ローラン・ビネのレビュー一覧
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終盤のある章の終わりでしばらく放心状態になって動けなくなり、物語の最後の1文で泣き出しそうになった。
すごかった……暫定今月の1位。この著者の別の本も絶対読む。最近読んだミア・カンキマキさんの「眠れない夜に思う〜」と同じように史実に著者の考えや生活が挟み込まれる形式だが、当たり前だがそういうエッセイみたいなのとは全くもって別物。事実だけでも読み応えがある上に、ちゃんと全体が「小説を書くこととは何か」という作品になっている。事実のちょっと手前に著者がいて、その著者と一緒に事実を目撃している感じ。書いているうちにその事実と一体化していく作者を見守る読者になる。いや、、すごかった。
なぜ私たちはナチ -
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いや,おもしろかった.
文明交錯,HHhHに続いて,3冊目のローラン・ビネです.
主人公とその周囲数名以外の登場人物は,皆実在の人物で,こんな描き方をしていいのか?と首を捻ってしまうのだが,もう少しフランスの文壇や文化人,政治家や事件についての知識があれば,もっと楽しめたかもしれない.
哲学者のロラン・バルトが大統領候補のミッテランとの会食の帰りに交通事故に遭い死亡する.どうやら「言語の七番目の機能」に関係するらしい.この事件の捜査に巻き込まれた主人公は,言語の七番目の機能をめぐる陰謀を追う.どうやら言論界の”ファイトクラブ”である「ロゴス・クラブ」が謎を解く鍵らしい....
最初はかな -
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20年前、彼らはヒロシマとナガサキを知っていた。
読み始めてすぐに一旦停止。
内容が内容なだけに、歴史の勉強のやり直し。
そうしてから読んでも、読むのに時間がかかった。
時系列で話が進まないし、作者の感情も入りすぎているように思う。読みにくい。
本当にこういった作品は好きじゃない!!
だけど・・・。
その時の情勢が目に浮かぶ・・・。
昔の話なのに(1世紀も経っていない。途中で作者が言っていた)その場の臨場感がそのまま伝わる。
20年前のボクはプラハの街を歩いたのに、そういった歴史を一切知らなかった。
言いたいことは、天に星、地に石コロの数ほどあるけれど・・・
ボクは、この英 -
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HHhH、言語の7番目の機能の著者ローラン・ビネによる歴史改編小説。インカ帝国がヨーロッパを逆に征服していたらという歴史ifもの。章ごとに記述方法がことなる年代記風の作品で、第1章をアイスランド人によるアメリカ大陸進出を読んだときは不慣れな歴史をベースにしていることもあり、つらいかと思ったけれど、コロンブスが登場する第2勝ぐらいから興に乗り始め、インカ帝国がヨーロッパに進出する第3章はめっぽう面白い。歴史的な知識がある方が楽しめるのは間違いなく、自分も完全に楽しめた自信はない。第4章はオマケみたいなものだけれど、セルバンテスとグレコ、モンテスキューの対話はモンテスキューの思想家としての面目躍如
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ネタバレ「HHhH」の著者の新刊と言うことしか知らないまま読んでみた。大帝国インカが寡兵の探検隊に滅ぼされた理由とされる「銃・病原体・鉄」をヨーロッパによる征服以前からインカ帝国が手にしていたらどうなっていたか、ある種の架空戦記モノ。
インカから漂着してヨーロッパを制圧したアタワルパの物語が中心でおまけみたいにその前後談かあるんやけど、やはりカール5世やフランソワ1世、ヤコブ・フッガーやロレンツォ・メディチといったヨーロッパ史のオールスターみたいな中で異物たるアタワルパが大暴れするところがええよね、と思いつつも、おまけでええからその後の近世、近現代史も読みたいと思ったり。 -
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『「あなたたちフランス人はほんとに議論好きだから…」(You French people are so dialectical...)』―『第四部 ヴェネツィア』
もし記号論に興味があって、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」や「プラハの墓地」は好きだけれど、ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」はちょっとなあと思っていて、本棚にアラン・ソーカルとジャン・ブリクモンの「「知」の欺瞞」やスラヴォイ・ジジェクの「ラカンはこう読め!」があるなら、この本もきっと面白いと思うに違いない。何しろこの本は、実在の著名人たちを登場させてその相互関係を炙り出しつつ行われる痛烈な社会風刺で -
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ネタバレ※私には難しすぎたので再読予定です。
大学講師のシモン・エルゾグは、哲学者、記号学者の
ロラン・バルトの交通事故死の解明のため
警視ジャック・バイヤールに無理やり駆り出される。
実際に起こった事件を元に実在の人物が
様々な事件を引き起こしていく。
学者には疎いのですがかなりめちゃくちゃな
書かれ方をしていて心配していたら、後書きでも
他の方の感想でも心配されていて笑ってしまいました。
言語の七番目の機能を得ることができたら
世界は良くなるかな?いや悪用されるだけでしょうね。
2020年11月16日再読
メモを取り、未知の人物名は検索しながら
読みました。
バルトが持っていた文書の行方 -
Posted by ブクログ
ネタバレナチスのユダヤ人大量虐殺の責任者であったハイドリヒがチェコで暗殺された事件を描くお話
ハイドリヒの生い立ちや、暗殺に至るまでの過程を大量の資料や、過去の小説、映画などを参照しながら書いていくのだけど、それを書いている作者の視点が随所に織り込まれて、歴史を小説という形で創作することについての考察が並行して語られていくという構成
映画「ハイドリヒを撃て」を見ていて、暗殺計画の行く末は知っていたので、歴史的な部分よりも、歴史を創作することの是非を考える部分の方をとても興味深く読みました。
読んでいて、これはあまりにドラマチックに描きすぎではないかと思っていたら、直後に作者自らがそのことをつっこ -
Posted by ブクログ
ネタバレ記号学者ロラン・バルトの交通事故(史実)について、事故直後の身体から、ヤコブソンの唱えた言語の6つの機能に加え、超絶的な7番目の機能の存在の秘密を盗み取られるというフィクションを建て、フランス思想、言語学、記号論から、ジスカール・ディスタンとミッテランとの政争が絡み、学究的かつ思考演習が積層するサスペンス・ミステリー。実在の人物が多数、虚構を散りばめ語り尽くし、縦横無尽に渡り歩く。これでビネの小説は邦訳3作全部読んだことになるが、自分にとって本作が一番の難物だった。1980年代欧州の思想に全然詳しくなく、本筋ストーリーはすごく奇想で面白いのだが、エーコの「薔薇の名前」も未読だし、繰り返される思