金子拓のレビュー一覧
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実は保守的だった信長。全国統一の為ではなく、室町幕府が担っていた天下静しつ(畿内周辺の平和)を継承して戦っていた。足利氏ではない信長に反感を持つ周辺大名と戦った結果、領土が広がったに過ぎない。朝廷の先例や義務を重んじ、領土経営は他の戦国大名と変わらない。三好に近いか、感覚的にはもっと土臭い感じ。真面目、几帳面、原理原則に厳しく、反面新しいもの好き。革新性はないが、優秀な戦国大名で、天下人たらんとすり等身大の信長が見えてきそう。天皇や朝廷が頼りにしていてそれに応えるが、適当なことをすると天皇にも叱責する。ただ武田滅亡以降はまだ不明な点が多過ぎる。
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☆☆☆2025年9月☆☆☆
長篠合戦は歴史上もっとも有名な戦いの一つだろう。天才・織田信長が鉄砲という新兵器を駆使して武田軍を破った、戦術の変換というイメージとして語られることが多い。鉄砲隊を三段構えとして、充填に時間がかかる鉄砲の弱点を補ったという話はあまりにも有名だ。
しかし、これらの伝説は史実なのか?史実ではない伝説なのか?もし伝説だとしたら、どのようにして生まれたのか?
まずこの戦争の起きた原因から始まり、同時代人の証言を中心に長篠合戦の真実の姿を浮き彫りにしていく。それによれば、鉄砲の使用というよりも「柵」の活用がもっとも強調されていることが分かる。
同時代に人にとって鉄砲の活用 -
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出だしでやられた。
「織田信長は本当に全国統一をめざしていたのだろうか」
「信長権力から「統一」の言葉を切り離して考え直す時がきているのではないだろうか」
天下統一の目前で斃れた織田信長は、日本国を近世へと切り開いたエポックメイキングな歴史上の人物として語られている。最後も一番の近臣であった明智光秀の謀反による本能寺の変ということで、様々な研究から歴史ifまで喧々諤々歴史ファンを楽しませてくれるネタである。
本書は、武威による全国統一という面ではなく、足利義昭を奉じての上洛から本能寺の変までの15年間を『朝廷』との関わり、『朝廷』側からの視点から今まで述べられてきた朝廷と信長の関係性を再構 -
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多角的な角度から長篠の合戦を見直し、織田信長が大量の鉄砲を使って革新的な戦術を編み出したという従来の見方がどのように作られてきたかを検証。
当然歴史的事実というものはすべてがクリアになるものではないが、長篠の合戦の真相はおそらくこうだったんだろうという想像はできるようになった。
結局長篠の合戦のキーポイントになったのは武田勝頼が織田徳川軍の兵力を過小評価したがゆえに長篠城を離れて近づいて行ったこと、酒井忠次に背後の付城群を奇襲させて成功したことにあったのかなと。そこで勝頼が速やかに撤退していれば損失を抑えられただろうが、織田徳川軍に対する過小評価を前提とすればその段階で一か八かの決戦に出てしま -
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ネタバレ<目次>
第1章 織田信長の革新的戦術~これまでの長篠合戦
第2章 両軍激突~大将たちの長篠合戦
第3章 鉄砲戦の幻影~つくられる長篠合戦
第4章 彩られるいくさの記憶~ひろまる長篠合戦
終章 刷新された長篠合戦像
<内容>
東大史料編纂所で長篠合戦期の史料を専門にまとめている著者の。長篠合戦の詳細な分析。近年言われているように、長篠合戦での鉄砲の三段撃ちはなかった、とされる。この本はさらに深めて、信長は周到な準備をしてこの闘いに挑んだわけではない。家康たちも信長との同盟が危うくなっていた状況下で、武田軍がただただ決戦をしたわけでもないことを、周到に説明している。また現在の「長篠 -
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NHK大河ドラマに便乗して出版される歴史本は、玉石混交というより大半が「石」だが、厳密な史料批判と研究史を踏まえた本書は数少ない「玉」であろう。著者がアカデミズムの正規のルートを経た専門の歴史学研究者であるから、というだけではもはや信用ならない嫌な御時世だが(実際本書の著者と同じ勤務先の別の研究者は、最近すっかり商業メディアに毒されおかしくなっている)、本書は原則一次史料(文書や日記)に即して、不明な点は深追いせず、確実に判明した史実から明智光秀の人物像や歴史的位置を慎重に考察している。光秀は同時代では例外的に病気や怪我を気遣う内容の書状が多いという指摘など興味深い。ただし「本能寺の変」に関