多田富雄のレビュー一覧

  • 春楡の木陰で

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    メインは前半の3篇。デンヴァーの研究所に留学していた時に知己になった3人の女性――下宿の大家の老婦人、バーメイドの中年女性、中華レストランの日本人ウエイトレス――それぞれへのレクイエム。よもや自分がこういう形で人の心に残るとは思ってもいなかったかも。
    後半には、免疫学者ニールス・イェルネ(1984年ノーベル賞受賞)についての一篇もある。聖者のような、ただの偏屈者のようなイェルネ。遠巻きに心酔する著者。これも静かなレクイエム。
    興味深かったのは、著者が「玉」を取り去った話。前立腺がんの治療のためだったが、風通しがよくなって、そして嬉しいことに煩悩もなくなった。その夜見たのは「羽化登仙の夢」だった

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    2025年05月05日
  • 寡黙なる巨人

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    60代半ばにして脳梗塞に倒れた免疫学者は、右半身の自由と言葉を失う。倒れる瞬間のこと。動かなくなった体のこと。病室のベッドでのこと。リハビリ。科学者は自分の体でさえ、ここまで客観的に観察し言葉にできるのかと驚く。と、同時にこの国での障がい者の暮らしにくさを思う。闘病記でありエッセー。

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    2023年04月26日
  • 寡黙なる巨人

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     尊敬する経営事務幹部職員さんから「社会科学の目と構え」を学ぶ上で、参考になる1冊があるとの紹介を受け購読した。本来、人に薦められた本を読むことはほとんどないが、今回の3冊は全て紹介書籍であり、自分でも珍しいと思っている。
     国際的な免疫学者であり、能の創作や美術への造詣の深さ、文学や詩集にも広い知識をでも知られた著者。2021年に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺、言語障害、嚥下障害に対してリハビリテーションの日々を綴る。常に自死念慮にとらわれながら、日々関わるセラピストや家族・知人との交流もあり、深い絶望の淵から這い上がる。リハビリを続け、真剣に「生きる」うち、病前の自分への回復ではなく、内なる「寡

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    2022年01月10日
  • 寡黙なる巨人

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    凄いものに 触れてしまった!

    お前は ちゃんと 生きているのか
    お前は それで いいのか
    お前は そんなこと 言えるのか

    むろん 多田富雄さんは
    そんなことは 一言もおっしゃらない
    読んでいる方が
    自ずと 自分の「これまで」と「いま」を
    勝手に思い、勝手に考えさせられてしまう
    だけである

    折に触れて
    手に取ってしまう一冊が
    またできました

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    2020年07月15日
  • 寡黙なる巨人

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    ネタバレ

    再読。知の巨人が、脳梗塞による半身不随を得て新たなる巨人として生を得るまでの魂の記録。
    倒れて、動くことも話すこともできなくなった中で、再び生きることへの希求を見いだすまでの記録、後半はそんな新たな巨人の視点で過去を振り返り、国を動かし、「生きる」姿を描き出す。

    初めて読んだ10年前は、前半の闘病記の印象が強く、後半はさらっと読んだが、年を重ね後半の方が心に残った。

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    2020年04月11日
  • 寡黙なる巨人

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    文句なしの名著。
    半身不随、しゃべれないし、
    ヨダレを垂らしながらも頭脳明晰な大学者が
    豊かな言葉で、臨死体験や介護される側からの
    視点で日々を語る。

    再読したい。

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    2018年08月04日
  • 寡黙なる巨人

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    死よりも過酷な運命があるとすれば、まさにこのことではないか。
    著者は65歳で脳梗塞を患い、半身不随となった。身体の自由を奪われ、声を上げることもできず、食事や飲水さえ自力で飲み込むことができない。
    もし同じことが自分の身に起きたら、果たして生き続けようとすることができるだろうか。だが著者は生きた。いや、むしろ病を得たことで真に「生きている」と感じるようになる。
    つらいリハビリの中である日、麻痺した右足の親指がピクリと動いたとき、著者の目から涙がこぼれる。自分の中で新しい何かが生まれた。著者はその感動を「物言わぬ鈍重な巨人が目覚めた」と表現する。
    9年間に渡る闘病生活で、著者はそれまで触ったこと

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    2017年06月06日
  • 寡黙なる巨人

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    これは凄い。開始10ページで、もうガツンとやられる。脳梗塞による麻痺。痰を除去する看護婦の上手い下手。このもどかしさや不安に触れる事自体、入院患者のリアルな関心事を反映しており、臨場感がある。臨場感があって、絶望感があって、無力感があって。それで、もう開始早々にガツンと来てしまう。嗚咽。感情失禁。まるで海藻に囲われた海の底のような孤独。心や思考はそこに存在するのに、自分の身体が動かない。麻痺。自らが栄光を勝ち得た巨人。

    病気になってはじめて、生きる感覚を味わうような。その事は感覚的にわかる。生きる感覚。考えさせられる一冊である。

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    2016年09月03日
  • 好きになる分子生物学

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    情報伝達の記述が良かった

    細胞膜のレセプターがよくわからず、わかりやすい本を探していたところこの本によって解決

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    2015年10月11日
  • 春楡の木陰で

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    【本の内容】
    世界的免疫学者である著者が、初の留学で住んだ1960年代のデンバー。

    下宿先の老夫婦との交流、ダウンタウンのバーに通って知った豊かなだけではない米国の現実。

    戦争花嫁だったチエコとの出会いと30年に及ぶ親交。

    懐かしくもほろ苦い若き日々―。

    回想の魔術が、青春の黄金の時を思い出させる。

    そして脳梗塞となって、その重い病との闘いのなかから生まれる珠玉の言葉。

    自伝的エッセイ。

    [ 目次 ]
    1 春楡の木陰で(春楡の木陰で;ダウンタウンに時は流れて;チエコ・飛花落葉)
    2 比翼連理(比翼連理;羽化登仙の記;百舌啼けば;わが青春の小林秀雄;花に遅速あり ほか)

    [ PO

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    2014年10月04日
  • 春楡の木陰で

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    世界的免疫学者で詩人の半生を振り返ったもの。まだ夢の国だったアメリカへ初めて留学した時の 下宿先の老夫婦との生活にはじまり、その後の渡米で知り合った人々との交流が 懐かしくも切なく、とても大切な宝物だと言うことが伝わってきました。老いてから この様に人生の宝物を文にして形で残せたらいいなぁ、人生っていいなぁって思わせてくれました。

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    2014年09月10日
  • 寡黙なる巨人

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    圧倒されました。本文中に「私のように日の当たるところを歩いてきたものは、逆境には弱い。」との行がありますが、とんでもない!寡黙なる巨人は、鈍重な巨人かもしれませんが、不屈の巨人であり、明晰なる巨人であり、饒舌な巨人であり、そして戦う巨人でもありました。日の当たる道、とは免疫学という学問の道であり、能という芸の道であり、いかに知性いう太陽が人間の強さを育むのか、と驚愕しました。脳梗塞を始め、自分の体の機能が自分でコントロールできなくなるのが当たり前になるのが高齢化社会の我々です。その日が来た時に、著者のように自分の思うにならない身体の中に「新しい人の目覚め」を見出し、希望を託すことが出来るか?本

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    2014年07月11日
  • 寡黙なる巨人

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    柳澤桂子さんとの往復書簡を読んでいた時、ちょうどテレビで多田さんがテレビに出られていた。
    自作の能が舞台になったときの、多田さんの晴れやかなお顔や、この著書で小林秀雄賞を受賞されたときの姿を拝見した。
    今は亡くなられ、しかし精一杯生きたその人生に、新たに敬意をもった。

    読んでみて、”巨人”の意味するところが理解できたが、そのときの目が開かれる思いは、簡単に、感動という言葉に置き換えるにはあまりにも軽く、多田さんの冷静で熱い決意に言葉がない。
    多田さんが、懸命に尽くしてくれる奥さんに、ありがとうと言えることができない・・・という箇所に胸が詰まった。

    脳梗塞など、突然倒れ半身不随になったりする

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    2013年06月15日
  • 寡黙なる巨人

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    脳梗塞で半身不随になった学者の素晴らしいエッセイ集。

    前半は、発作の直後から、死に近づいた瞬間のようす、その後の思うに任せない苦しいリハビリの様子が、読み続けるのが怖く、辛くなるほどの克明さで綴られる。

    後半は、発病前の自分ではない「新しい人」として生まれ変わっての暮らしの様子を軽妙に。
    どんなに時間をかけて書き上げたのだろうか。不自由さを全く感じさせない美しい文章が並ぶ。

    あとがきに記された、リハビリ中の患者を置き去りにする保険診療改悪に対しての主張と怒りには、強い説得力があった。

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    2013年05月14日
  • 好きになる分子生物学

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    物理化学で受験して、生命理工とか医学部入った人にはまずこれでしょうってくらいわかりやすい。シグナル伝達の話は特に面白い(n‘∀‘)η

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    2009年10月04日
  • 多田富雄 からだの声をきく

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    免疫は自己と他者を分かつシステムであるという視点と、事物や時空の関係性を再構成・統合する能の世界観の美。病により半身不随となってなお更に深い洞察へ至る凄み。

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    2018年08月23日
  • 多田富雄 からだの声をきく

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    ごく最近までご存命だった方だけあって、文章はとても読みやすい。
    免疫学、全く知らない世界ながら、能の世界観と相まって静かに、すらりと入ってきた。
    理知的で、とても高尚な空気をまとっている。
    如何にも教養深い、文化人という感じだった。
    そして、闘病の部分。冷静で、前に向かう強い意志に圧倒される。
    思考することを奪われないということが、何よりも強いということを知った。

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    2018年07月11日
  • 多田富雄 からだの声をきく

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    「免疫学個人授業」を読んでから気になっていた教授。
    多田富雄さん。
    副題は「からだの声をきく」
    のように、何項目にもわたる、体の話は実に興味深く
    専門的知識がなくとも楽しく次から次へと。

    人の体はどうなってるんだろうか?
    病気はどう体に侵入し、どう体は対抗策をこうじるのか?
    我々の体の中は気がつかない戦いの繰り返しで、思う以上に忙しく休む暇もない。
    そんな宿主の我々ができること、注意することは?
    そばに置いてなんども読みたくなるような一冊。

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    2018年05月30日
  • 寡黙なる巨人

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    著者の多田富雄は、野口英世記念医学賞などの内外多数の賞を受賞し、国際免疫学会連合会長も務めた世界的な免疫学者。
    本書は、2001年に脳梗塞で倒れ、右半身不随になるとともに声を失ってからの約1年の闘病生活を自ら記した『寡黙なる巨人』に、その後6年間に綴ったエッセイを加えた作品集である。2008年の小林秀雄賞受賞作。
    著者は、“その日”に起こったことを、「all the sudden」、「あの日を境にしてすべてが変わってしまった」、「カフカの『変身』は、一夜明けてみたら虫に変身してしまった男の話である。・・・私の場合もそうだった」、「あのおそろしい事件」・・・と言葉を替えて言い、「私の人生も、生き

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    2016年01月11日
  • 好きになる分子生物学

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    わりと初学者向けというか。
    内容は簡単だと思いました。分かりやすいし。
    でもちょっと分子生物学をやったことのある人の復習用としては物足りない。

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    2013年09月10日