沢村浩輔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりの再読。
ミステリーの醍醐味は一見関係ないように見える物事が実は意外なところで繋がっていたり、ありえないようなことがサラリと行われていたり、それが後に分かって驚くと同時に腑に落ちる快感が味わえることだと個人的には思っている。
ただこの『ありえない』または意外性というものと、『そんなバカな』『それはやり過ぎだろう』というボーダーラインを越えないように表現するかというのは、これはもう作家さんの腕によると思う。
この作品も扱いによってはこのやりすぎ感、荒唐無稽な感じを『ありえないけれど納得出来る』というところに収めることが出来たのではないかと思うのだけど、読み終えるとやっぱり荒唐無稽な感じの印象が強く残ってしまった。
特にこれまでの色んな事件を繋げるところも強引な印象だったし、ちょっと残念な感じ。
ただ様々な事件に出会う人間は同じでも、謎解きをするのは毎回違う人間というのは面白い趣向だなと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ総合評価
沢村浩輔のデビュー作を含む連作短編集。大学生の佐倉と高瀬が探偵役となる5編(「葡萄荘のミラージュ」は前後編)と、作中作『眠り姫』を売る男、そしてエピローグから成る。
各短編は独立した日常の謎・小事件として読めるが、エピローグで全作品に共通する「人魚」という真相が明かされ、それまで何気なく描かれていた出来事や伏線が一本につながる構成になっている。
個々の短編は「謎は魅力的だが真相は平凡」という印象が強い。一方で、人魚の存在へ収束する連作構成には意外性があり、作品全体の雰囲気もよい。ただ、伏線の回収は「見事」というより、やや後付け・こじつけに感じる部分もあった。
世界観は好きだが、本格ミステリとしてはもう一歩。総合では★3。
夜の床屋
シリーズの表題作。晩秋の山中で道に迷った佐倉と高瀬は、無人駅で一夜を明かそうとする。すると閉まっていた床屋が夜11時頃から営業を始める。主人は「昼間は閉店しているが、予約した常連だけ夜に散髪している」と説明する。
翌日になって冷静に思い返すと、その説明と店内の様子に矛盾があることに気付き、新聞記者に話した結果、床屋の主人と店員は誘拐犯だったことが判明する。
「なぜ夜だけ営業する床屋なのか」という導入の謎は非常に魅力的。ただ、真相自体は比較的平凡。一方、店員の女性の強い香水が、終盤の連作全体につながる重要な伏線になっている。
空飛ぶ絨毯
佐倉は、イタリアへ留学する友人・八木美紀から二か月前の出来事を聞く。
自宅に泥棒が入り、絨毯だけ盗まれたという奇妙な事件だった。さらに、美紀は小学生時代、霧の濃い夜に海辺で出会った少年の思い出を語る。
真相は、その少年が成長してストーカーとなり、美紀宅へ侵入していたというもの。友人の後藤がその事実に気付き、事故の末ストーカーを死なせたと思い込み、血痕の付いた絨毯だけ持ち去った。ところが最後に、そのストーカーは生きていたことが判明する。
このストーカーや「霧の夜に海から何かが上がってくる」という噂が、終盤の人魚の伏線になっている。
ドッペルゲンガーを捜しにいこう
佐倉は、小学生たちからドッペルゲンガー探しに誘われ、街外れの廃工場へ向かう。
ドッペルゲンガーは本当に存在するのか、それとも子供たちのいたずらなのか。
真相は、小学生の一人が、離れて暮らす父親に会いたい一心で騒ぎを起こしていたというもの。
ミステリとしては小品だが、廃工場という場所が後の人魚の設定につながる伏線になっている。
葡萄荘のミラージュⅠ・Ⅱ
初代当主の遺言により、外観・内装・調度品まで一切変えられない洋館「葡萄荘」を巡る物語。佐倉と高瀬は友人に誘われ宝探しに向かうが、友人は既にヨーロッパへ旅立っていた。
二人は宝探しに成功し、「ミラージュ」という香水を発見する。友人は香水のレシピを求めてヨーロッパへ渡ったのではないかと推理する。
その後、友人から「パーカー博士に『眠り姫はなぜ目覚めたのか』と聞いてほしい」と頼まれ、博士を訪ねる。
博士は、写真に写る女性こそ本当の宝だと語り、『眠り姫』を売る男を読むよう勧める。
連作全体の核心へつながる橋渡しとなる重要な一編
『眠り姫』を売る男
スコットランドの監獄を舞台にした作中作。元美術商クィンは共同経営者殺害の容疑を装い、殺し屋から逃れるため自ら監獄へ入る。
そこで密室同然の殺人事件が起こり、被害者は「女がいた」と言い残す。
女など出入りできない監獄で、どうやって殺人が行われたのか。
真相は、女の正体は人魚であり、霧に紛れて現れたという幻想的なものだった。
クィンは眠っている人魚を売買する美術商だったことも明かされる。
SF・幻想小説色が強く、本格ミステリとして読むと好みは分かれる。
エピローグ
ここで連作全体の真相が明かされる。この世界には人魚が実在していた。
人魚は人間社会で暮らすため、消臭剤を香水「ミラージュ」として販売していた。
ローランド(=囚人ダン)は人魚と協力していたが、反対派の人魚に海へ沈められる。彼が遺した財産とは、「眠り姫」として眠る人魚だった。
パーカー博士は、男の人魚が絶えた以上、眠り続ける理由はなくなったと推理する。
ここから佐倉は、パーカー博士=人魚の肉を食べて不老となったパットではないか。
八木美紀を待ち続けた男も人魚の肉を食べたのではないか。
廃工場は人魚由来の成分を扱っていたのではないか。
夜の床屋の店員の香水はミラージュだったのではないか。
と、それまでの短編を一つずつ結び付けていく。
最後は、佐倉がその仮説を確かめるため、「ミラージュ」の香りを嗅ごうとしたところで物語は幕を閉じる。