唐鎌大輔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレECB(欧州中央銀行)の金融政策に留まらず、諸制度や法的位置付けに至る欧州金融システムを包括的に理解するうえでの教科書的な書籍です。
まだまだ、不勉強なので第1章の位置付けや役割等は要精読ですが、EU圏内の各国中央銀行の重要性やFRBや日銀と異なる分権的なシステム等が具体的に説明されています。
また、2~3章の金融政策については、ECBが金融政策を実施するうえでの実務的な経路、非伝統的な政策の中身や導入経緯等が丁寧に解説されています。
第4章の銀行監督は、破綻・救済制度について詳細に説明するとともに、銀行同盟の法的根拠の不十分性やEU圏内の政治介入のリスクにも言及しています。
制度や機関、委員会について丁寧な説明があるものの、当然途中から略語で示すことから、各略語の意味を頭に入れながら読む必要があります。各略語の意味の理解が浅いのでまた読みたいと思います。 -
Posted by ブクログ
Crossdigなどで目にする機会が増えた、みずほ銀行チーフエコノミストの唐鎌さんとBNPバリバチーフエコノミストの河野さんの対談本。
昨今の円安や金利、日米の財務政策・世界情勢など幅広く論じる。特に近年の日本で物価と賃金の乖離は、企業の内部留保が過剰に膨らんだ事が原因とする論は面白かった。90年代後半の銀行危機により、企業は不況の際銀行が必ずしも助けてくれる訳ではないことを自覚した。度重なる突発的な不況に対し、企業は賃金を定額昇給以上に賃上げしなかった。日本は各国と比較して生産性は30%向上したにも関わらず、賃金が上がらなかった故に物価と賃金の乖離が拡大した。
他にもドイツの労働政策の変換による経済成長と近年の衰退、日本の貿易収支の赤字による構造的円安など、昨今の事象をデータも含めて多角的に論じるのはとても知的好奇心が湧き立つ内容だった。 -
Posted by ブクログ
現在の円安傾向の原因を理解したいと思い、本書を手に取った。
ページ数は多かったが、比較的新しい発見もあり、良い気づきとなった。
印象に残った点としては
・現在も貿易黒字だが、円安にならないのは、今の貿易黒字の主は海外投資の利子、利益。そのため再投資に回されるため、昔みたいに貿易黒字が円安につながらない
・新時代の貿易赤字として、GAFA等に支払うデジタル料が増えてきている
・NISAなどで銀行保有されていた個人資産が海外に流れていることも円安の一因にはなっている(それのみが主ではないが)
・今後の日本は海外から投資を呼び込むことが円安に対抗でき、日本が生き残る道
経済書はすぐに時代が追い越していくが、本書はまだ継続的な円安状況をうまくとらえている -
Posted by ブクログ
・本書は円安・実質賃金の停滞・財政赤字・覇権の揺らぎ・バブル・格差拡大といったテーマが複雑に絡み合いながら経済の安定を脅かしているという問題意識のもと、楽観視への強い警鐘を鳴らす内容だ。
・実質賃金を規定する要因は「労働生産性・労働分配率・交易条件」の三つだが、日本は生産性がドイツ・フランス並みに達しているにもかかわらず、アメリカ型コーポレートガバナンス導入による株主還元優先が労働分配率を押し下げ、2022年以降の急激な円安による輸入物価上昇がさらに実質賃金を悪化させている。
・「異次元緩和」は円安による輸出増を意図したものだったが、実際には輸入物価高による生活コスト上昇を招いた。財政赤字が財政手段で調整されない場合はインフレで調整されるという財政物価理論(FTPL)の観点から、財政拡張策は低所得層に打撃を与えるインフレ税として機能しうる。
・日本のキャピタルフライトは国債暴落・金利急騰という形ではなく、日銀が国債を買い支える一方で金利差拡大から円安が進行する「円安型」で起こりうる。2022年以降の円安はその予行演習ともいえる。
・円安は「いつか戻る」という期待が広く信じられているが、デジタル赤字などに代表される日本の構造的な国際収支劣化に起因するため、容易には反転しない。
・米国の相対的地位低下は二つのリスクを生む。新興国(中国)の台頭に既存覇権国が対抗して衝突に至る「トゥキディデスの罠」と、覇権国不在で国際金融秩序が機能不全に陥る「キンドルバーガーの罠」だ。「アメリカファースト」路線はグローバル公共財の提供者としての役割からの後退を意味し、国際秩序の不安定化を加速する。
・「長期金利<成長率」の状態が続くと投資資金が過剰になり、株式・不動産にバブルを生む。現在の米国株の割高感も同じ構造を背景としており、1980年代後半の日本や2000年代の米国住宅市場と酷似している。
・AIを含むイノベーションの果実は均等に分配されない。IT革命が製造業雇用を破壊して中間層を縮小させたように、AI革命も新卒レベルの仕事を急速に代替しつつあり、格差拡大と社会不安の火種になりうる。制度的な包摂策が不可欠だ。
・新NISAをきっかけに海外金融資産を保有する日本人が増加し、日本経済はかつてないほど世界経済への依存度を高めている。ドル基軸通貨体制の永続を前提にした資産形成戦略は再考を要する。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、「日本経済の死角」の著者河野龍太郎氏とエコノミストの唐鎌大輔氏の対談本。
「日本経済の死角」と同じく、生産性と実質賃金、収奪的イノベーションなどの話に為替・グローバル経済やトランプ政権の登場などの最近の時事的な問題を追加したような内容となっている。
「日本経済の死角」と比較すると、対談形式ということもあって、内容が拡散して深く分析されていない印象で、その点に物足りなさが残る。
為替問題(基軸通貨としてのドル、ドルに代わる基軸通貨、円安など)と政府債務、インフレの問題に絞って議論を深めてほしかった。
【目次】
序章 外国人にとって〝お買い得な国〞の裏側
未来に展望を持ちづらいからこそ、知っておくべきこと
第1章 なぜ働けどラクにならないのか
「日本は生産性が低い」という誤解
「生産性とイノベーション」を考察
あなたの給料が増えない本当の理由
「ジョブ型雇用」で賃金が上がるわけではない
日本の組織風土とジョブ型は〝食べ合わせ〟が悪い
労働規制を緩めると、実質賃金は下がる?
「経済」が政治を動かし、政治家を作る
円安インフレはなぜ起きたのか
GDPで「暮らしの豊かさ」をはかれるのか
地方の賃金は上げられるのか
企業が賃上げをしないのは〝ノルム〟のせい?
第2章 トランプ政権で、世界経済はどう変わる?
トランプ大統領の勝利は必然か
トランプ大統領の真の目的とは
「合理的な損得」よりも「物語としての公正さ」を優先
アメリカ経済の「底力」とは
ヨーロッパ経済はどうなるか
アメリカに振り回される世界経済
中国経済はどうなるか
課題にあがく中国、放置するアメリカ
AIバブルはいずれはじける?
「ドル基軸通貨体制」はこの先も続くのか
アメリカのロシアに対する金融制裁で露呈したこと
ドルに取って代わる国際通貨を考える
「ドル高修正」が行われる可能性はあるか
第3章 為替ににじむ国家の迷走
ドル円相場の乱高下が常態化する理由
円安を批判することはなぜタブーだったのか
なぜ日本には〝一発逆転〟を狙う政策が多いのか
優秀な官僚たちはなぜ本領を発揮できなくなったのか
「金融政策の多角的レビュー」の評価
「金利なき世界」で壊れた規律
「見えない増税」が始まっている
不測の事態が起きたとき、日本は持ちこたえられるのか
「デフレ脱却」はどうなった?
物価は健康に似ている?
なぜ政府の「補正予算や決算」を誰も検証しないのか
消えた「有事の円買い」
貿易収支の赤字定着で、円は〝別の通貨〟になった
日本が保有する海外の資産は本当に安全なのか
海外ビジネスの拡大は日本を豊かにしているのか
海外展開が〝逃げ〟になっていなかったか
第4章 日本からお金が逃げていく?
円の暴落からのキャピタルフライトは起こりうるか
〝日本売り〟は外からやってくる
なぜバブルが繰り返されるのか
日本が先進国と見なされなくなると、何が起きるか
戦後のイギリスで起こったことが、今の日本で起きている?
不動産価格はこのまま上がり続けるのか
NISAブームは家計を救うか
「ハイパーインフレ」の可能性について
新NISAの制度的ジレンマ
GAFAMに支配される「デジタル小作人」から
日本は抜け出せるのか
新たな円安要因と考えられる「外貨建て生命保険」とは
円安になっても輸出が増えないワケ
第5章 AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?
イノベーションは誰のため?
大半の仕事はAIに代替されるのか
AIが、実質賃金を押し下げる要因になることも
〝情報過多〟は人間にどんな影響をもたらすか
SNSが揺さぶる社会秩序
日本とアメリカ、問題の根が深いのはどちらか
「金融イノベーション」で本当に役に立ったのは「ATM」だけ?
「まっとうな政策」の裏で、中間層はなぜ没落したのか
人口減少国・日本に移民は必要か
人間の欲望には際限がなかった
人間を豊かにするための〝経済〟が、そうなっていない現実
最終章 変わりゆく世界
AI覇権争いとトランプ関税の行方〜河野龍太郎
中国発AIがくつがえした「常識」
「中国共産党はIT嫌い」という誤解
アメリカが自由貿易に戻ることはあるか
日本がとるべきは「新・地産地消戦略」か
相互関税は違憲だが……
全体主義に陥るリスク
第二次トランプ政権は欧州統合の〝触媒〞に〜唐鎌大輔
アメリカが突きつける「欧州の再軍備」
アメリカが求める当事者意識
欧州再軍備という歴史的決断
注目されるEU防衛債
欧州統合の〝触媒〟となる第二次トランプ政権 -
Posted by ブクログ
2人のエコノミストによる経済・金融論。
新書にして400ページ以上。大著だ。
内容は、、第二次トランプ大統領が始まった時点での出版なので、
トランプ政策による世界経済の混乱は「予見」にとどまっているが、
世界経済を的確に分析している。
日本経済については、この時点では石破内閣だったわけで、
先日大勝した高市内閣の「責任ある積極財政」に関しては触れようがないが、
二人の主張と高市の主張を比較することはできる。
唯一意見が一致しているのは、単年度会計に対する考えくらいか。
金利、為替、財政赤字については真逆のように思えた。物価、賃金、、、
失われた30年を作った自民党の新しい党首に期待をして投票した人たちへ。
彼女がこれから行う経済政策、刮目せよ!だ。
序章 外国人にとって“お買い得な国”の裏側
第1章 なぜ働けどラクにならないのか
第2章 トランプ政権で、世界経済はどう変わる?
第3章 為替ににじむ国家の迷走
第4章 日本からお金が逃げていく?
第5章 AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?
最終章 変わりゆく世界