【感想・ネタバレ】基準値のからくり 安全はこうして数字になったのレビュー

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Posted by ブクログ 2021年10月18日

安全のために設けられた基準値。科学的なようでいて実は根拠があいまいなものや複数の基準が混在しているものもある。普段耳にしつつもあまり気にしない基準値設定の謎に迫る一冊。

お酒は二十歳になってから、優先席付近では携帯電話の電源をお切りください、消費期限と賞味期限など実は身近な基準値。安全はどのように...続きを読む数値化されたのか、そもそも安全とは何か。ゼロリスクと許容できるリスクなど。

10万人に1人がガンにかかって、死ぬレベル
10年連続で年末ジャンボ宝くじを買い続け一等が1回出る確率

実はこの二つは同じ程度だという。
数字のマジック、人間の心理、認知についても分かりやすい例が多く示されている。

正に「科学をあなたのポケットに」のキャッチフレーズに相応しい良著。

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Posted by ブクログ 2016年10月30日

基準値は同じ分野でもいろんな基準がある
基準値の根拠が科学的な安全性とは限らない
基準値の根拠は主に安全性か受け入れられるリスクかコスト面から決められる
基準値の根拠はなし崩し的に適当に決めている場合が存在する
基準値を越えた越えないだけで一喜一憂するのは危険

基準値を絶対視すると思考停止に陥る危...続きを読む険があるというのは確かにそうだと思った
基準値の用途やその根拠まで気に掛けるよう注意していきたい
といっても面倒なんだよな・・・

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Posted by ブクログ 2015年05月05日

「基準値マニア」の著者が語る、基準値にまつわるあれやこれや。本書では、日本では飲酒できる年齢が20歳なのはなぜ?健康に害を及ぼす化学物質の基準値の決め方とは?…様々なトピックを科学的な知見と基準値の制定に関する経緯などに展開しながら説明していく。この手の本は、読んでみると同じことに繰り返しが多く、途...続きを読む中で飽きてしまうことが多かったが、本書に限っては一度読み出すと止まらない!文系・理系にかかわらず、特に大学1年生には読んで欲しい本。おすすめです。

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Posted by ブクログ 2014年07月23日

 放射能汚染物質やPM2.5等タイムリーな話題をからめつつ、各種基準値の設定の背景等を説明。結構マニアックではあるが、自分は「やむをえない点は多いが、結構アバウトなところ多いな」という感想を持つ。驚くのは多くの規制値、規格が海外の臨床結果なり、実験結果なりのそのままパクリであること。あきらかに基準と...続きを読むして使用不能なものにもそのまま流用していることがあるのには驚く。検証には10年単位の地道なデータ集めと分析が必要なのは確かだろうが、それこそ国税を持ってしっかり実施してほしい、と読後思った。環境関連ばかりではなく、JISなども多くはIEC、ASME等のまるごとコピーというのが結構ある点からも、日本は標準、規格設定が得意ではない国なのかも。
 しかし、色々勉強になった。根拠を求めてあまりにマニアックな追求をする必要はないと思うが、視点が大きく変わる場合があることを今回知ったので、今後、ある指針が出たときに、その根拠を問うてみたいところ。

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Posted by ブクログ 2022年11月23日

リスク管理の3つの原則
・ゼロリスクに基づく基準値:その物質が一定量までは健康を害さない閾値がある場合
・受け入れられるリスクに基づく方法:生涯の発がん確率が10万人に1人以下などと定める方法。大気環境基準、水道水質基準などで用いられている。
・費用との兼ね合いで決める方法

食品中の一般生菌数が1...続きを読むgあたり1000万~1億個に達すると、味や見た目から腐敗が認められる。弁当や総菜は、加熱食品では1g当たりの上限値が10万個だが、非加熱食品では100万個まで認められている。保存できる期間に安全係数を掛けて消費期限や賞味期限が決められる。安全係数は0.7としている場合が多いが、農水省は2008年に食品ロスを削減する観点から、0.8以上を設定することを勧告した。日本では、賞味期限までの期間を製造業者、販売業者、消費者が3分の1ずつ分け合うという商慣習があり、これが廃棄される食品を増やす原因にもなっている。

アメリカでは、食品中の発がん性物質がどの程度までなら安全とみなすかについて何度も裁判が繰り返されるうちに、生涯でがんが生じる割合として受け入れられるレベルは、1万人に1人から100万人に1人の範囲に落ち着いた。がんの原因の3分の1は、普通の食品に天然に含まれている物質。

1993年に施行された水道水質基準値では、閾値がない発がん性物質については、WHOの飲料水質ガイドラインにならって、生涯発がん確率が10万人に1人のレベルで設定された。閾値があるホルムアルデヒド等では、動物実験で毒性影響がみられなかった量(NOAEL)に種差、人間の個人差それぞれに10倍ずつ合計100倍の不確実性係数を用いて、基準値が設定される。

化学物質の基準値には、環境基準型の基準値と残留農薬型の基準値の2種類があった。残留農薬型の基準値は、農薬のラベルに記された使用基準を守って使用していれば超えない範囲でできる限り低く設定される。この基準値を超えた場合、農家が農薬を適正に使用していないことを意味するが、健康リスクが発生することを意味するものではなかった。2003年の食品安全基本法制定時に、農業規範としての基準値が安全かどうかの基準値として統一されてしまった。

日本の大気汚染対策の対象は、SO2、NO2、PMと変遷した。1980年代までに、疾病の発症は工場排煙に起因するSO2を原因とすることが認められていた。1995年の西淀川公害訴訟判決によって、NO2と道路沿線住民の健康被害との因果関係認められたが、2000年の尼崎公害訴訟判決で否定され、ディーゼル排気微粒子などのPMによる健康被害が認められた。

生態系保全の視点からの化学物質の規制は、2002年のOECDによる勧告を受けて水質目標が導入された。

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Posted by ブクログ 2021年11月07日

仕事関係で読んでみたいと思い、購入。基準値の持つ4つの特徴【①従来の科学だけでは決まらない②数字を使いまわしがち③改変されにくい④法的な意味は様々】は、仕事でぼんやり思っていたことを綺麗に言語化してくれている。基準値の決定において、特に日本では、受け入れられるリスクレベルはどの程度か(=なぜその基準...続きを読む値なのか、why)がなかなか議論されず、なんとなくで決めた基準値をどのように守るか(=how)が重要視される。この主張は自分の仕事にも当てはまる面がある。なぜ?という思考を持つよう意識したい。

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Posted by ブクログ 2015年02月07日

良書。面白い。
なぜ、お酒は20才からと決まったのか。元は、明治まで遡り、根拠は曖昧。
安全とは、受け入れられないリスクのないこと。
根拠の曖昧なものも多いが、実績があれば、信じていいのではないか。一度決まるとなかなか変更にならないのも基準値の特徴だが。

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Posted by ブクログ 2014年12月23日

基準値の決め方が千差万別であることが理解できたが、それにしても人為的な値であることは間違いない.その数値だけがマスコミで飛び回ることに注意する必要があるのを痛感した.原発事故にからむ避難の基準の追加被曝線量20 mSv/年と除染の目標値1 mSv/年の開きを説明した部分(p177-178)は興味を持...続きを読むって読んだ.

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Posted by ブクログ 2018年10月19日

帯にある「全国民必読」は言い過ぎかもしれない。だが、基準値という「人を思考停止させる指標」に単純にだまされないように、読んでおくことは有益と思う。
基準値は、安全と不安全を、生と死を、安心と不信を、一本の線で峻別するものではない。この本にあるように、その決め方には、さまざまな紛れ、仮定、割り切りがあ...続きを読むる。可能な限り合理的に設けられている場合は多いはずだが、100%信頼できるかどうかはわからない。
そんな、基準値に寄りかかって無駄な努力をしたり、自分ではない誰かに判断と責任を押しつけないようにしなければならない。

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Posted by ブクログ 2014年09月19日

私たちの身の回りにはいろいろな基準値があります。食品の消費期限や、大気汚染の基準、そして放射性物質による被爆基準など。でもこれらの基準が守られていても「本当に安全なの?」と疑問に思うことはよくありますよね。福島第一原発事故の後、枝野官房長官(当時)が「ただちに健康に影響はありません」とよく言ってまし...続きを読むたが、「じゃあ長期的にはどうやねん」と疑問に思った方も多いのでは。
本書は様々な基準値がどのような根拠で決定され(非科学的な決め方が多くて驚きます)、それを私たちがいかに受け止めるべきかの指針を与えてくれます。「基準というのは 考えるという行為を遠ざけてしまう道具である」という本書にある言葉どおり、単に基準以下かどうかという極論に陥らず、「○○基準の何倍!」というような新聞等の見出しに必要以上に煽られることのないように心がけたいですね。
「必要以上に危険を煽るつもりもないし、安全を強調するつもりもない。基準値のありのままの姿を知ることで身の回りのリスクの大きさを知ってほしい。リスクを知らないまま不安になるよりは、知っている方が安心だ」という著者の姿勢には強く共感できます。

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Posted by ブクログ 2014年09月12日

タイトルに偽りなし。というところでしょうか。以前に気になっていた「こんにゃく畑ゼリー」の話も載ってて、なぜそういうことになるのかとても腑に落ちる説明がされていました。
ある意味、「基準値」ってあくまで目安でしかないのだな~ということと、結局は自分でどう判断をするのか。自分がどういう知識を持つべきなの...続きを読むかということを考えさせられる内容でもありました。

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Posted by ブクログ 2014年08月18日

国民の安全を守る基準値。食品,環境,事故の各分野で定められる基準値のしくみを詳しく解説。「基準値の〇倍!」という叫びに何の意味もないことが分かるし,およそ基準値というものが科学のようでいて科学だけでは決まらない「レギュラトリーサイエンス」であることも丁寧に教えてくれる。大筋・大枠は科学でも,基準値を...続きを読む決める際の数値の使い回し,リスクだけでなく達成可能性をも加味する必要性,決めた後になかなか変更できないという硬直性などの実例を見ると,科学が社会を律するというイメージは打ち砕かれ,まさに社会と科学の相互作用でやっているんだなと感じる。こういうことは社会の側にいる我々市民も,前提として共有しておかなくてはならないはず。お薦め本です。

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Posted by ブクログ 2022年10月04日

面白かったし、結構怖い話。
いろんな基準値って、実は必ずしも「化学的に」きまってるわけやなくって、達成できそうな数字だとか、ぼくはこう思うなあ、とか、そういうことで決まってしまう。
オマケに一旦決まると思考停止になるし、少なくとも日本では変更するのむっちゃ大変そうやし。

理由って、なんつか、なんか...続きを読むあった時に責められないように、じゃないかという気がしてしょうがない。
日本人の、無謬信仰と、腐ったマスコミは、怖いからな。

ここの基準値を決めるときの細かい数字の記載もあったが、その辺読み飛ばしても十分了解できる。

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Posted by ブクログ 2018年12月15日

いろいろな場面で登場する「基準値」と言うモノ。
様々な基準値がありますが、そのいくつかについて決められれるまでの経緯やら、その意味やらを掘り下げて解説されている一冊です。

意外と、いい加減な基準もあったり、時代にそぐわないものもあったりと、基準値の種類によってずいぶん変わるものなのだなぁと。

1...続きを読む7ページと106ページに登場する、米国の疫学者であり衛生工学者のウィリアム・セジウィック先生の
" Standards are devices to keep the lazy mind frm thinking. "
(基準と言うものは、考えるという行為を遠ざけてしまう格好の道具である)
のフレーズが印象に残りました。

付箋は20枚付きました。

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Posted by ブクログ 2018年11月25日

安全とは受け入れられないリスクのないこと

基準というものは、考えるという行為を遠ざけさせてしまう格好の道具である(ウィリアム・セジウィック)

暫定基準値の根拠となった原子力安全委員会の指標値は、一度の放出しか想定していない

基準値は数年ごとに見直さないと、現状と乖離する可能性がある

レギュラ...続きを読むトリーサイエンテイストが日本には足りていない

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Posted by ブクログ 2015年03月14日

 リスク評価とか、それをどう社会に導入するのか、とかについて、基準値を足がかりにいろんな具体例にそって解説した本。
 基準値の決め方(あるいはリスクの評価方法)というのは対象によって実にいろいろで、何か一つ決まったやり方というものがあるわけではない。一つの対象についても、立場によっていろんな評価の仕...続きを読む方が提案できるんだろう。そういう意味で、絶対的な真実を追求する科学とは違うものであり、わざわざ「レギュラトリーサイエンス」と名付けていわゆる科学とは区別したりする。人類の歴史においては比較的新しい分野なんだろう。特に、分析技術の進展によってそれまで測れなかったような微量成分の定量が可能になり、リスクの有無を分ける閾値が存在しないケースがあることが明らかになって、我々は「受容可能なリスクはどこまでなのか」を決めなければならなくなった(ここら辺の歴史についてもふれられている)。つまり、基準値は、リスクの有無を分けるものではなくて、そのリスクが受容可能な範囲にあるかどうかを分けるものとなったのである。
 このリスクに関する新しい考え方は、まだまだ一般にはなじみがない。それゆえに、基準値に関する誤解も広く見られる。しかしながら「受容可能なリスクがどこまでなのか」というのは科学では決められない、人々の合意として社会的に決めるよりほかに決め方が存在しない問題だ。ゆえに、リスクに関する正しい認識が人々に広く伝えられることは、どうしても必要なことなのだと思う。

 著者たちは基準値オタクなのだそうで、盛り上がるポイントがいまいちシロウトにはわかり難かったりした。あと、網羅的な話題が多く、俯瞰的な話がもっと読みたいとも思った。でも、それはまだまだこの分野がこなれていないためなのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2014年08月16日

食品に限らず、行政が設定するいろんな基準値について、その根拠と考え方が説明されている。

一番気になるのは食品に関する放射性物質に関する基準値。他の記載はなんとなく分かった気になれるが、この部分だけはうまく理解出来ない。いったいどう読めば自分なりに安全かどうかを判断できるのか、自分なりにどう折り合い...続きを読むをつけることができるのか、自分の考えを持つことが出来ない。
読み手の理解力の問題も多分にあるだろうが、基準そのものに想定要素が多すぎて、私達が考えているほど確定的に決めることが出来ないからだろう。

著者は現在流通している食品の摂取は許容できるリスクと考えているようだが、それは事故以来放射性物質が放出されていないことが前提のようだ。しかし、どうやらF1からは事故以来ずっと現在までもいろんな形で放射性物質が放出され続いている。それでも、許容できるリスクと考えられるのか?疑問に思える。

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