小野恭子のレビュー一覧
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基準値と呼ばれると、学者など賢い方々が様々な科学的根拠をもとに設定した値で守った方がよい値なのだろう、と思ってました。
ましてや、そもそも基準値が適切なものなのか?と疑問すら抱いたことがなかったです。
本書では、基準値がどのように定められているか具体例を示しながら、専門知識がなくとも何となくわかるように解説してくれています。
すると、苦難のすえ何とか絞り出した値で設定されていたり、安全面に偏って設定されていたり、と裏事情が様々あります。
確かに基準値を定め妥当性を説明する立場になったと考えると、説明根拠に頼りたいものが出てくることは想像できますので、美しくはないけど致し方ないというものがあるのだろうと感じました。
考えさせられた内容として、
リスクとは提示された物差しを踏まえて、各々が受け入れられるものなのか?と考えることが大切。基準値があるから、何も考えずに一喜一憂するのは必ずしも正しくない
と感じました。これは基準以外でも、様々なことで共通することで重要なことだと思います。世界をただ傍観せず、一歩踏み出して視野を広くするためのヒントになると思います。
最後に著書で紹介されていた言葉です。
Standards are devices to keep the lazy mind from thinking
基準というものは、考えるという行為を遠ざけてしまう格好の道具である
米国の疫学者であり、衛生工学者のウィリアム・セジウィック氏が述べたもの -
Posted by ブクログ
仕事で基準値をよく使っていたので読んでみた。
ド文系なので計算式とか全然頭入ってこないこともあったけど、どういう考えで作られるかがよくわかった。
天才たちがすんごい緻密にやってるかと思いきや、
ざっくり100掛け(でもそれなりに考えられた10×10)
みたいなこともしてることにも驚いた。
定量的に評価できるものって、
(基準値つくるのには大変な苦労もあるだろうけど)
基準値と比較できて判断が楽になるけど
問題は未知の分野だよなあって
(こんなアホそうな感想しかもてなくて反省)
一オリンピックの性別判断とトライアスロン水質のところが
特におもしろく読んだ
数値的に問題ないけど嫌なんよっていうことが
昆虫食をはじめとして結構ある ということも
この本のおかげで考えることができた
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Posted by ブクログ
基準値がどのようにして決まったのか、基準値による線引きの意味するところはなんなのかについて、様々な事例を使って説明がなされ興味深い内容でした。定番の放射線、原子力発電所、新型コロナの基準値に加え、男と女の基準値、トライアスロンの水質の基準値、コオロギ食の基準値など、なじみのない分野もあり、それぞれ丁寧に解説されているので面白く読んだ。そして、11章の「AIと個人情報の基準値」は、特に興味を持った内容であった。新しい技術、未知のリスクにどう向き合うか、参考になる。開発者あるいは利用者が、みずから線引きをすることによって、リスクがないところを示し、前に進んでいくというアプローチが示されている。
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Posted by ブクログ
安全のために設けられた基準値。科学的なようでいて実は根拠があいまいなものや複数の基準が混在しているものもある。普段耳にしつつもあまり気にしない基準値設定の謎に迫る一冊。
お酒は二十歳になってから、優先席付近では携帯電話の電源をお切りください、消費期限と賞味期限など実は身近な基準値。安全はどのように数値化されたのか、そもそも安全とは何か。ゼロリスクと許容できるリスクなど。
10万人に1人がガンにかかって、死ぬレベル
10年連続で年末ジャンボ宝くじを買い続け一等が1回出る確率
実はこの二つは同じ程度だという。
数字のマジック、人間の心理、認知についても分かりやすい例が多く示されている。
正に「科学をあなたのポケットに」のキャッチフレーズに相応しい良著。 -
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放射能汚染物質やPM2.5等タイムリーな話題をからめつつ、各種基準値の設定の背景等を説明。結構マニアックではあるが、自分は「やむをえない点は多いが、結構アバウトなところ多いな」という感想を持つ。驚くのは多くの規制値、規格が海外の臨床結果なり、実験結果なりのそのままパクリであること。あきらかに基準として使用不能なものにもそのまま流用していることがあるのには驚く。検証には10年単位の地道なデータ集めと分析が必要なのは確かだろうが、それこそ国税を持ってしっかり実施してほしい、と読後思った。環境関連ばかりではなく、JISなども多くはIEC、ASME等のまるごとコピーというのが結構ある点からも、日本は標準、規格設定が得意ではない国なのかも。
しかし、色々勉強になった。根拠を求めてあまりにマニアックな追求をする必要はないと思うが、視点が大きく変わる場合があることを今回知ったので、今後、ある指針が出たときに、その根拠を問うてみたいところ。 -
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4人の専門家がさまざまな基準値について、その根拠や成り立ちを解説した本。基準値というものについては、それなりの根拠はあるだろうと漠然と思っていたものの、その背景や考え方はわかっていなかったので、勉強になった。
特に以下の内容が興味深かった。
・オリンピックにおける性別確認。「テストステロン・ルール」そのものを知らなかったが、ロンドンオリンピックで採用、リオデジャネイロオリンピックでは適用停止、東京オリンピックで復活、パリオリンピックでは各競技団体が個別に設定、と混迷を極めている。
・新型コロナ下での「ソーシャルディスタンス」も「1m、15分ルール」。当初専門家が経験を頼りに決めたものに、後から科学的根拠が与えられた。
・原子力発電所の「リスク許容基準」。「何を守るか」をもとに発生確率の議論を行うべきだが「守りたいこと」の議論がない、と著者は述べているが、まさにその通りだと思った。
【目次】
第1章 男と女の基準値
テストステロンルールの迷走
第2章 新型コロナの基準値(1)
「距離と時間」の狂騒曲
第3章 新型コロナの基準値(2)
空気感染とはなんだったのか
第4章 トライアスロンと水浴の基準値
セーヌ川だけが汚いのか
第5章 放射線の基準値
誰が処理水と除去土壌を受け入れるのか
第6章 原子力発電所の基準値
どのくらい安全なら安全なのか
第7章 治水と防潮堤の基準値
科学だけでは決められない
第8章 がん検診の基準値
受けるべきか、受けざるべきか
第9章 PFASの基準値
世界から追われる嫌われ者
第10章 新しい「食」の基準値
コオロギは本当に安全なのか
第11章 AIと個人情報の基準値
自分で基準をつくっていく
コラム
1 先発投手の100球 2 花火大会の保安距離 3 学校の天井の高さ 4 水質環境基準のなりたち5 妊婦はなぜ温泉に入れなかったのか 6 災害における「72時間」と「6ヵ月」 7 暑さと寒さはどっちが危険か 8 どこからがカスハラ? 9 安全係数「それ100で割っちゃうの?」 10 激辛食品のおかしな基準 -
購入済み
色々な基準値の成り立ちや実情を説明しています。文系でも十分に理解できると思います。
エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(EBPM)と言われるようになり、統計値を根拠に説明されることが増えましたが、この本は統計値の指標の根拠を理解した上でないと、誤った決断になるとのことを知らしめてくれると思います。 -
Posted by ブクログ
リスク管理の3つの原則
・ゼロリスクに基づく基準値:その物質が一定量までは健康を害さない閾値がある場合
・受け入れられるリスクに基づく方法:生涯の発がん確率が10万人に1人以下などと定める方法。大気環境基準、水道水質基準などで用いられている。
・費用との兼ね合いで決める方法
食品中の一般生菌数が1gあたり1000万~1億個に達すると、味や見た目から腐敗が認められる。弁当や総菜は、加熱食品では1g当たりの上限値が10万個だが、非加熱食品では100万個まで認められている。保存できる期間に安全係数を掛けて消費期限や賞味期限が決められる。安全係数は0.7としている場合が多いが、農水省は2008年に食品ロスを削減する観点から、0.8以上を設定することを勧告した。日本では、賞味期限までの期間を製造業者、販売業者、消費者が3分の1ずつ分け合うという商慣習があり、これが廃棄される食品を増やす原因にもなっている。
アメリカでは、食品中の発がん性物質がどの程度までなら安全とみなすかについて何度も裁判が繰り返されるうちに、生涯でがんが生じる割合として受け入れられるレベルは、1万人に1人から100万人に1人の範囲に落ち着いた。がんの原因の3分の1は、普通の食品に天然に含まれている物質。
1993年に施行された水道水質基準値では、閾値がない発がん性物質については、WHOの飲料水質ガイドラインにならって、生涯発がん確率が10万人に1人のレベルで設定された。閾値があるホルムアルデヒド等では、動物実験で毒性影響がみられなかった量(NOAEL)に種差、人間の個人差それぞれに10倍ずつ合計100倍の不確実性係数を用いて、基準値が設定される。
化学物質の基準値には、環境基準型の基準値と残留農薬型の基準値の2種類があった。残留農薬型の基準値は、農薬のラベルに記された使用基準を守って使用していれば超えない範囲でできる限り低く設定される。この基準値を超えた場合、農家が農薬を適正に使用していないことを意味するが、健康リスクが発生することを意味するものではなかった。2003年の食品安全基本法制定時に、農業規範としての基準値が安全かどうかの基準値として統一されてしまった。
日本の大気汚染対策の対象は、SO2、NO2、PMと変遷した。1980年代までに、疾病の発症は工場排煙に起因するSO2を原因とすることが認められていた。1995年の西淀川公害訴訟判決によって、NO2と道路沿線住民の健康被害との因果関係認められたが、2000年の尼崎公害訴訟判決で否定され、ディーゼル排気微粒子などのPMによる健康被害が認められた。
生態系保全の視点からの化学物質の規制は、2002年のOECDによる勧告を受けて水質目標が導入された。