戸板康二のレビュー一覧

  • 丸本歌舞伎

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    ・若い頃の戸板康二を私は知らない。推理小説を書いたり、ちよつといい話の類を書いたりした人だが、本業は演劇評論家だと いふことぐらゐしか知らない。戸板康二「丸本歌舞伎」(講 談社文芸文庫)もそこに連なる業績で、といふより、ほとんどその出発点にくる業績であるらし い。古い。初版は昭和24年である。言及される舞台の多くは戦前のものである。今も同じ名前で活躍してゐる役者など存在するはずがない。 完全に代替はりしていゐる。更に、戸板氏も実際の舞台を知らないそれ以前の役者、例へば五代目菊五郎、に言及されることもある。半端では ない。私などからすれば完全に別世界の舞台である。しかし、これは名著であると思ふ。

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    2012年01月21日
  • 團十郎切腹事件

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    おもしろい
    ミステリとしては解決部分で読者に提示されていない手がかりが現れるなど、謎解きを主眼としてみた場合はがっかりするかもしれない
    しかし、それは読み手が読み方を間違っているだけで、不可解な事件が起き、それを雅楽が解決するという一連のストーリーを楽しむという読み方をしていけばものすごく面白くなっていく
    読んでいて思ったのは半七捕物帳によく似ているなということ
    実際作者もある程度意識していたようで、読者のあまりなじみのない世界でおきる様々な魅力的な謎を解決していくというあたりに同じ魅力がある
    まだまだ作品はたくさんあるようなので読むのが楽しみ
    読んでいないかたは是非

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    2011年10月15日
  • グリーン車の子供

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    巽昌章の解説に、雅楽の謎解きスタイルはマープル風とあるが、それはホントかもしれない。身近に見聞きしてきた事象からの類推による推理。マープルんいおけるセント・メアリー・ミード村などの人間関係・出来事が、雅楽の場合、歌舞伎狂言の話だったりするのが面白いのだ。
    「グリーン車の子供」、ひかり/こだま問題が生じたらしいが、今のひかりってちまちま停まるのもあるし、それも列車によって停まる駅が違うから、今だったら誰も気にせず、ひかりでいけたのにね、って感じ。
    「美少年の死」や「妹の縁談」など、抑制されたエロが漂うほろ苦い話が印象的。

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    2010年09月26日
  • 松風の記憶

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    全集最終巻には、長編2編と探偵小説にまつわるエッセイを収める。
    表題作は、1959年から1960年にかけて東京新聞に連載された。全集第1巻の最後に収められた「文士劇と蝿の話」に、浅尾当太郎の悲恋への言及があり、それを書いた話があるの? と思っていたら、「松風の記憶」がそれだった。先に解題で、最初に単行本化されたとき「鷺娘殺人事件」の副題がついたということを読んでしまったため、いわばゼロ時間へ向かって読むこととなった。"鷺娘"が殺されるのは、全体の85%を過ぎたところ。そこまで、登場人物の動向と心情を丁寧に記しているのだが、それだけでも面白いのだが、いつどうやって殺されるのか

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    2010年08月01日
  • 團十郎切腹事件

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    中村雅楽(がらく)ものを年代順に編集(長編は別立て)。第1巻は1958年から1960年にかけて発表された、第1作「車引殺人事件」や直木賞受賞作の表題作を含む、18作を収める。
    雅楽ものは昔結構読んだが、単行本だったと思うので、立風書房版だったのか? 中村勘三郎が雅楽を演じた土ワイの2時間ドラマも好きだった。「奈落殺人事件」の、メイントリックではなくメイン錯覚はずっと覚えていたのだが、今回読んでいるうちに、ある人物が土ワイで淡島千景だったことを思い出し、それで犯人も確信(淡島千景が出ていて何でもない役というのはありえないでしょ)。いやあ懐かしい。再放送を見たいものだ。
    TVが出たて、新幹線はまだ

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    2010年08月01日
  • 團十郎切腹事件

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    古き良き探偵小説。江戸川乱歩に薦められて書いたのが始まり。著者は元々演劇分野の論者+探偵小説ファン。
    主人公の探偵/歌舞伎役者中村雅楽はエラリー・クイーンのドルリー・レーンが模範らしい。ありがちな捜査当局と探偵との確執もなくなんだか妙に和気藹々とした風情。

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    2009年10月04日
  • 團十郎切腹事件

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    戸板康二の短篇ミステリ作品集『團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉』を読みました。
    戸板康二の作品は、昨年12月に読んだアンソロジー作品『鉄ミス倶楽部 東海道新幹線50』に収録されていた『列車電話』以来なので1年振りですね。

    -----story-------------
    ミステリ史に燦然と輝く老歌舞伎役者・中村雅楽の名推理
    第1巻は、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編

    江戸川乱歩に見いだされた「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎俳優・中村雅楽の推理譚。
    美しい立女形の行方を突きとめる「立女形失踪事件」、8代目市川團十郎自刃の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹

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    2022年12月24日
  • グリーン車の子供

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    自分が読み慣れてきたせいか、作者が上手になったせいかはわかりませんが、第 1 集と比べるとずいぶんと読みやすくなっている気がします。
    キャラクターになじんできたのも理由かもしれません。
    話のネタは途中まで読めばわかってしまうけれど、表題作とか、「美少年の死」とかは、いかにも歌舞伎が舞台らしくて良かったですね。

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    2018年11月12日
  • 團十郎切腹事件

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    だんだん書き慣れていくのがわかるというか、後半の方がずっと読みやすくなってきますね。
    歌舞伎や芸能を背景とした推理短編集です。
    付録もずいぶんと多く入っており、資料的価値も高いのではないかと。
    「ある絵解き」と「文士劇とは絵の話」が面白かったかな。

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    2018年11月12日
  • グリーン車の子供

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    ミステリ好きかつ歌舞伎好きだと3倍ぐらい面白い、雅楽全集。探偵役の雅楽はじめ、架空の歌舞伎役者を創作されてますが、このモデルはあの役者かなーと妄想する面白さ、毎回出てくる歌舞伎の演目の解説や小ネタ、役者心得のような蘊蓄、そして推理小説の短編のお手本のように鮮やかに展開される謎解き。これで3倍。戸板さんのこの作品は、ドロドロしたところがないのでどれもサラリと読ませますが、かといって物足りない訳でもなく、本当に「鮮やか」としか言いようのない完成度。収録された18篇どれも面白いです。
    (それと、毎度の事ですが巽さんの解説は素晴らしいですね……。日常の謎と絡めてきてますが、今の時代だと、お仕事ミステリ

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    2018年07月09日
  • 團十郎切腹事件

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    歌舞伎評論で有名な戸板康二氏が推理小説を書いていたとは全然知らなかった。しかも直木賞受賞(1959年)作。

    歌舞伎役者の中村雅楽が探偵役となって事件を推理・解決していくのだが、事件の舞台が劇場であったり、芝居や番組の構成を利用して事件が起こされたりし、芝居好きには楽しめる内容になっている。
    佐藤賢一や東野圭吾の作品を読んだ時にも感じたことだが、得意分野・専門分野のある人が書いた話は土台や端々の設定がしっかりしていて面白いな~と思う。

    今読むと、随所に時代を感じる描写が出てくるのも面白い。例えば、犯行現場に残されたボタンから「犯人はシャツのボタンを付け替えたかも」という推理になるのだが、「自

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    2017年09月01日
  • 目黒の狂女

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    歌舞伎や舞台、テレビなどの仕事を背景とする日常の謎系の短編集。
    いよいよ、三巻目にして、事件というより謎という方が似合ってくる話がほとんどとなりました。
    ぶっちゃけ、日常の謎って読んでいてほっとしますよね。(^^
    色恋の話が割と多かったのも読んでいて楽しかった理由かも。
    珍しく、歴史推理も入っています。ま、成功しているかどうかは判断に悩むところですが。(^^;

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    2013年02月02日
  • 劇場の迷子

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    とうとう雅楽全集も読み納め。短篇最終巻で、ますます「ちょっといい話」化している。
    著者を反映しているという聞き手役の竹野が雅楽の話をきいて、いい話だとしきりに感心するのだが、考えてみれば雅楽の話も戸板が考えているわけで、自分で自分の話をべた褒めしてるってことよね。と思うとちょっとしらける。
    といっても、歌舞伎の世界のならわしや、役者たちの微妙な心のあやと芸の話はとってもおもしろい。
    「なつかしい旧悪」は、こわーい話であるとともに、嫌い合って別れたわけではない男女の互いの思い遣りと雅楽の羞らいがよい。
    「弁当の照焼」も、やはり好きだけど別れた相手への互いの長~い思いの話。
    「写真の若武者」は、喜

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    2010年09月26日
  • 目黒の狂女

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    76年から83年発表の短篇のほか、60年代末に書かれた「かんざしの紋」「淀君の謎」を収録。
    「淀君の謎」は謎解きのポイントが空想の産物なので、歴史推理と思って読むと拍子抜け。こういう趣向で芝居を考えてみました、てなもので、しかも、ホントにそうだったらワクワクするのに~、みたいなセンスオブワンダーもない。
    だんだん犯罪の話ではなくなっているのだが、日常の謎ものというより、それこそ戸板康二が週刊誌に書いていたちょっといい話、という趣きになっている。雅楽を登場させる必然性もないのかも? という気もするが、古老が語るある世界、ということで、「半七捕物張」の正統な後継だと改めて実感。
    養子か実子か、また

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    2010年09月18日
  • 目黒の狂女

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    初期作と違って、だんだんと所謂「日常の謎」モノへと変化していってる。
    もちろん、雅楽の鋭い推理によって謎が解けていくものもあるんだけど、それよりも歌舞伎の世界とか、人間の感情、情緒といったものを描くことに力点が移っていると感じた。
    というか、むしろそっちのほうが会話文とか心の機微の点で魅力的なようにも感じられるくらい。

    まあ、「ちょっとこれはこじつけがすぎるだろう」ってのもご愛嬌か?

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    2010年01月06日
  • グリーン車の子供

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    「グリーン車の子供」は★×5で。
    無理に不可能犯罪とか殺人事件に結び付けようとしなくなったためか、非常にゆったりとした文章になっていると思った。
    いわゆる「日常の謎」的な趣向が多いけど、他のと違うのは歌舞伎や芸事の世界の日常であるというところか。自分たちにはすぐにピンとくるわけではないけど、絵解きをされると納得できると言う。「美少年の死」とかは顕著かな。
    表題作は、最早一つの芸術品のように感じた。それくらい素晴らしかった。

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    2009年10月04日
  • 團十郎切腹事件

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    ミステリとしては多少牽強付会と言った印象を受ける作品もある。
    が、構成の優雅さや探偵役の中村雅楽の魅力などは素晴らしい。
    作品の背景が50〜60年代であるというのもあるのかもしれないけど。
    中身では、やはり表題作の「時の娘」的な趣向が流石。
    後半に行くにしたがって、だんだんと切れ味が増してきているので、次が楽しみ。

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    2009年10月04日