清水唯一朗のレビュー一覧
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原敬の評伝。新聞記者、外務官僚を経て政党政治家に。政党政治家のイメージが強かったが、まだ人事制度が流動的だった時代とはいえ1895年に39歳で外務次官になる程の能吏だったようである。
第一次西園寺内閣で内相として、元老山縣有朋に郡制廃止を挑むも敗北する。だが、山縣に勝負を挑んだことで、原は官僚ではなく政党人としてのイメージを獲得する転換点となった。
ライバル松田正久の死もあり、政友会を完全に掌握すると寺内正毅の後を受けて総理大臣に就任。外相、陸海相以外の閣僚は全て政友会から出す「初の本格的政党内閣」であった。原の総理大臣就任は地元盛岡の人にとっては戊辰戦争の賊軍の汚名を返上するものとしても歓迎 -
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現役SFC教員と卒業生による、SFCの入試をめぐる議論。入試だけでなく大学の在り方も議論されている。やはり大学は入試なのだ。1990年の開学以来、AO入試などの斬新な取り組みを先行させてきたキャンパスだし、社会のリーダーを数多く輩出してきた実績は言うまでもないが、30年を経て、新たなフェーズに移行しなければならないという意思を感じる(これは、中に居ても感じる)。普通の組織であれば、眉間に皺を寄せて真剣な議論を行うテーマだろうが、この本では「高校の先生を推薦人にし、生徒の入学後の実績に応じて、推薦枠を変動させる」とか「はみ出す人を取るために、これまで逮捕されなかったギリギリのことをアピールさせる
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明治から大正初期の官僚と国の成り立ちについての書籍。
儒学理念に裏付けられて前例踏襲・変わらないことが求められた時代において、人々が如何に伝統を変えていったかが描かれている。
そのきっかけとして大きな役割を担ったのが洋学である。1870年に洋学教育機関として設立された大学南校(東京大学の前身)での学び、留学を通して得られる知見の重要性がある。本書では大学で学ぶ学生の闊達な雰囲気が描かれているが、読んでいて大変心地よいものがある。また、1882年には伊藤博文が憲法調査団にて諸外国の制度や知見を吸収して日本の制度改善につなげている。
現在の日本は前例踏襲に縛られ、新しいことに挑戦できていないの -
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明治期から大正にかけての政治家、行政官など、人に焦点を当てて、その変遷について述べられた本。極めて精緻な研究に基づいている。特に、明治維新からの歴史の流れに沿って政治・行政の体制を明確に示していること、人材育成について詳しく調査されていること、中央と地方との関連性についても述べられていること、政治家と官僚との関係の分析が精緻なことなど、その分析・研究は深く、勉強になることが多かった。すばらしい研究書である。
「伝統的な世界で生きる者にとって、藩を捨て、藩主を捨てて新政府に仕えることは背信行為と映る。新政府の官僚たちは能力ではなく、その軽い行動ゆえに地位を得たという否定的な見方が嫉妬と羨望が深 -
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幕末維新時代から大正デモクラシーまでの官僚たちの像に迫った本。制度史と当時の人々の考えの両面を丁寧に調べあげていて素晴らしい。維新時代にかき集めた、維新雄藩のお偉方や各藩の士族たちの官僚組織から、伊藤博文をはじめ広く頭脳を集めるとして官僚登用試験を開始するとともに大学を普及させて官僚養成校とした時代、大学が普及するとともに
学士官僚が官僚政治家として国政を支えた時代、そして1890年に帝国議会が幕開けし徐々に官僚や学生が政党政治家としての道を模索していく時代と、時代の流れがよく描かれている。それぞれの時代が移り変わっていく時の旧勢力と新製力の摩擦、時代の移り変わりを機敏にとらえていく学生の回顧 -
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終章を含め全部で7章構成(1.維新の時代ー誰が統治を担うのか、2.明治政府の人材育成ー身分の超克、3.立憲の時代ー1870年代〜80年代、4.帝国憲法制定前後ー高等教育の確立、5.憲政の時代ー1890年代〜1910年代、6.大正デモクラシー下の人材育成、終章 統治と官僚の創出)の本書は、近代日本を支えてきた官僚に焦点を当てて、人材と時代の相互関係をコンパクトに叙述している。類書が少ないだけに非常に有用であろう。
時代と人材のダイナミクスの向こうには、3つの構造、すなわち制度としての民主主義、集団としての官僚、個人としての自己達成という3つが存在していると著者はいう。中でも公議輿論の達成(民主 -
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慶應義塾大学総合政策学部准教授(日本政治外交史)の清水唯一朗(1974-)による明治・大正期の官僚育成・任用制度の成立過程。
【構成】
第1章維新の時代-誰が統治を担うのか
1 明治国家の誕生-行政機関の樹立
2 藩士から官僚へ
3 維新官僚の登場-旧秩序を飛び出した人材
4 公議輿論と人事一新
第2章明治政府の人材育成
1 立国の人材登用策-身分の超克
2 大学南校貢進生-全国から集まったエリートたち
3 大学生たちの留学
第3章立憲の時代-1870年代~80年代
1 維新官僚の台頭-総合調整と分担管理
2 岩倉遣外使節団と制度調整
3 明治十四年の政変
4 内閣制度 -
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初の本格的政党内閣、平民宰相、暗殺された総理大臣と、歴史的に有名で、日本の近代史では必ず登場する原敬。そのわりには、その個性が分かりにくい人なのではないでしょうか。本書では「原敬」について、生い立ちから、最後までを辿ることで、その魅力と業績を知ることができます。それによって、「本格的政党内閣」や「平民宰相」が当時の社会や世界に与えたインパクトの大きさを知ることができます。現代では見られない、将来を見据えた行動と、その結実としての総理大臣。国を考えての様々な行動が、昭和天皇含めて、戦後の日本にもつながる重要な影響を与えた人であることを教えられます。賛否の否もあった人であるゆえに、その人間的な苦し
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江戸末期、明治、大正の各時代の官僚の動態がいきいきと描いた良書だろう。十分な史料に基づき官僚という集団の特質をあぶり出し、その際重要な役割を演じたのが、立身出世の登竜門である旧制の高等学校・帝大、さらには私大を含めたその他の大学という高等教育機関という見方もできよう。この視点を持ちながら本書を読んだ。第2章では実際に大学の生活の描写も多く、勤勉さだけではないやんちゃぶりも書かれており、現代に通ずる大学生の生態がよくわかった。今日、大学のヒドゥン・カリキュラムの効用より正課における授業内外学習時間が話題になるが、時代を問わずに、ある程度時間的余裕は必要だと感じた。そうした余裕があった上での、試験
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ネタバレ明治維新後、新政府の急務は近代国家を支える官僚の確保・育成だった。当初は旧幕臣、藩閥出身者が集められたが、高等教育の確立後、全国の有能な人材が集まり、官僚は「立身出世」の一つの到達点となる。本書は、官僚の誕生から学歴エリートたちが次官に上り詰める時代まで、官僚の人材・役割・実態を明らかにする。激動の近代日本の中、官僚たちの活躍・苦悩と制度の変遷を追うことによって、日本の統治内部を描き出す。
第一章 維新の時代 誰が統地を担うのか
第二章 明治政府の人材育成
第三章 立憲の時代
第四章 帝国憲法制定前後
第五章 憲政の時代
第六章 大正デモクラシー下の人材育成
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1856年(安政3)賊軍南部藩の家老格の次男として生まれ、明治9年20歳にして司法省法学校に入校するも12年退校処分に、同年11月郵便報知新聞社に入社、15年4月大阪の大東日報に入社したが同年10月退社、帰京後11月には外務省御用掛に。19年にはパリ公使館書記官としてパリ着任、22年帰国後農商務省勤務に、大臣の陸奥宗光に出会う。25年3月陸奥とともに辞職するも8月には外務省に復帰し通商局長、日清戦争後の28年には次官に。29年6月在朝鮮特命全権公使と、官界の階段を上りつめる。
公使を退き次の途は、30年9月大阪毎日新聞社に編集総理として入社、31年9月には社長に。33年11月同社退社、立憲