂肪を蓄積するのでまた、丸々と太る。脚は短いから、お腹が地面につきそうになるものもいる。そういうことから「太鼓腹」が連想され、腹づつみを打つ「ポンポコダヌキ」というイメージができたと思われる。」
②日本ではありふれ、世界では珍しいタヌキの事情
分布で見れば中国にもベトナムにもいるそうですが、圧倒的に多いのが日本らしいですポンポコ。
③タヌキとキツネの顔の輪郭ほぼ同じ
著者曰く、「毛色による印象を強く受けているからで、輪郭だけを見るとタヌキとキツネはよく似ている」とのこと。
可愛らしいイラストがめちゃわかりやすい。確かにほとんど同じ。
④キツネとタヌキがあやしい理由
生活面で未知な部分があることと、これらが夜行性であるということが関係するとのこと。
⑤ マーカー入りソーセージでタヌキのトイレ場所チェック
つまりはウンチチェック。
生息地や行動範囲を調査する際に以上のソーセージが使われる事が興味深かかったです。
ヨーロッパでほぼ同じ調査がおこなわれていて、キツネとテンが対象となった話があります。
彼らのマーカー回収率が著者チームとそう変わらなかった時に「知ってホッとした」と書いてあった時にゃ笑ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続いてキッカケ❷。
この本を読むまで忘れていた童話「カチカチ山」や「分福茶釜」の紹介がなされ、
「小学生の時に読んだ!!!」と感動の域に。
ただ、「…こんな内容だったっけ……?」と思い出せず、新しい話を知ったかのような感じになってしまった。
対してキツネの化け話は出てこなかったけど、
「キツネとタヌキがセットで出されますが、仲が良し悪しはないけれど、
タヌキの方が食べる量が多くてキツネは困っているかも」
という話を発見。
綿アメとアイスクリームとみぞれまで食べちゃうもんね。
ソイヤッサ。
Posted by ブクログ
日本人なら誰もが知っているタヌキという動物に生物学だけでなく多方面から考察された本です。知っているようで全く知らなかったタヌキについて知ることができました。
Posted by ブクログ
タヌキと言うと人をたぶらかす、カチカチ山でウサギに一泡ふかされるといったイメージがある。しかしそれは人間が作り出したイメージで、もしタヌキが人なら、「そういうのを印象操作と言うんですよ」、「レッテル張りはやめてください」とどこかの誰かのように言いたくなるだろうなあ。
タヌキはポンポコポンと腹包みをたたいたり、ドロンと化けたりはしない。タヌキのおっとりしたイメージについて、ふっくらした体形からそのように思われていると著者は述べている。秋になるとおいしい果実類をたくさん食べるのでタヌキ山関に変身する。
タヌキが食べているものをフンから調査すると、植物の種子、葉、昆虫が多いという結果が出ている。そして、輪ゴム、ゴム手袋の一部と言った人工物も冬を中心に目につくとある。タヌキにとっては身の回りに存在しないものだけに、区別がつかないのも無理はない。きっと人間に化かされた気分だろう。
タヌキに関するQ&Aでは様々な質問が出ている。タヌキはタヌキ寝入りをするのかという質問に対して、タヌキは捕まると動かなくなることがよくあるそうだ。
タヌキ学ってあるんですか?どの学部に行けば学べますか?という質問に対して、タヌキ学という独立したものはなく、あるとすれば野生動物学という名の研究室を勧めている。インターネット等で良く調べた方がいいと述べている。
モクモク羊としては、大学よりも実社会に行けば「タヌキ学」を勉強することが出来ると思う。特に霞が関や永田町の何とか党本部や秘書はお勧めか。のらりくらりと答弁をはぐらかせて何とか庁の長官になったり、「このハ○~」で一世を風靡したり、一癖も二癖もある「タヌキ」が多く生息している世界なので「タヌキウォッチング」に最適なところだ。
Posted by ブクログ
以下はメモ。
「高速道路の野生動物の交通事故死亡ではタヌキが一番多く、40%にもなるという」
「タヌキの事故死亡数は高速道路だけで年間1万頭になり、一般道を含めれば11万頭から34万頭にもなると推計されている(佐伯、2008)」
「東京都町田市と隣接する神奈川県相模原市では毎年300頭もの動物が犠牲になり、そのうち47%がタヌキ、39%がハクビシン」
Posted by ブクログ
タヌキって身近なのに、以外と知らない。
タヌキとキツネの輪郭変えずに模様変えると横顔だけだと、タヌキがキツネに見えてくる、などイラストも楽しい。短足で秋になると丸々と太り、腹が地面につきそうに。糞の分析でタヌキの1年の生活がしのばれる。身近にあるもの割と好き嫌いなしに食べて、タヌキが特殊化せずに、都市化にも柔軟にたくましく生きている姿が頼もしかった。
改めて、愛すべきタヌキ。タヌキがのこのこ歩きまわれる日本でありたいと願う。
Posted by ブクログ
誠文堂新光社のこのシリーズは文章の量と図版の量のバランスがとても良く、読みやすい。
タヌキはキツネと並んで、日本人にとって特別な動物であり、三鷹辺りの住宅街でも生息しているらしいから、野生哺乳類の中では一番身近な動物かもしれない。(鼠はもっと都心でも生息しているけど、あれは野生とは言わないよね。)
この本で一番感銘を受けたのは、震災の後タヌキが戻ってきて植生が豊かになったというところ。そして愚かな人間がせっかくタヌキたちが作り出したものを引っこ抜いて防潮堤を作ってしまうところ。
こういう人間の愚かさにはいつもガッカリさせられる。自然界で生きるものたちはこんなことは決してしない。
タヌキが暮らせるような自然があるところが、人間も心地よく暮らせる気がする。
いい本だけど、ちょっと欲張りすぎて調査不足になってしまったところも。
狼のお腹に石を詰めて井戸に投げるのは、「赤ずきん」ではなく、「オオカミと七匹の子やぎ」だし、タヌキとアナグマの味については千松信也の本に詳しいが、肛門腺の処理を誤るとどんな肉も臭くて食えないということは、狩猟系の本には必ず書いてあることで、タヌキの肉が不味い理由にはならない。
まあ、著者は生態を研究する学者だから仕方ないけど、専門でないことを書くなら、ちゃんと調べてからにして欲しい。