あらすじ
タヌキはマヌケで、キツネはズルい!?
生態学者がひもとく動物に対する「ステレオタイプ」の起源と変遷
加熱するシャンシャン・フィーバー、空前のイヌネコ・ブーム。フクロウ・カフェができたかと思えば、今度はカワウソが熱い!
現代社会でこのうえなく愛される動物がいる一方で、嫌われる動物もいる。ヘビ、カエル、ネズミ、……。一部の好事家を除けば、一般に忌避される存在だ。
こうした個々の「動物」に対する扱いの差は、どこから生まれたのか?偏見とも思えるような「ステレオタイプ」なイメージは、本当に正しいのか?
動物の生態を守るために調査研究を続ける生物学者が解き明かす、人による「動物へのイメージ」の由来と変遷。
都市生活のなかで失われた「人と動物のあるべき関係」を探る。
本書が取り扱う主な動物
(ペット)イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネズミ
(家畜)ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ
(野生動物)サル、タヌキ、キツネ、クマ、オオカミ、ヘビ
(利用動物)シカ、イルカ、クジラ、アライグマ、トナカイ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
動物保全に詳しい高槻先生の著作。イラストがとても良い。本棚に飾ってもとても可愛らしい良い表紙だ。動物と日本人の言葉の関わり、生活と動物との関わり、立ち位置。色々なジャンルから動物のことを知ることができる本だと感じた。また、まえがきの部分はパンダファンには怒られるかもしれないが私は常日頃「パンダばっかり見に来るのはなぜだ」と腹を立てている人間なので、先生の記述を読んで少し溜飲が下がった。
さて、思った以上に評価が低い本だ。おそらく「動物の言い分」に寄っている箇所がないからだと思う。それはそうだ。動物に直接聞くしかない。これからの動物言語学の研究が進むことがあれば本当にわかってくるかもしれない。
少なくとも人間の偏見は改めた方がいい。パンダが最高でコウモリが最低ということは絶対にないのだから。
Posted by ブクログ
案外、評価の低いレビューが多かったですが、私自身は楽しんで読むことができました。
かつて日本では人々の生活環境と自然の距離が近く、手が届く/目に触れるところに野生動物(タヌキヤキツネなど)がいました。
農耕・畜産などの性産業も身近で、「食べる」という行為は食糧を確保する=採集/収穫するか、獲物を狩猟する→調理する→食べる→片づける、という一連の行動すべてを指していました。
現代では都市化が進み、身近な動物は「ペット」か「動物園のアイドル化された動物」か「TVで見る自然番組」となり、動物に対して抱くイメージも、その実態とはかけ離れたものになっています。
たとえば、「可愛いアイドル」として絶大な人気を誇るパンは熊に近い野生動物ですし、「卑怯者」「悪者」というイメージのあるオオカミはかつては「大神」として敬われる存在でした。「狡猾でずるい」と思われているキツネも、やはり神(=稲荷)だったのです。
これら、今の私たちが動物に対して抱く「誤った(動物生態学的な視点からみると間違いの)イメージ」がどこから来たのか、ということや、人と動物/人と自然の関係がどのように変化してきたのか、という点が丁寧に説明されています。
また、これらの考察を行うにあたって、人が飼育するかどうか/品種改良がなされたかどうかという点から、
・品種改良がされて飼育されるペット(イヌなど)
・品種改良がされて飼育される生産動物(ウシなどの家畜)
・野生動物のまま飼育されるペット(アライグマなど)
・野生動物のまま飼育される生産動物(鹿など)
・飼育されない野生動物で人に利用されるもの(兎など狩猟の対象となるもの等)
・そのほかの野生動物(人が利用しないもの)
の6つのカテゴリに分けるという視点は新鮮でしたし、理論的だったと思います。
人間と動物との関わり方に正解はありませんし、そのことについて筆者は「問題に対する処方箋は書けない」と正直に打ち明けつつも「ささやかな提案はできそうな気がする」と述べています。それは、子どもたちを中心に自然を体験させること。かつて(少なくとも高度成長時代以前には)あった、自然を身近に感じられるような生活を送って動物のありのままの姿を知り、「誤った」イメージを修正すること。
本書の最後の一文、「知りたいものがあれば、勉強は楽しい」は至言です。
Posted by ブクログ
非常に評価しづらい。人々が動物たちとどう接し、彼らそれぞれにどういう印象を持つように至ったのか。そして社会情勢の変遷によりどのような変化が生まれたのか。そして今後人々はどのように動物たちと接していくべきなのかをまとめた一冊。文章は(やや価値観が古いな、と思う部分は散見されるものの)読みやすく、紹介される事例も面白い。なのだが結論がどっちつかずの玉虫色で、「結局何が言いたいの?」が正直わかりづらい。もちろん、動物倫理なんて簡単に答えを出せる問題ではなく、「これはこう」なんて断言してしまったら必ずどこかの方面でカドが立つのはわかるのだが、やはり一冊の本としてはなんらかはっきりとした結論を提示してほしいかな、と思った。
Posted by ブクログ
ヒトが独擅場と自負する知能は狩猟する獣に共通する。遊牧は文明の原点で、定住化=農業開始は能力退化。人類は“自己家畜化”することで“繁栄”してきたが、ハンターではなくドンキーになることでもあった。農業はリスク低減に見えたが気候条件などで大きく成果に上下がでるし、水路確保などで広域代表権力の誕生も促した。採集捕食者とのバトル開始でもあった/著者の専門はシカ。遺体の腐敗はヒトに共通する、鎌倉、~桃山時代、江戸時代初期までよほどの貴人でなければ葬儀はせず“河原に置き捨て”だったらしい。葬儀と埋葬をするのはヒトだけ。「ヒトの肉の味」をケダモノに知らせないためか?
クジラが海岸に打ち上げられても、食肉にせず大金をつかって焼却処分したように。