セックス依存症で誰彼構わず口説き落とすトラブルメーカーの主人公セバスチャン。表紙や帯の印象から優秀な変人捜査官という感じでもっとユーモア色が強いのかと思っていましたが、考えていたよりも真面目な雰囲気でした。
彼が背負うものが重く、非常識な言動にもコミカルな要素は希薄でしんみりしたりイラッとしたり。
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とはいえセバスチャンが捜査に参加するあたりからは軽快になっていきます。ごくごく個人的な理由で参加した事件にも、口ではどうでもいいと言いつつのめりこんでいき、生き生きと嫌味の言い合いをしているのは楽しい。
他の捜査官たちも負けず劣らずの個性派揃いです。
事件は心臓をえぐり取られた少年の死体の発見という猟奇的なものですが、人間ドラマの方が充実しており事件関係者のみならず捜査陣の方にも様々な問題が浮き上がっていき混迷を極めます。
着実に事件が真相に向けて進展していくにも関わらず、被害者少年の人物像が最後の最後までいまいちハッキリしないというのが謎めいていておもしろかったです。
周囲の人物にスポットを当てていき真相を覆い隠していくのも丁寧。
最終的に少年に深く注目した時に真相に繋がるというのは心理捜査官の面目躍如でした。
そして最後のオチにはビックリ。やりたい放題だったセバスチャンの唖然とした顔が目に浮かぶようでニヤリとしました。
私情で捜査に影響を与えてしまう警察の面々はちょっと鬱陶しかったですが、新たな展開を迎えてセバスチャンの傍若無人ぶりや捜査チームがどうなるのか、シリーズのようなので今後も注目です。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
個人的事情に左右され中途半端に解決を急ぐ捜査官たちと、事件に興味がなかったにも関わらず真相を掴むセバスチャンという対比が良い。
校長や母親など怪しい人物が前面に出ており、セバスチャンの悪癖もあって事件の要である女教師が上手く隠れていました。
「殺人者ではない男」という書き方を最初からしているのですが、これのせいで殺人犯のサプライズが弱まったように感じます。
無味乾燥な生活をしていたセバスチャンが、事件を通して人生の刺激を感じていき、最終的に犯人の少年に対して真摯に向き合った姿にはぐっときました。
ハラルドソンはあれだけ引っ張ったのだから最後の最後に大活躍があるのかと期待しましたが、撃たれただけだったのにはちょっと残念。