多田富雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読書録「寡黙なる巨人」3
著者 多田富雄
出版 集英社文庫
p38より引用
“ 私は昨日まで健康だった。定期検診を
受けても、何も引っかかるところはなかっ
た。健康だけは誰にも負けない自身があっ
た。それが一夜にして重度の障害者となっ
て、一転して自力では立ち上がることもで
きない身となった。”
目次より抜粋引用
“寡黙なる巨人
新しい人の目覚め
近代医療に欠けているもの
美を求める心
涙の効用”
免疫学者である著者による、自らを襲っ
た脳梗塞とその後の様子を綴った、闘病記
エッセイ集。同社刊行作文庫版。
旅先での突然の発症からリハビリや創作
活動についてまで、人間らしく生きようと
する著者の姿が描かれています。
上記の引用は、脳梗塞の後遺症で、看病
のお礼を奥さんに一言言うことも出来なく
なった著者が、それ以前とを比べた一節。
ある人の身の上に、いつ何時どんなことが
起こるかなんて、誰にも分かる事はないの
でしょう。
何時何が起こっても、仕方がないと思える
くらいに、日々を懸命に過ごしたいもので
す。
今まで当たり前に出来ていたことが、出来
ないというのは、本当に辛いものがあるの
だろうと思われます。それなのに、麻痺や
嚥下障害などの後遺障害についての描写が、
大変具体的に詳しく記されています。
それらを読んでいて、辛くなってしまうよ
うな感受性の強い高い人には向いていない
作品かもしれません。
p107には、脳梗塞の発作前と後では、違う
人が生まれたと著者は言います。
生きたまま生まれ変わると言えば聞こえが
良さそうですが、出来ていたことが大幅に
減ってしまっての生まれ変わりというもの
は、非常に厳しいものとなるであると、思わ
ざるを得ません。
そのように体の機能を多く失いながらも、
創作を続けた著者の姿勢が表れていて、
もう少し自分も頑張るかと思わずにはいら
れなくなる。そんな一冊でした。
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Posted by ブクログ
2001年に脳梗塞に倒れ、右半身付随と嚥下障害に苦しむ東大名誉教授の著者。倒れた直後の状態からリハビリの様子が当事者目線で語られる。
障がい者の苦しみや不自由さは想像することでしか理解できなかったけど、その理解がほんの少し深まった気がする。同じく右半身麻痺と言語障がいがある義父を思い浮かべながら読み進めた。理学療法士に比べ、言語聴覚士、作業療法士の育成が進んでいないと書かれていたけど今(本書発行から15年後)はどうなんだろう。
障がいを抱えながら執筆活動を続けたことは大変に素晴らしい。この方自身も非常に努力されたのだと思う。こうして当事者目線の本を残してくれた事もありがたいと思う。でも元東大名誉教授、妻が医者、自宅をバリアフリーに建て替え、大学病院まで徒歩数分の住まい…言い方はアレだけど上級国民である著者。何度も死にたい気持ちになったと書かれていたけど、本当に自死に至ってしまう側の人も世の中には沢山いるんだろうなぁ…と考えずにはいられない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ『私は昨日までは健康だった。定期健診を受けても何もひっかかるところは無かった。それが一夜にして重度の障害者となり、一転して自力では立ち上がることもできない身となった。何をするにも他人の哀れみを乞い、情けにすがって生きなければならぬ。』
死の淵をさまよい、目覚めると重度の障害者になっていた。
毎日自死しようとするが、それすら叶わぬ。
その心情をありありと綴る。読むのがつらいページもあった。
障害者にとっての最悪の法改正についても記述している。
発症後180日以上たったあとはリハビリを受けることができないというものである。
リハビリすることを毎日の糧としている人がいること。
構音障害については、1年リハビリしてもやっと少し効果が出るくらいのものであること。
これらを考えると、このような法改正はありえないはずである。
あるいは正しく例外を定義しておくべきである。
そのようなことが蔑ろにされた法改正がなされてしまう現実についても記述している。
またそのような法改正に対して、44万人の署名を集めて政府に立ち向かうなど、すさまじいまでの行動力も見せている。
『重度の障害を持ち、声も発せず、社会の中では再弱者となったおかげで、私は強い発言力を持つ「巨人」となったのだ。
言葉は喋れないが、皮肉にも言葉の力を使って生きるのだ。』
もし突然障害者になったら僕はこのように行動できるだろうか。