安岡章太郎のレビュー一覧

  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    母親への義務感と自己嫌悪に苛まれる、童貞の苦悩の結晶みたいな短編集。陰気さと笑いと愛憎のどっちつかずなバランスがおもしろい。処女作「ガラスの靴」の別次元の世界観は、いまなお新鮮で抜群にクール。

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    2011年07月17日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    男になるための通過儀礼には二種類あって
    ひとつは女、もうひとつは戦争なんだけど
    結局、敗戦でなにもかもご破算になってしまったわけで
    結局、最後に残された、ギリギリ人間であるための手段は
    「裏切り」にあったように思う
    母を裏切り、友を裏切り、自分を裏切ることで
    かれはこのどうしようもない戦後日本と自分を
    やっと相対化することができるんだ

    でもそれはやっぱり倒錯でしかないよなあ、とも思った

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    2010年04月23日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    個人個人の、意地・悩みをかいている本。本人は、どうしようもないくらい大きな問題として考えているけど、他人からは(読者の僕)ぜーんぜん、どうでもいい意地・悩みを抱えている。
    けど、これこそ、僕自分自身のテカセ足枷になっている、根本のもののようなきがして、気付きがありました。

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    2009年10月04日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    芥川賞受賞作「悪い仲間」「陰気な愉しみ」などがおさめられた短編集。暗くどんよりとした空気を感じるのだけど、主人公自身の心の中の迷いからきているものなんだろうと思う。
    理由はうまく言えないけど、好きな作品。

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    2009年10月04日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    「ガラスの靴」「陰気な楽しみ」「悪い仲間」他計13編収録。戦後数年間の混沌とした時代に青年の憂鬱な生活。とは言え自暴自棄ではなく、人に気を使う面を失ってはいない。2025.3.16

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    2025年03月16日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    うーむ時代の違いか
    戦後すぐのウェットな感じで、現代の例えば『コンビニ人間』が人間を描くというのと違う次元の印象を持った

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    2022年04月09日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    初めての安岡章太郎

    短編集

    「悪い仲間」などの青年ものより、際立つのは「陰気な愉しみ」だ。

    傷痍軍人の悲しい愉しみ。
    楽しみではなく、愉しみ。
    人の目を憚りながら、生きながらえる中に愉しみをも見出せない儚さ。

    心の凹凸を顕微鏡で覗くかのように隆々たる山並に変えてみせる、良い作品。

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    2021年11月25日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    昔は大好きだった安岡章太郎
    でも今はあの頃の熱狂はない
    きっと私が自分嫌いとか劣等感を克服したからだと思う
    もう自分が大嫌いで殺してしまいたいくらい憎かったときに、安岡章太郎の小説は「俺だって同じだよ」って言ってくれている気がして励まされた
    そんな人に読んでほしい

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    2021年08月29日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    慶応大学在学中に結核を患い、戦後、脊椎カリエスを病みながら小説を書き始めた著者が、世間に対する劣弱意識に悩まされた経験をベースに綴った10編から成る短編集。 
    戦中、戦後を哀しく、無器用に生きた学生の自堕落で屈折した日常をユーモアも盛り込んで描く。
    標題作「質屋の女房」は、戦時中、外套を質屋に持って行った学生と質屋の女房との関係を甘酸っぱく余韻を含ませて描いたもので印象に残った。学徒出陣で召集令状が来たその学生にとって一度きりの秘め事が結果的にはなむけとなったのだった。
    「ガラスの靴」は猟銃店で夜番をしている「僕」が散弾を届けに行った米軍軍医の屋敷で出会った風変わりなメイド・悦子との間に生じた

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    2021年07月09日
  • 志賀直哉私論

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    著者自身も小説家であり、また本書の「補遺」に収められた「志賀直哉訪問記」で回想がなされているように、志賀そのひとに直接会った経験もあるということで、おそらく著者の志賀文学体験などを織り込みながら書かれたエッセイのような内容の本ではないかと思って手にとりました。しかしじっさいに読みはじめてみると、思った以上に通常の批評のスタイルにのっとって書かれた本で、志賀のひととなりと作品との関係について立ち入った考察が展開されています。

    「あとがき」には、文芸春秋社から出された志賀直哉集に収められる伝記の執筆を依頼されたことがきっかけで、著者が本書を手掛けることになったと記されています。こうした理由もあっ

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    2021年05月19日
  • 僕の昭和史

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    1920年に生まれ、ソウルや青森、東京などで幼少期を過ごし、戦争と病を経験しながら「昭和」という時代を歩んできた著者の自伝的作品です。

    ジャン・ルノワールの映画『大いなる幻影』が見られなくなってしまった時勢の変化に違和感をおぼえていた少年時代から、理不尽な軍隊生活から思いもかけず帰還し、さらに無気力な学生時代を送りながら、脊椎カリエスのために寝そべって小説を書きつづっていた、遅れてきた青年時代まで、著者の前半生は一見周囲の状況に流されているようにも見えながら、戦争の前後にわたる時流に対して距離をとりつづける態度がつらぬかれていることがわかります。それも、肩ひじを張って抵抗の姿勢を示すのではな

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    2021年02月22日
  • とちりの虫

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    昔はもっと安岡章太郎のエッセイを楽しんで読めたのに最近はエッセイよりも小説が好きだなぁ。
    でも、劣等生の優等生、アイドルとすら思ってしまう安岡章太郎の考えていることは、ときたまはっとさせられることが書いてあるから、また読みたくなる。

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    2019年10月15日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    ネタバレ

    目次を見て、また読んで、魅力のあるものがほとんどなかった。本作の読書は淡々と作業をする感じであった。特に気に入った作品がなかった。文体は静謐かつ読みやすい。期待したほど、楽しめなかったのが残念だ。

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    2019年08月06日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    哀しい、無器用な劣等生は、社会にうまく適応してゆく人々の虚偽を見抜く力をもつ…。先天的に世間に対する劣弱意識に悩まされた著者は、いたずらに自負もせず卑下もしない明晰な自己限定力をもって、巧まざるユーモアのにじむ新鮮な文章で独自の世界をひらいた。表題作ほか、処女作『ガラスの靴』、芥川賞受賞作『陰気な愉しみ』『悪い仲間』など全10編を収録する。

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    2019年07月17日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    まぁ上手いんでしょうけど、長旅の中で読むには当方のリズムと合わなかった。それでも後半に収められている表題作はぐっと引き寄せる力がありまする。
    しかし吉行淳之介といい、このお方といい、今でいうところの風俗に題材を求めるところを見るに、昔も今も変わらんという陳腐な結論に辿り着いて良いものやら。

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    2018年06月16日
  • 文士の友情―吉行淳之介の事など―

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    安岡章太郎氏や吉行淳之介氏の文章や会話を読むにつれ、まさしく『人生の達人』という想いを抱く。両氏とも持病を抱えたままの生活を長く続けたことや、やはり戦争の影が大きく影響しているのか、恬淡かつ静謐な人生の佇まいが感じられる。 「生活にゆとりを生じてきたこと、それは無意識のうちにも、人生に秋の気配をおぼえさせる。」のような文章にそのことが表れているのではないだろうか。 現代人が失ったものを、保ち続けた最後の文士たちだ。

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    2013年09月25日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    よくまとまっているし、アメリカやセクシャルなものについての比喩や表現が巧いと思った。

    しかし、そこどまり、というか、それ以上なにか衝撃を受けるようなことはなかった。

    今回、処女作の「ガラスの靴」をはじめ、芥川賞受賞作の「悪い仲間」や「陰気な愉しみ」(このへんのタイトルのセンスはさすが!)を読んだので、次は代表作『海辺の光景』へ。

    ちなみに、村上春樹が『若い読者のための短編小説案内』というものを書いていて、そこで安岡の「ガラスの靴」を中心に取り上げている部分がある。
    ここで村上春樹が指摘している、安岡の比喩についての部分は興味深く、独特な比喩を用いる春樹ならではの感覚も見受けられる。
    また

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    2012年02月17日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    ネタバレ

    話の筋も表現も「うまいなぁ」と、思った。大衆万人向けだなぁとも思った。生活という現実そのものを感じた。
    そして、そういうまるまる現実そのものみたいな小説って案外ないよなぁと思った。(ただ私がそういうジャンルの小説を読まないだけかも知れないけど。)

    絵でも小説でも美しく描きたくなったり、想像的なモチーフを描きたくなったりしてしまうものだと思うのに、安岡さんの物語にはそれがない。ただ人間が生きている。リアルな人間の生活がありありと在る。

    どの短篇の人間も、流れるまま、主張せず、待ち、決定的な場面を避ける。
    現実を生きる人間というのは、日常というのは、案外そういうものであると思う。

    私が好んで

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    2011年10月25日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

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    初挑戦の純文学物でした。
    読み易く、理解もできました。
    短編集なので、主人公は異なり、1編1編は面白いのですが、似たような心情が繰り返されていたので、1冊読み終わる頃には、ちょっと食傷気味な感じになりました。

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    2013年02月21日
  • ガラスの靴・悪い仲間

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    表題作をはじめ、どの作品も個性的ですが、やたらとカタカナ表記を多用するのが個人的には若干鼻につく…。外来語ならまだしも「オドシ文句」とか「サッパリ」とか「タワイなかった」とか「ウナずき」とか書かれると苛々します。何か意図があってそのように書いていたのでしょうが、今読むと単に古臭い印象を与えるだけのような気がしませんか?話自体は好きなのですが。

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    2009年10月04日