戸板康二のレビュー一覧
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・若い頃の戸板康二を私は知らない。推理小説を書いたり、ちよつといい話の類を書いたりした人だが、本業は演劇評論家だと いふことぐらゐしか知らない。戸板康二「丸本歌舞伎」(講 談社文芸文庫)もそこに連なる業績で、といふより、ほとんどその出発点にくる業績であるらし い。古い。初版は昭和24年である。言及される舞台の多くは戦前のものである。今も同じ名前で活躍してゐる役者など存在するはずがない。 完全に代替はりしていゐる。更に、戸板氏も実際の舞台を知らないそれ以前の役者、例へば五代目菊五郎、に言及されることもある。半端では ない。私などからすれば完全に別世界の舞台である。しかし、これは名著であると思ふ。
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おもしろい
ミステリとしては解決部分で読者に提示されていない手がかりが現れるなど、謎解きを主眼としてみた場合はがっかりするかもしれない
しかし、それは読み手が読み方を間違っているだけで、不可解な事件が起き、それを雅楽が解決するという一連のストーリーを楽しむという読み方をしていけばものすごく面白くなっていく
読んでいて思ったのは半七捕物帳によく似ているなということ
実際作者もある程度意識していたようで、読者のあまりなじみのない世界でおきる様々な魅力的な謎を解決していくというあたりに同じ魅力がある
まだまだ作品はたくさんあるようなので読むのが楽しみ
読んでいないかたは是非 -
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全集最終巻には、長編2編と探偵小説にまつわるエッセイを収める。
表題作は、1959年から1960年にかけて東京新聞に連載された。全集第1巻の最後に収められた「文士劇と蝿の話」に、浅尾当太郎の悲恋への言及があり、それを書いた話があるの? と思っていたら、「松風の記憶」がそれだった。先に解題で、最初に単行本化されたとき「鷺娘殺人事件」の副題がついたということを読んでしまったため、いわばゼロ時間へ向かって読むこととなった。"鷺娘"が殺されるのは、全体の85%を過ぎたところ。そこまで、登場人物の動向と心情を丁寧に記しているのだが、それだけでも面白いのだが、いつどうやって殺されるのか -
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中村雅楽(がらく)ものを年代順に編集(長編は別立て)。第1巻は1958年から1960年にかけて発表された、第1作「車引殺人事件」や直木賞受賞作の表題作を含む、18作を収める。
雅楽ものは昔結構読んだが、単行本だったと思うので、立風書房版だったのか? 中村勘三郎が雅楽を演じた土ワイの2時間ドラマも好きだった。「奈落殺人事件」の、メイントリックではなくメイン錯覚はずっと覚えていたのだが、今回読んでいるうちに、ある人物が土ワイで淡島千景だったことを思い出し、それで犯人も確信(淡島千景が出ていて何でもない役というのはありえないでしょ)。いやあ懐かしい。再放送を見たいものだ。
TVが出たて、新幹線はまだ -
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戸板康二の短篇ミステリ作品集『團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉』を読みました。
戸板康二の作品は、昨年12月に読んだアンソロジー作品『鉄ミス倶楽部 東海道新幹線50』に収録されていた『列車電話』以来なので1年振りですね。
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ミステリ史に燦然と輝く老歌舞伎役者・中村雅楽の名推理
第1巻は、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編
江戸川乱歩に見いだされた「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎俳優・中村雅楽の推理譚。
美しい立女形の行方を突きとめる「立女形失踪事件」、8代目市川團十郎自刃の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹 -
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ミステリ好きかつ歌舞伎好きだと3倍ぐらい面白い、雅楽全集。探偵役の雅楽はじめ、架空の歌舞伎役者を創作されてますが、このモデルはあの役者かなーと妄想する面白さ、毎回出てくる歌舞伎の演目の解説や小ネタ、役者心得のような蘊蓄、そして推理小説の短編のお手本のように鮮やかに展開される謎解き。これで3倍。戸板さんのこの作品は、ドロドロしたところがないのでどれもサラリと読ませますが、かといって物足りない訳でもなく、本当に「鮮やか」としか言いようのない完成度。収録された18篇どれも面白いです。
(それと、毎度の事ですが巽さんの解説は素晴らしいですね……。日常の謎と絡めてきてますが、今の時代だと、お仕事ミステリ -
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歌舞伎評論で有名な戸板康二氏が推理小説を書いていたとは全然知らなかった。しかも直木賞受賞(1959年)作。
歌舞伎役者の中村雅楽が探偵役となって事件を推理・解決していくのだが、事件の舞台が劇場であったり、芝居や番組の構成を利用して事件が起こされたりし、芝居好きには楽しめる内容になっている。
佐藤賢一や東野圭吾の作品を読んだ時にも感じたことだが、得意分野・専門分野のある人が書いた話は土台や端々の設定がしっかりしていて面白いな~と思う。
今読むと、随所に時代を感じる描写が出てくるのも面白い。例えば、犯行現場に残されたボタンから「犯人はシャツのボタンを付け替えたかも」という推理になるのだが、「自 -
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とうとう雅楽全集も読み納め。短篇最終巻で、ますます「ちょっといい話」化している。
著者を反映しているという聞き手役の竹野が雅楽の話をきいて、いい話だとしきりに感心するのだが、考えてみれば雅楽の話も戸板が考えているわけで、自分で自分の話をべた褒めしてるってことよね。と思うとちょっとしらける。
といっても、歌舞伎の世界のならわしや、役者たちの微妙な心のあやと芸の話はとってもおもしろい。
「なつかしい旧悪」は、こわーい話であるとともに、嫌い合って別れたわけではない男女の互いの思い遣りと雅楽の羞らいがよい。
「弁当の照焼」も、やはり好きだけど別れた相手への互いの長~い思いの話。
「写真の若武者」は、喜 -
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76年から83年発表の短篇のほか、60年代末に書かれた「かんざしの紋」「淀君の謎」を収録。
「淀君の謎」は謎解きのポイントが空想の産物なので、歴史推理と思って読むと拍子抜け。こういう趣向で芝居を考えてみました、てなもので、しかも、ホントにそうだったらワクワクするのに~、みたいなセンスオブワンダーもない。
だんだん犯罪の話ではなくなっているのだが、日常の謎ものというより、それこそ戸板康二が週刊誌に書いていたちょっといい話、という趣きになっている。雅楽を登場させる必然性もないのかも? という気もするが、古老が語るある世界、ということで、「半七捕物張」の正統な後継だと改めて実感。
養子か実子か、また