【感想・ネタバレ】弱い円の正体 仮面の黒字国・日本のレビュー

あらすじ

「長引く円安」の真因に迫る――どこから外貨が流出しているのか?

【著者より】
経常収支黒字国や対外純資産国というステータスは一見して円の強さを担保する「仮面」のようなものであり、「正体」としてはCFが流出していたり、黒字にもかかわらず外貨のまま戻ってこなくなったりしているという実情がある。その意味で、日本は「仮面の黒字国」とも言える状況にあり、統計上の数字からだけでは見えてこない「正体」に迫る努力が必要というのが筆者の問題意識である。"

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Posted by ブクログ

最近の円安の要因を、データをもとに上手く説明している。構造的に過度な円高にはなりにくくなったことがよく理解できた。為替から見た日本の立ち位置的なことも分かるので、良い本であった。

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2025年02月02日

Posted by ブクログ

なぜ円が弱くなったのか、構造的にわかる名著。

海外に4年ほど住んでおり、この4年で大きく円安が進み、コロナ前よりも日本が圧倒的に弱くなった、というのを肌で感じてきた。その中で、要因が一体何で、今後どうなるのかを正しく把握したくて読んだ。
結論、非常にわかりやすく、また日本人として何をすべきか考えさせられるものだった。

シンプルに要約すると以下。

日本の円安は国際収支構造に基づく構造的な円安であり、元には戻らないだろう。
今の日本は、経常収支は黒字だが、蓋を開けると貿易サービス収支が9兆円と大きく赤字、すでに貿易黒字国ではなくなっている。
黒字の要因は第一次所得収支と言われるもので、投資や配当金などによる不労所得のため、実はキャッシュフローを見ると円売りが大きく、赤字になっている。
貿易サービス収支の赤字は、コストカットによる海外生産へのシフトと、デジタル赤字と呼ばれるGAFAMのような外資大企業へ支払うプラットフォーム費用などが大きい。このデジタル赤字はプラットフォーム提供者が言い値でコントロールできるため、今後は肥大すると考えられる。

元々、日本では為替がFRBの金利施策と相関が高く、FRBの金利利下げ円高、利上げが円安につながってきた。ただし、貿易黒字だった時代は、需要のために結局円買いが発生していた。一方最近は、パンデミック後にFRBが大きく金利を上げており、かつ貿易赤字だったため円売りが加速してしまい、円安が進んでしまっている。
また、第一次所得収支が黒字でも、投資したお金の多くは海外で金融資産(保険など)として再投資されているため、日本に戻ってきていない。つまり、キャッシュフローでいうと円に戻ってきていない状態である。

このような背景の中で岸田政権が進めていた政策のひとつが、家計部門の「貯蓄から投資」への政策である。しかし投資先が円建てではなく外資建てになると、さらに円安が進むことになる。NISAなどによる外資投資も円安を誘発する一つの要因である。
とはいえ日本の家計部門は54%が預貯金であり、圧倒的に流動性がない、ここを動かすために将来は円建てに対する優遇策を考えることもひとつあるのではないか。

こういった中で日本は何ができるのか?
インバウンド収支はひとつ大きな施策だが、労働集約的な業務でもあり、人手不足のなかでメインにはならない。
また日本の対内直接投資はグローバルでみても非常に小さく、北朝鮮以下の水準。
円安はもう戻らないことを考えると、日本国内への外資からの投資誘致が大きなメリットになるのではないか。地政学的にも直近は友好国かどうかといった点が投資判断に大きくなっている。
また、投資をしてきている国はもはや欧米ではなくアジアが中心となってきている。アジアからの投資を、非製造業に対して行う、というのがひとつのキーポイントとなっている。

日本の将来をどうしても憂いでしまうような内容だったが、現実を把握しないと課題解決はできない。また、示唆されている対策が本当にベストかは分からない。とはいえとても勉強になった本だった。

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2025年01月04日

Posted by ブクログ

基礎知識がないとなかなかわかりづらいですが、何とか読み切りました。いいことも悪いことも選択するのは国民を意思だと言う事ですね。選挙行かないとまずいですね。日本の今ある倦怠感がなんとなく説明されてるような気がします。

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2024年12月16日

Posted by ブクログ

現在日本は経常収支黒字国

「新時代の赤字」=その他サービス収支赤字のこと。その中には「専門・経営コンサルティングサービス」も入っている

2023年時点でサービス収支全体で2兆9158億円の赤字。これは旅行収支における3兆6313億円からサービス収支の5兆9040億円を引いた数字。
2030年には約8兆円に拡大するとの試算。2021年の原油輸入実績は約6.8兆円

少子高齢化などの人口減少傾向にある世界ではイノベーションの停滞が起こりやすい。
「研究開発サービス」で劣後する国がデジタル関連収支で黒字を積み上げるのは難しい。

今まで貿易収支があってその次に過去に行った投資の成果としての第一次所得収支の動向が注目されてきた。
しかし今後はサービス収支の変化幅が非常に大きくなると思われるので、その動きも追うべき

CFベースでの経常収支でみると第一次所得収支黒字の4割しか(13.9兆円)円買いに繋がっていないという事実が見えてくる。
2022年に関して言えば貿易サービス収支赤字が21.1兆円のマイナス、また第二次所得収支は約2.5兆円の赤字だったため、CFベースでは(13.9−21.1−2.5)で9.7兆円の大幅な赤字だった疑いが強い

2019年ごろから日本の対外純資産残高の半分近くは直接投資で構成されている。
そのため売られたまま戻らぬ円が増え、円安の進行が進みやすい状況

2022年から2023年にかけて名目GDPは約560兆円から592兆円に増えたが、実質GDPは549兆円かは559兆円へプラス10兆円分の増分になっていて、残り22兆円なインフレによる上乗せであり、成長とは言えない。
特に個人消費に着目した場合、名目ベースでは11.2兆円伸びているが、このうちインフレによる上乗せは9.4兆円で実質ベースでは+1.9兆円しか増えていない。

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2024年07月31日

Posted by ブクログ

円の実需についてニュースやそこらのYouTube動画では知ることができなかった実態を知ることができた。

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2025年09月17日

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金融動向には疎いが、円安が日米金利差によらず続く可能性が高いこと、インフレに突入しているだろうことなど、肌感として納得できた。人口減少の中で何を強みとして国内投資を増やしていけるのか、なかなか答えは出そうに無いが、国として議論は始めていて、手をこまねいているわけではない、ということに少しホッとした。

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2025年08月13日

Posted by ブクログ

正確な記述を心がけているせいかやや留保や繰り返しが多いが、1年前に書かれた本であるにもかかわらずとても勉強になった。
①旅行業は労働制約があって頭打ち、
②企業が海外で稼いだお金は内部留保にカウントされてしまうが海外で再投資される場合が多い、
③以前は海外資産の多くが現金化しやすい金融資産だったが、最近は工場や現地企業の買収などが多いので、有事の円買いは起きない
政治家や一部の学者、評論家の主張は全体を見ていないことがよくわかる。

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2025年08月07日

Posted by ブクログ

経済の話は私には難しかったけど、日本の今後を考える上で良書だと思う。安くて治安のいい土地を売りに、海外企業の誘致などをどれだけあ進められるのか、アジアの中でももしかしたらそのうち一番下の経済成長の国になる恐れはあるなと感じでしまった。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

専門外では、細かい数字は難解であるが、円安の背景、厳しい日本の経済環境は、理解できる。しっかり心して対応する気持ちになる。

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2024年12月22日

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2024年83冊目。満足度★★★★☆

ドル円を中心とする為替レートの変動は企業も日本国民にとっても大きな関心事となっている

本書は、かつて、日本を苦しめてきた「円高」の再来などは「構造的」に起こりにくい状況になっていることを数々のデータを示して論証

昨今、海外への投資が増えている多くの個人投資家にとって、読んで損がないオススメの一冊

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2024年11月29日

Posted by ブクログ

経常収支は黒字でもキャッシュフローから見た円の実需はマイナス。インバウンドを打ち消して余りあるデジタル赤字も寄与。当面この流れは変わらない。貯蓄から投資への移行で家計までもが円売りに走る可能性が高い。これらが相まって長期的には円安基調が続く。
実に真っ当な結論で、誰も異論は無いように思える。原因を突き詰めれば人口動態だと思う。シュリンクすることが確実な市場に誰が投資しようとするだろうか。その意味でもう手遅れのように思われる。
この事実を踏まえて、今後我々日本人がどのような社会を選択するのかが問われている。外国企業の直接投資を処方箋として挙げていて、それで経済統計は持ち直すだろうが、当の日本国民がハッピーになるだろうか?外国企業に雇用される具体的な姿が思い浮かばない。少なくともジョブセキュリティはうんと下がる気がする。格差も広がるだろう。
このまま何も手を打たず円安が進んで日本が三流国家になったとして、それとどっちがマシなのか?
それぞれが具体的にどのような世界になるのか頭の良い人にシミュレーションで示して欲しい。進路を決めるのはそれからだと思う。

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2024年10月21日

Posted by ブクログ

円の売れる要素が、あまり見当たらないため、円安になりそうです。円が売れるように、産業構造を変えていかないといけませんね。金融面やサービス面での議論が多かったですか、農産物の輸出を頑張ってみるとどうなんでしょうか?

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2024年10月01日

Posted by ブクログ

今の円安の構造を、思い込みではなくデータや多面的な角度から考察している。

デジタル赤字以外にも外資系コンサル赤字なども存在し、それは、金利という要因だけではなく、根本的に今の日本の経済・社会状況に起因している。

為替要因として、インバウンド需要や、新NISAもたまに上げられるが、果たしてGDP対比で見た時にそれはどのくらいの割合なのか。冷静になって考えることができた。

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2024年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

貿易収支の赤字化を境に、円高の歴史が終わった。所得収支は蓄積されて円に戻らないから円高要因にならない。
「新時代の赤字」は米金利の低下では消えない。

国際収支の発展段階説では、成熟国は通貨高になるはずだが、新時代の赤字と、所得収支が戻らないことから赤字は消えない。
新時代の赤字とは、サービス収支の赤字のこと。
デジタル赤字、コンサルティングサービス、研究開発の赤字、知的財産権収支は黒字、著作権使用料はデジタル赤字とともに赤字。
保険、年金も積み上がると積立金の運用、再保険料が円安の一端となっている。
アイルランドは、デジタル貿易が大幅黒字=低法人税のため大企業の本社が置かれている。

研究開発投資も日本に残らなかった。
人口動態が高齢化することで社会のイノベーションが起きなくなっている。
シンガポールが子どもに補助金を支給しても出生率が戻らなかったように、出生率の増加に政府は無力。
イノベーションボックス税制の導入は世界的な動き。
同じ人口減少社会でも、韓国やスイスは貿易収支が悪くなっていない=研究開発を怠ったツケではないか。

旅行業も人手不足を考えると救世主にはなれない。インバウンドによって人手不足が加速=人件費の高騰=インフレの輸入。
デジタル収支はアメリカ、英国、EUの3強。通信コンピューター情報サービスで日本が弱い。

以前は円は逃避通貨だった。国難のとき円高になったが、今は国難になると円安になる=普通の通貨。安全資産、リスクオフの円買い、はもはやない。

家計部門も円売り=貯蓄から投資へ、海外投資信託が売れる。対外証券投資の半分が家計による投信買い。
すでに日本人は円安物価高になれている。
今後、NISAの拡充で、国内投資向け優遇策が出るかもしれない。英国のISAがその方針を発表した。

PPP(購買力平価)では円安は過剰になっている。どちらが訂正されるのか。円安=輸出数量増加、にならない。円安は株高を呼ぶ。

対内直接投資で変わるか。TSMCやコストコ、イケアなど。英語力の不足と行政手続きの煩雑さがネック。
スローバリゼーション=直接投資の分断化。耐久性のあるサプライチェーン作り=友好国回帰は日本に追い風になる。
対内直接投資は、外資の収益になるだけ。
アイルランドでおきたことは、GDPよりもGNIのほうが28%も小さい状態。国内の生産量は大きいが、居住者の所得合計は小さい、ということ。

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2025年01月09日

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