明治から大正初期の官僚と国の成り立ちについての書籍。
儒学理念に裏付けられて前例踏襲・変わらないことが求められた時代において、人々が如何に伝統を変えていったかが描かれている。
そのきっかけとして大きな役割を担ったのが洋学である。1870年に洋学教育機関として設立された大学南校(東京大学の前身)での
...続きを読む学び、留学を通して得られる知見の重要性がある。本書では大学で学ぶ学生の闊達な雰囲気が描かれているが、読んでいて大変心地よいものがある。また、1882年には伊藤博文が憲法調査団にて諸外国の制度や知見を吸収して日本の制度改善につなげている。
現在の日本は前例踏襲に縛られ、新しいことに挑戦できていないのではないだろうか?
諸外国と比して、科学に基づかず、場当たり的な対応をしているのではないだろうか?
1917年に内務省に入省した安井の以下の文章が刺さる。
「自己の内部にあるものが何の方向に向かいつつあるか、また向かうべきものであるかを了解せずしていたずらに新しそうなものに目が眩んでいる日本は誠に危険なものだと思う。日本に内在している生命が何であるかを確かめて、これを新しい文字と組織とに実現化していくことを考える政治家は賢明なる政治家であって、忠良なる国民である。」