田村隆一のレビュー一覧
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ミス・マープルもの。
旧友・ルースから、彼女の妹・キャリイの家の様子を見てきてほしいと頼まれた、ミス・マープル。訪れたその邸は、敷地内に民間の少年院のような施設があり、本宅の方もキャリイの親族やら居候やら、複雑な関係の老若男女が共に暮らしている状況です。
そんな中、妄想癖のある青年が、キャリイの夫・ルイスに襲いかかるというハプニングと同時に別の人物が実際に殺されてしまうという事件が勃発します。さらに、キャリイの命も狙われているかも?と、いう疑惑まで出てきて・・。
まるで魔術のトリックのような事件の真相に、ミス・マープルの人間観察力を絡めた推理が冴えわたります。
ミステリとしての構成もさること -
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前半1/3くらいまでは和訳にやや違和感があった。
英語を文頭から文末までそのまま訳した感じ。
やっぱり原文のままで読めた方が楽しいんだろあなぁなんて考えながら、とりあえず読み進めたら後半からすごく面白かった。
映画はまだ観てない。
一番オススメしたいポイントは、なんと言っても一緒に推理していける事。
伏線もしっかりはられている。よく、(本当によく)考えたら分かるように。推理小説が好きな人の、欲しがってる部分を埋めてくれる感じ。
読み進めていく中で感じる違和感は、やはり必ず重要な部分なのだと再認識。
1940年代に書かれたなんて信じられない。あまりにも色褪せない。
1940年に生きようと2020 -
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20台半ばごろ、つまり30年以上前に読んでいる。
その三十余年前は、一人旅の山陰本線の車内で、タムラさんのように堺港から隠岐に渡ろうか、出雲に行こうか考えていたりもした。
僕の記憶では、タムラさんが鎌倉の自宅か散歩中にふと思い立って、西脇順三郎の詩集だけを手にして、旅に出る場面があったはずなのだが。
タムラさんは何処に行っても、酒が欠かせないし、その文章は軽々して柔らかい。この文章を丸谷才一が名文とした「文章読本」も読んだことある。確かにクダケテいるのに何とも品がある。
最近、タムラさんのエッセイを本屋で見ることが少なくなった。復刻して欲しいとおもう。 -
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ナス屋敷で屋外パーティが開かれ、余興に殺人犯探しゲームが行われる。筋立ては小説家のオリヴァ。ポアロは賞金渡し役にと呼び寄せられる。ところが犯人役の少女が本当に殺されてしまう。そしてナス屋敷の主人の妻、ボート小屋の老人までも殺される。
書かれたのは1956年で、お屋敷が売られてユースホステルになっている、とか、ユースホステルの客が皆外国人で北欧とかイタリアとかでしかもショートパンツ姿、などという当時の状況が興味深い。そして古くからあるナス屋敷の女主人は息子二人が戦死して相続税で家を失ったが、新しく買った人の好意で庭さきの番小屋に住んでいる、という設定。戦後の社会の変化を取り込んだ作品。
これ -
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「荒地派」と呼ばれる現代詩の一大潮流を築き上げた詩人、田村隆一が日本各地を酒(特にウイスキー)を片手に巡り歩く旅行記。
私が最も好きな作曲家の一人が武満徹であるのだが、彼の「My way of Life」という作品では、田村隆一の「私の生活作法」というエッセイがテクストとして利用されている。
その中で特に次の一節が記憶に残っている。
”「時が過ぎるのではない 人が過ぎるのだ」
とぼくは書いたことがあったっけ
その過ぎてゆく人を何人も見た
ぼくも
やがては過ぎて行くだろう”
このテクストからも明らかな通り、田村隆一の文章は平易な言葉で綴られている。本書では旅行記、という性質もあるのかもしれ -
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映画が公開されるということなので、興味本位で読んでみた。
冒頭に殺人事件が描かれているにも関わらず、それ以降はミステリらしくない展開が続く。飽きるかと思いきやそうではなく、一族のスキャンダルがストーリーのベースになり、これはこれで面白い。第二の殺人が起きる後半からはギアチェンジして鋭いロジックを見せつけられるのだが、前半の人間模様が作品の雰囲気と合ってたので、このまま人間ドラマで終わってもいいかなと思ってみたり。
とは言ってもさすがはクリスティー。きちんと伏線を回収して、意外な犯人と意外な着地で読み手を翻弄する手は緩めない。実はなかなか重い真相なのに読後感が悪くないのは、ほどよいボリューム -
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田舎屋敷の園遊会で、おなじみの女性作家オリヴァが企画した犯人探しゲームで実際に起きる殺人事件。冒頭の事件のエピソードから興味深く、いかにも怪しげな人物配置、捜査の課程で判明していく様々な謎や人物間の心理的な関係など、とても引き込まれる内容の作品。
ポアロが事件を防止することができず、真相もなかなか見通せずに、ジグソーパズルに興じながら、焦燥に駆られる場面が印象的だ。
複雑でひねりのある真相。オリヴァの企画した犯人探しゲームの中に真相が暗示されているのが何とも面白い。数々の「なぜ?」に答える真相だが、素直には納得しがたい。真相説明で過去のある出来事が明らかになるのだが、そんなことが実際に起こりう -
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ねじれた家族に発生する、ねじれた殺人事件。
2件の殺人と1件の殺人未遂が発生するが、いずれも特別なトリックが使われているわけではないし、事件関係者の全員が犯行を行いうる状況であったため、アリバイを巡る論議は一切なく、作中では動機が主な議論の対象。犯人を特定する十分な手掛かりが与えられてはいないので、本格ミステリーとは言えない。伏線らしきものがいくつか見受けられるが、それも犯人を特定するようなものではない。
ポアロもマープルも登場しないのは、推理や捜査過程を中心に据えた物語ではないためだろうか。クリスティーが描きたかったのは、このねじれた家族関係そのものなのだろうか。
クリスティーの十八番、お金 -
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